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犬耳生えたので転職したほうがいいですか?

作者: 長谷川凸蔵
掲載日:2020/01/26

 朝起きたら、犬の耳が頭に生えていた。

 思い当たる節は一切ない。

 俺は、犬にも猫にも特に思い入れはない。


 一人暮らしの俺の同居人は、南米原産の「デグー」というネズミだけだ。

 デグーは「アンデスの歌うネズミ」の異名を持ち、その多彩な鳴き声は、言語学者が研究の対象にしているらしい。

 デグーは臭いもなく、獣臭さが苦手な人にもオススメのペットだ。


 うん、まぁ、デグーの話はいいとして。


 なぜ俺が、これを犬耳だと判定したかというと、シベリアンハスキーの耳そっくりだからだ。


 鏡を見ながらスマホを開き、なんとなく「犬」「耳」で画像検索したら最初に出てきた奴にそっくりだった。


 うーん。


 取りあえず上司に電話だな。

 スマホのアドレス帳から、上司の多賀さんの名前を検索して電話した。


「もしもし」

「あ、綿貫くん、何? ちょっと化粧で忙しいんだけど」

「あの、犬耳が生えたんですけど、仕事行っても大丈夫ですか?」

「ぷっ。あーもう! くだらないこと朝から言うから、やり直しじゃない! 猫耳じゃないならいいよ!」 

「わかりました」


 いいらしい。

 デグーの顔の下を撫で、餌、水を準備したあとで身支度して職場に向かった。



───────────────


「き、君! 犬耳生えてるじゃん!」


 出会って開口一番、多賀さんが叫んだ。


「えっ? 俺言いましたよね?」

「あんなのマジだと思うか普通! それに君、普通のテンションだったじゃん!」

「まぁ、実は五分ほどハサミ握りしめて、『バツン!』と切ろうか迷ったあとだったので、あの時は冷静だったかも知れないですね」

「効果音怖いな! しかもシベリアンハスキーの耳じゃん!」

「えっ? よくわかりましたね」

「まぁ⋯⋯私一番好きな犬だし、ハスキー」

「あれ? これフラグですかね?」

「いや、君がシベリアンハスキーそのものになっても、勘弁だ」

「さいですか」

「んじゃ、仕事しましょうか⋯⋯よりにもよって、今日は予約がいっぱいだから、落ち着いてからそれどうするか考えましょう」

「そうですね」


 そう、本来なら有給でもとって病院に行くべきなんだろうが、今日は予約がいっぱいなのだ。


 俺の仕事は、火葬場の職員。

 亡くなった方の最後を演出する、大事な仕事だ。

 高給とはとても言えないが、上手く死体を焼き、骨が綺麗に残せて遺族に感謝されるととても嬉しい、やりがいを感じる仕事だ。


 遺族は一瞬、俺の犬耳を見てぎょっとした表情を浮かべたが、


「朝起きたら生えてました」


 と説明すると、何とか受け入れてくれた。


 遺体が焼き上がり、遺族が骨を拾うのを見守っていると⋯⋯異変が起こった。


 ハッハッハッハッハッハッ。


 まるで変質者が、興奮したような声が聞こえきた。


 誰だ?

 俺だ。


 どうやら骨を見て、興奮しているらしい。


 ハッハッハッハッハッハッ。


 抑えようとするが、止まらない。


 これはまずい、なんかよだれも出てきた。


 その時⋯⋯


「お骨が欲しいの? ハイ」


 遺族の一人の少女が、遺骨を差し出してきた。


 まずい、これは⋯⋯!


 思わずかじりつきたくなる衝動に必死で抵抗し、手で受け取る。


「アッチィ!」


 やけどした。

 転職しようかなぁ。


 


この作品は、結子様の作品

「猫耳生えたので有給取っていいですか?」

https://ncode.syosetu.com/n1362fy/

から着想を頂きました。

とっても面白い作品なので、「猫有」を是非ご覧ください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 上司との会話が酷いなぁ、涙を誘うよ(他人事) てか、まず、病院にゴー!
[良い点] これはとてもいい作品ですね。涙なしには見られないですよ!(大嘘)これ、どんどん人格が犬に侵食されるパターン? [気になる点] 猫有っちゅー略し方は斬新ですね。亀有みたい。 [一言] まさか…
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