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LOZ:彼は無感情で理性的だけど不器用な愛をくれる  作者: meishino
衝撃のDNA元秘書編
137/253

137 合コンって何?

「遅れてごめ~ん!いやあジェーンかっこいいね!キリーも雰囲気変わってるぅ~ウゥウゥ!って、何でミイラみたいな格好してんの?」


 漸く現れたリンが肘で私の頭をぐりぐりしてきた。私は冷静な声で言った。


「早く座りなさいよ。」


「もう分かってるって!ねえ、彼はまだなの?」


 リンは私の正面に座った。赤いすらっとしたワンピースだった。危ない危ない、やっぱり色が被るところだった。ホッと胸を撫で下ろして、補充されたお冷をまたゴクリと飲んでいると、リンと目が合った。


「キリーさあ……今宵はチークが乗ってるね。メイクした?」


「ああそうなんだよね、はは、っゲホッ!」


 お冷をむせてしまった。ジェーンが私の背中をさすってくれた。すぐに落ち着いたが、ああ、リンよ、まあ勘違いしてくれてよかった。リンは両肘をテーブルの上に乗せて、私をじっと見つめている。いつもよりのマスカラのかかった、まつ毛が印象的だ。


「な、何?」


「ううん、別に見てるだけ。」


「ああそう……」そう言えば、私はちょっと思い出したことをリンに聞いた。「リン、この前クラースさんの船の上で、ジェーンのことを誘惑したらしいよね?レジスタンスのテントでは私を誘惑するし、ロケインにはアプローチ済みだというし、一体どうなってんの?」


「ああ、」それね、と言わんばかりに、リンが顎を突き出して、ドヤ顔で答えた。「説明してなかったっけ?私って息をするように誘惑しちゃうんだよね。罪な女でしょ?」


「そうですね、」ジェーンが真顔で言った。「出来ればその罪で、さっさと島流しされることを願います。」


「ええ?私が島流されちゃったらジェーンだって寂しくなるくせに~ウィウィ!」と、リンは隣のジェーンのことを肘で突いた。ジェーンはとても精神的に苦痛なのか、眉間にすごいシワが寄っている。ちょっと面白かった。


「あ!そうだ」リンが何か思い出したのか、私に話しかけた。「その船での出来事を話そうと思ってたんだ!あのね、ジェーンは普段言いたいことをズバズバ言って、感情なんか表に滅多に出なくて、ドライで淡白な性格してるけど、実は……ふふっ!実は、夜の方はねぇイッタァ!」


「ご静粛を、この多弁者め。」


 ジェーンが、リンの肩を思いっきりパシンと叩いたのだった。リンは大口を開けて痛みに悶絶しながら、ジェーンを睨んだ。しかし、夜って何だ?夜……?まさか、情愛の猛りの話だろうか。いやそんな、ジェーンがそんな話題に乗る訳ないだろう。私はリンに聞いた。


「なになに?ジェーンの夜ってどういうこと?今夜もそう?」


「今夜?ん~今夜もそうだよ!毎晩そうなのだから!」リンが記者がマイクを向けるように拳を私に向けた。「じゃあさ、別の角度から行こうか。キリーはさ、辛いものって好き?」


「辛い物?うーん、頑張れば食べられるけど、あまり進んで食べないかな、だから苦手かも。」


「じゃあジェーンは?」リンは拳をジェーンに向けた。彼は答えた。


「私は、辛ければ辛いほど好きですね……はあ、もしやまたくだらないことを言うのでしょうか?ならば「はいはい!実は、実はね!」


 リンが自分の口の下に、拳を持ってきた。


「実は辛いものって、本来人間にとっては毒なんだよ、知ってた?辛いものを食べると脳で快楽物質が出るから、それで人は辛いものを愛せるんだって。つまり~、激辛が好きな人は、痛みに対して快楽を得やすい人。つまりね!イッタァ!」


 リンの演説は、いいところで中断されてしまった。ジェーンが彼女の肩をまたパシンと叩いたのだ。私はジェーンに聞いた。


「ジェーン、さっきからどうしてリンのことを叩くの?いいところだったのに。」


「何がいいところですか。あまりにもくだらない議題だからです。それだって何を根拠に、どうせくだらない恋愛サイトでしょう?」


 だが、今回のリンの話は結構、信憑性を感じる。私はリンに真剣に聞いた。


「それじゃあ、ジェーンは痛みに対して快楽を得やすいってこと?」


「な……!」ジェーンが手で顔を覆いながら呟いた。「何をそんなダイレクトに、キルディア!」


「アッハッハ!」リンがお腹を抱えている。「そうだよ、そうそう!だから今ちょっとばかりジェーンのことを叩いてみてよ。」


「そんなこと出来ないよ……」私はちらっとジェーンを見た。ジェーンはまだ手で顔を覆って俯いている。でも待てよ、私は気になったことをリンに聞いた。


「じゃあさ、私は唐辛子の辛さは、あまり得意じゃないんだけど、胡椒の激辛は大好きだよ?更にわさびたっぷりも結構好き。それだとどうなるの?私はジェーンと同じなの?」


「え?」リンが驚いた顔をした。「まじで?ジェーンは?」


「逆に私はそれらを好みませんね。ですからそんな俗説、信用するに値しないのです。キルディアも信じるのはおやめ下さい。」


「分かった、整いました。」


 と、リンが突然かしこまって、座り直した。私とジェーンは彼女に視線を向け、回答を待った。


「視点を変えてみようよ。世の中にはリバというポジションが存在する。攻めるのも受けるのもいける人。二人はきっとそうなんだよ。キリーが叩いたり、ジェーンが叩いたりして、仲良くなるんだよ。どう?しっくりこない?相手にしてもらったら同じだけ自分も相手にしたい。そうか……確かに今思えば、それがしっくりくるわ、ジェーンも、か弱いときと魔王みたいな時があるしなぁ。キリーもだけど。」


 勝手にリンは納得しているが、実際、結構当てはまる部分があると、私は感じている。私が大胆な時に彼は受け身で、私が受け身の時に彼は大胆になる。なんてこった、リンめ、やりよる。私は苦笑いしてジェーンを見ると、ジェーンと目が合った。多分彼も図星だと思っているのか、彼は黙って水を飲んだ。


 しかしなんて話題なんだ。まだ来ないのかな彼は。そう思ってウォッフォンを確認したが、連絡は無い。リンが私に聞いた。


「どう?もうすぐ来るかな?」


「うーん、家が近いから、もうすぐ着くと思うけど。」


 私の一言に、リンとジェーンが私を見た。


「え?キリー、彼の家に行ったことがあるの?」


 私はギクッとした。別にぎくっとするべきところでも無いけど、なんか疑われてるから、ぎくっとしてしまった。


「い、いや……そういう深い理由は無いけれど、彼の家は知ってる。ずっと前に一回だけ、熱を出した時に行っただけだよ……ゼリー買って来てくださいって言われたから。でも熱だからさ、放って置けないでしょ?彼一人暮らしだし。」


「ほお」ジェーンの低い声が響いた。「気軽に買い物を頼める仲ですか。」


 リンが私を食い入る様に見つめながら聞いた。


「もしかして、キリーの元カレじゃ無いよね?」


「ち、違うよ!元カレは居ないって、前に船の上でもそれ以外でも何度でも話したでしょう?」


「ああ、確かにね。」


 すると、肩に手がポンと置かれた。私が振り返ると、そこには例の彼が立っていた。何時ものフォーマルな感じと違って、今夜はスキニーなダークトーンのデニムシャツに、ブラックのチノパンだった。


 ハットを被って、髪型も分け目が普段と違う。ワックスがいい感じに黒くウェーブかけられた髪をアレンジしている。私は椅子から立って、握手をした。


「おお!待ってたよ……」


 彼は恥ずかしいのか、ハットで顔を隠したまま、一回頷いた。


「そ、そのお方は?」


「え?」


 私は想定外の反応をしたリンを見つめた。彼女はまだ誰か分かっていないらしく、首を傾げているが、ジェーンは誰だか理解したようで、ニヤリとしながら小声で「ようこそお越しくださいました」と言った。そうか、ハットがあるから顔が見えないのね、私は彼のハットを奪った。


 するとリンが、目が飛び出そうな程に驚いた表情をした。


「え!?博士!?」


「どうも……。」


 ラブ博士はそれだけ言って、私の隣に座った。ジェーンの正面だ。これで皆揃った。リンは口をあんぐりと開けて、ラブ博士を穴があくほどに見つめ、少ししてから博士に聞いた。


「で、でも雰囲気だいぶ違いますね、ラブ博士……来てくれてありがとうございます。こんな、少人数の合コンで、明らかに誰と誰がパートナーになるのかバレバレですけれど。いいんですか本当に?」


 た、確かにそうかもしれないけど、分からないじゃない。もしかしたらリンとジェーンが……いや、それは色々と考えたくない。やっぱりリンの言ったことは正しかった。正しすぎて、苦笑いした。


 しかしラブ博士は何も答えず、私から受け取ったハットを、彼の膝に置き、アシメの黒髪を手でちょっと整えた。キリッとした切れ目の瞳に、キャンドルの火がチラリと映った。博士はリンの方をチラ見してから、こう言った。


「……別に、ボスに誘われたから、相手がリンだと知らなかったから、ここに来た、と言う訳ではない。今夜は特に予定が無かった。それだけだ。だが、リン。今夜は中々、綺麗な格好をしている。」


 私はたった今、目の前で、人が心を射抜かれる瞬間を初めて見た。リンは胸を押さえてガタガタと身体を震わせ、今にも白目をむきそうになっている。いや、ちょっと向いてる。これは、この姿は、まずい。私はオーダーをすることにした。


「あ!じゃあ皆集まったし、何か飲もっか!ナッツとかあと、ドライパインとか頼もうよ!えっと、私は……」丁度こちらを見た店員さんを手招いて、私はお姉さんに頼んだ。「ナッツとドライパインと、ドラゴンの血をお願いします。」


「ドラゴンの血ですか、それでは私はマーメイドでお願いします。」

「じゃあ私もマーメイド!」

「俺はボスと同じ、ドラゴンの血で。」


 皆がオーダーを完了した。さあ何を話そうか、よく考えればこの四人はあまりない組み合わせなので、何を話そうか。ラブ博士は何を話したいのかな。沈黙が流れてしまった。するとリンがラブ博士に聞いた。


「そう言えば、ラブ博士って本名は何でしたっけ?」


「レーガン・テイラー・スローヴェンだ。」


 私は付け足した。


「スローヴェンの綴りにLOVEが入っているから、皆はラブ博士と呼ぶようになったんだって。最初に言い出したのは、タージュ博士だけど。」


「ああなるほどね!SLOVENか、なるほどなるほど。」


 リンは空中に文字を書きながら納得した。丁度いいタイミングで頼んだものが一斉に届いたので、取り敢えず皆で乾杯することになり、リンが立ち上がった。


「はいじゃあ来ましたね、我々の夜はこれからでございますよ!」


「リン、ちょっと声がデカイ……。」


「ハイハイ、じゃあ絞りまーす……今宵はね、普段話せない事も色々と話して頂いて、同僚・上司部下としての親交を深めつつ、あわよくば夜の方の親交も深めるという、画期的なイッタァ……ラブ博士痛い!」


 テーブルの下を見れば、ラブ博士がリンの足を踏んでいた。よくやってくれました、と心の中で拍手をした。リンは続けた。乾杯の音頭が長いから、段々と掲げているグラスの手がプルプル震えてきた。


「何だかんだございますが、この記念すべき素晴らしい夜に、このテーブルには、我が研究所の重要な面々が連なっております。その中で、乾杯の音頭を私めが務めさせていただくなんて、誠に、誠にですね……当然のことでございます!乾杯!」


「乾杯……。」


 リン以外は少し笑いを漏らしながらグラスを合わせた。だけど、こうして職場の人と飲むのなんて、タマラの食堂以来だ。家では全く飲まないし、ジェーンだって久々だろう。彼は美味しそうにマーメイドと言うカクテルを一口飲んで、静かにグラスをテーブルに置いた。


「ところでリン、」そう口を開いたのはラブ博士だった。彼はドライパインを少し齧った。「アリスから聞いたが、確か、ギルバート騎士団長に惚れてるとか。それは本当なのか?となると、それはボスのことだが。」


 つい、色々な思い出が脳裏をよぎってしまった。リンは口を尖らせながら答えた。


「う、うんまあそうなんです……男性かと思っていたら実は女性だったけれど、それでも構わないかなって。だから結構アプローチしたつもりだったんですけど、キリーにいっつも金魚のフンみたいにくっついてる秘書が邪魔で邪魔で!イッタァ!さっきから何なの!?研究開発部よ!」


 多分、動きからして今度はジェーンがリンの足を踏んだようだ。リンは「兎に角!」と、先を話し続けた。


「ラブ博士聞いてください、実は、こんなのまで作っちゃったんです。結構キリーのこと好きだったから。」


 そう言ってリンがハンドバッグから取り出したのは、なんと言うことか!着せ替え人形サイズの私だった。それを見たラブ博士とジェーンは、同時に飲み物を吹き出しそうになっている。私はお口あんぐりだ。


 お人形さんの黒いタンクトップにカーキ色のスキニーなカーゴパンツという服装も、普段の私と酷似している。私はリンからその人形を受け取った。


 感触こそ着せ替え人形のそれだが、まつ毛や毛穴などのディテールが凝っているので、遠近法を利用して撮影したら、私だと見間違える程に本当にリアルだ。ツールアームもちゃんと金属で出来ている。こ、これは?


「何コレ、何で、私が人形に……?」


「見せてください。」と申し出たのはジェーンだった。私は人形をジェーンに渡した。ジェーンは色々な角度から観察し始めた。


「驚きました……これは精巧な技術で再現された、紛れもないキルディアですね。この技術は、一体?」


「うんそれね、」リンが答えた。「写真のデータを送ると、その被写体のフィギュアを作ってくれる会社に依頼したの。それ、いいよ。私の恋は次にシフトしてるから、それはジェーンにあげる。」


「いいのですか……?」


 いいのですか?じゃないよ……何だそのキラキラした目は。私はジェーンの手元からそれを奪った。そんな、こんなもの!私はその人形をラブ博士との間のテーブルの上に、足を伸ばした状態で座らせて、人形に手を伸ばしてくるジェーンを阻止した。


「ちょっとこれは私が没収する!こんな、何の為にこんな!」


「別に良いよジェーン、あともう一体お家にあるから、あとであげるね!だってさ~、これがあれば好きな人と一緒に寝られるんだよ?」


 恐ろしい女め、私の片割れちゃんと一緒に寝ていたとは……。しかもストックまであるとは、本当に恐れ入る。その言葉を聞いてジェーンが諦めて座ってくれたので、私はドラゴンの血を飲み干した。


 するとリンの後ろに店員さんが立ち止まり、我々に声を掛けてくれた。


「お飲み物のお代わりは如何致しましょ……ふふっ」


 え?


 ごめんなさい、と咳払いで店員さんが笑いをごまかしている。目の前のリンは手を叩いて笑い出した。そうか、なるほど。確かに、目の前に座る女性と全く同じフォルムのリアルな人形が、テーブルにちょこんと座っていたら、ふふっとなってしまうだろう。私は急いでそれをバッグにしまった。足がはみ出たが、そのままジップをしめた。


 店員さんに皆が追加のオーダーをし終えると、リンが輝いた瞳でラブ博士を見つめた。


「ですから今度!ラブ博士の全身写真と、ドアップの写真を撮らせてください!あれ作るにはその二枚が必要なんですよ~!いつもの白衣姿でいいですから是非是非!」


 ラブ博士が眉間にしわを寄せた。


「断る!もし隠し撮りしたら、お前の持っているデータを全て破壊してやるからな。いくら俺から逃げても無駄だ。お前が何処にいても、そこに通信環境がある限り、俺は破壊出来るんだ。」


 怖い。そう、ラブ博士は怖いのだ。前の所長が居なくなったのも、タージュ博士の背後に彼が居たからなのだ。私にもそのスキルがあれば良かった。


 それから我々は主に研究所のことや、ジェーンとラブ博士の専門的なお話をメインに色々と談笑したのだった。

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