犬耳生えたので転職したほうがいいですか?
朝起きたら、犬の耳が頭に生えていた。
思い当たる節は一切ない。
俺は、犬にも猫にも特に思い入れはない。
一人暮らしの俺の同居人は、南米原産の「デグー」というネズミだけだ。
デグーは「アンデスの歌うネズミ」の異名を持ち、その多彩な鳴き声は、言語学者が研究の対象にしているらしい。
デグーは臭いもなく、獣臭さが苦手な人にもオススメのペットだ。
うん、まぁ、デグーの話はいいとして。
なぜ俺が、これを犬耳だと判定したかというと、シベリアンハスキーの耳そっくりだからだ。
鏡を見ながらスマホを開き、なんとなく「犬」「耳」で画像検索したら最初に出てきた奴にそっくりだった。
うーん。
取りあえず上司に電話だな。
スマホのアドレス帳から、上司の多賀さんの名前を検索して電話した。
「もしもし」
「あ、綿貫くん、何? ちょっと化粧で忙しいんだけど」
「あの、犬耳が生えたんですけど、仕事行っても大丈夫ですか?」
「ぷっ。あーもう! くだらないこと朝から言うから、やり直しじゃない! 猫耳じゃないならいいよ!」
「わかりました」
いいらしい。
デグーの顔の下を撫で、餌、水を準備したあとで身支度して職場に向かった。
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「き、君! 犬耳生えてるじゃん!」
出会って開口一番、多賀さんが叫んだ。
「えっ? 俺言いましたよね?」
「あんなのマジだと思うか普通! それに君、普通のテンションだったじゃん!」
「まぁ、実は五分ほどハサミ握りしめて、『バツン!』と切ろうか迷ったあとだったので、あの時は冷静だったかも知れないですね」
「効果音怖いな! しかもシベリアンハスキーの耳じゃん!」
「えっ? よくわかりましたね」
「まぁ⋯⋯私一番好きな犬だし、ハスキー」
「あれ? これフラグですかね?」
「いや、君がシベリアンハスキーそのものになっても、勘弁だ」
「さいですか」
「んじゃ、仕事しましょうか⋯⋯よりにもよって、今日は予約がいっぱいだから、落ち着いてからそれどうするか考えましょう」
「そうですね」
そう、本来なら有給でもとって病院に行くべきなんだろうが、今日は予約がいっぱいなのだ。
俺の仕事は、火葬場の職員。
亡くなった方の最後を演出する、大事な仕事だ。
高給とはとても言えないが、上手く死体を焼き、骨が綺麗に残せて遺族に感謝されるととても嬉しい、やりがいを感じる仕事だ。
遺族は一瞬、俺の犬耳を見てぎょっとした表情を浮かべたが、
「朝起きたら生えてました」
と説明すると、何とか受け入れてくれた。
遺体が焼き上がり、遺族が骨を拾うのを見守っていると⋯⋯異変が起こった。
ハッハッハッハッハッハッ。
まるで変質者が、興奮したような声が聞こえきた。
誰だ?
俺だ。
どうやら骨を見て、興奮しているらしい。
ハッハッハッハッハッハッ。
抑えようとするが、止まらない。
これはまずい、なんかよだれも出てきた。
その時⋯⋯
「お骨が欲しいの? ハイ」
遺族の一人の少女が、遺骨を差し出してきた。
まずい、これは⋯⋯!
思わずかじりつきたくなる衝動に必死で抵抗し、手で受け取る。
「アッチィ!」
やけどした。
転職しようかなぁ。
この作品は、結子様の作品
「猫耳生えたので有給取っていいですか?」
https://ncode.syosetu.com/n1362fy/
から着想を頂きました。
とっても面白い作品なので、「猫有」を是非ご覧ください。




