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LOZ:彼は無感情で理性的だけど不器用な愛をくれる  作者: meishino
囚われのパリピ編
168/253

168 納得のいかない勝利

 真っ白な夢だった。何も無く、ただ白い世界に、私はずっと漂っていた。心地はいいが、白しかないので、少し怖くもある。だが、奥の方が灰色に滲んできたかと思った時に、ぐわっと意識が戻る感覚が、全身を包んだ。


 重たい瞼を開けると、ぼやけている視界がゆっくりと鮮明になっていった。いつしか、グレン研究所の時と同じだと思った。心電図の音が聞こえる。


 窓からは陽の光が差し込んでいた。私は窓際のベッドで寝ていたようだ。頭をちょっとずらすと、澄み切った青空が見えた。あの空は、ユークアイランドのものだろう。


 体を起こそうとしたら、自分の左手が重かった。見れば、ジェーンが椅子に座ったまま、私の手の甲を、彼の頬で潰しながら、眠っていた。付き添ってくれていたのか。でもあなたも大怪我をしたのではないか?と、聞きたかったが、身体が重く、ぼんやりと彼を見つめている事しか出来なかった。


 少し足を動かした時に、ジェーンを起こしてしまった。彼は頭を上げて、裸眼で私が良く見えないのか目をパチパチとしながら、私をじっと見つめていたが、ベストのポケットから眼鏡を取り出して、それを掛けた。


「起きましたか、良かった。」


「ここに、居てくれたんだね。」


 ジェーンは無言で頷いた。そうか、これは現実だったか。リン達が連れて行かれたのは、現実だった。私はジェーンに聞いた。


「リン達は、今どうなっている?」


「今は、療養してください。」


 そんな訳にはいかないと、私は身体を起こそうとした。胸やお腹が激しく痛んで、私はつい眉間に力が入り、歯を食いしばった。私の口角の部分には、綿が当てられていたのを知った。


 何とかベッドの上で身体を起こすことに成功した私は、ベッドから降りようと腰を浮かせたが、立ち上がったジェーンが私の肩を思いっきり掴んで、私をまたベッドに座らせて、私に真剣な顔を近付けた。


「キルディア、私は本気です。今は動いてはなりません。安静にしてください。」


「……あれからどれくらい経った?」


「あの日の翌日です。ニュースを見る限り、まだ帝国側の動きはありません。ですから、安静に。今この時間は、休むべき時間です。」


 まだ、一週間後とかでは無くて良かった。私はウォッフォンを見ようとしたが、右手のナイトアームが無く、左手首に付いているウォッフォンを操作する手立てがないことに気付いた。


「ジェーン、ニュースを見せて。」


 私が立とうとしない事を確認したジェーンは、もう一度椅子に座り、その椅子をもう少しベッドに近付けて移動してから、彼のウォッフォンを操作して、ホログラムの画面を私に見せてくれた。


 そこには「新光騎士団 アクロスブルーを攻めるも敗走」という見出しや、「LOZの捕虜 収容施設に輸送か」というものがあった。だが、私はその見出しに納得がいかなかった。


「……負けたのは、我々だ。」


「キルディア、」と、ジェーンが私の左手を握ってくれた。「記者から見れば、いえ、一般市民から見れば、新光騎士団は結果として、ユークアイランドを奪うことが出来なかった、そのことに着目したのでしょう。彼らの、チェイスの本来の目的は、LOZの先鋒隊と本隊を分断し、先鋒隊を壊滅させてから残りの戦力を潰し、ユークアイランドを手にするということだったのでしょうが……。」


 と、ジェーンが黙ってしまった。その先が気になる私は、彼の目をじっと見つめた。すると彼と目が合った。


「LOZの本隊、あなた達が、私の予想していたよりもヴァルガ隊に近いところに居てくれたので、ヴァルガ隊はすぐに追い付かれ、我々先鋒隊を上手く挟むことが出来ませんでした。もしチェイスの指示通りの動きをあなたがしていたら、私はここに居なかったでしょう。」


「そういうことだったのか……。」


 チェイスは最初からジェーンを殺す覚悟で挑んできたんだ。私が俯いていると、私の病室の扉がガラッと開いた音がした。顔を上げると、アリスと、ケイト先生、それからラブ博士が入って来た。


 三人は私のそばに来てくれて、アリスが私に抱きついた。そしてロコベイの花粉のクッキーを私にくれて、私はその可愛い小袋をベッドの布団の上に置いた。そしてケイト先生ともハグをした。ちょっと苦しいほどのハグだった。


「もう、死んだらどうするのよ。」


「大丈夫だよ、大丈夫だった。」


 ケイト先生は離れて、私を叱るような目つきで見てきた。そして次の瞬間だった、驚いた事に、なんとラブ博士までもが私にハグをしてくれたのだ。私は驚きで目を見開きつつも、彼の細い身体を左手で抱きしめ返した。アリスとケイト先生も驚いた顔をしていた。ジェーンは何故か、私の左手を握った。驚きのハグが終わると、博士は離れた。


「ク、クラースさんは?」


 私は取り敢えずケイト先生に聞いた。よく見ると先生は、いつもと違う白衣を着ていた。


「彼は別の病室で煎餅でも食べているわよ。まあ怪我はしているけれど、元気そうにしているわ。LOZや新光騎士団の兵士達で、この病院がてんやわんやしているから、ユークにいる医師に召集がかけられて、私も一時的にこの病院を手伝っているの。ちょっといいかしら?」


 ケイト先生はベッドにスーツケースを置いてそれを開き、その中から取り出したパッチを、私の左腕に貼り始めた。しかしやりづらそうだ。何故ならジェーンが、私の手を握っていて離さない。


「ちょっと、」ケイト先生がジェーンに言った。「離してくれるかしら?このままでは出来ないわ。」


「あ、ああ、すみません」と、ジェーンが私の手を離した。「考え事をしておりました。どうぞ、どうぞ。」


 パッチを貼り終えたケイト先生は、そのスーツケースに入っていたPCをベッドの上に広げて、パッチのケーブルとPCを繋いだ。そのPCの画面を見ると、何やら波状のものが写っていた。


「これは何?」


『魔力測定器』


 私以外の全員が一斉にそう答えた……すみませんね、知らなくて。そしてケイト先生は腕を組み、じっと画面を見つめながら呟いた。


「信じられない事に、安定しているわ。」


 アリスも腕を組み、画面を見て何度か頷くと、私に言った。


「あの戦いも、前のヴィノクールの時みたいに、視点カメラで私も見ていたんだよ。光の神殿の時も見ていたけれど。今回の視点主は、ジェーン達はチェイス側に変な動きだと思われたら困るからって対象から除外して、キリーとクラースさんが選ばれてた。それで、オーバーフィールドの中で、キリーは大量に魔力を消費したでしょ?ソーライ研究所に来てたミラー夫人がそれを見て叫んでたけど。」


 そうだったんだ、ミラー夫人、そんなリアクションとっていたのか。私は頷いた。


「あ、ああ。」


「だから、プレーンが高確率で壊れているだろうって、姉さんが心配していたんだけれど、今この測定を見ると、波動が安定しているし、そんな事なさそう。ちょっと私も信じられないんだけど……。」


「へ、へえ……。」


 そうか、確かに魔力を放出しすぎる負荷をかけるとプレーンが壊れるって、授業で習った記憶がある。でもあの時はそんな事、考えている余裕は無かった。ジェーンを助けたかったから。


 すると、ケイト先生がじっと私の胸元を見ていた。それに気付いた私はすごく嫌な予感がした。もっと言うと、彼女は私の胸元の、プレーンが入っているカバーをじっと見つめている。そして私に質問した。


「……ちょっと、開けて見てもいいかしら?」


「でもこれって、そんなに簡単に開かないでしょ?開かないし、取れもしないじゃない?生まれた頃に付けられて、そのまま一緒に成長して、大人になったって、今までの人生で一度も開けたことは無かった。ねえ?開かないよね?」


 私はジェーンに聞いた。だがジェーンは口角を上げてしまった。この流れはやばい。


「専用のツールを使えばすぐに開きますよ。プレーン自体を取り出すことは至難の技ですが、見るぐらいなら誰にでも出来ます。私もあなたのアームを改良する際に、自分で開けましたから。」


 何故か、アリスが私の腕を掴んできた。


「大丈夫だって、キリー。ほら、もしヒビとか入ってたら大変でしょ?プレーンの破損は命に関わるんだから、診てもらわないと!」


 私はブンブン首を振った。何故かアリスが私の腕を掴んで、逃げないようになのか、ぎゅっと抱きしめてきた。私はジェーンを見ながら叫んだ。


「じゃあジェーンの方を先に診てよ!ジェーンの方が疲労困憊の時に、あの変な魔力の中で苦しんで、あんなに叫んで、身体だってブンってブレて見えて、大変な目に遭っていたに違いないんだから!」


 そうだそうだ!最初にカバーを開ける作業をジェーンで試してくれ!私はその後でやるかやらないか判断するから!しかしジェーンは眼鏡を中指でくいと押し上げながら、にやにやと笑い、首を振った。


「御心配には及びません、私もこの病院に着いた時にケイトに診てもらいましたし、自分でも何度か点検をしましたが、改造した箇所以外は何一つ、問題ありませんでした。大丈夫でしたよ。」


 それを聞いて、私は少し安心した。それにジェーンのカバーを開けたことがあるのなら、私も従ってもいいかもしれない。


「そっか……良かった。」


「じゃあ、あなたのを確認するわね。ベッドに横になってくれるかしら?」


 私はケイト先生の指示通りに、ベッドに横になった。よくよく見れば、ケイト先生は勿論白衣なのだが、アリスとラブ博士も研究所の白衣を着ている。なんだか、私がベッドに仰向けになり、研究員達に囲まれているこの状況、私の身体が実験されるみたいでちょっと怖い。


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