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9話。黄巾の乱の終わりと涼州の乱の始まり②

例によって作者の独断と偏見による知識が披露されております。学校などで言ったら恥を掻くので間違ってもコレが真実だ!等とは思わないように。


そう言うのが我慢出来る人のみ閲覧お願いします。


一万ポイント突破記念更新。本日2話目でごわす。


誰か地図とか下さっても良いのですよ? (ツンデレ懇願)


洛陽・大将軍府執務室


「お疲れ様です。こちらが例の準備に関する書簡になりますのでご確認下さい」


「……おう」


俺が連中と会合している間に皇甫嵩の出撃に関する各種書類を作らせていたんだが、もう終わらせていやがる。まぁ半年前から名家やら宦官の狙いを見抜いてたんだ、準備もしてたんだろうさ。


「あまり早く動くと疑われますので、二日三日程遅らせてから準備に入るとよろしいかと」


「そうか」


そう言って書簡を受け取れば、パッと見ただけで問題は無いとわかる。流石と言うか、まぁ何時も通りの仕事っぷりと言ったところか。それに言っていることは間違ってないのだろうが、自分が二日三日休もうとしてるのが丸わかりだぞ。


「ではこれにて失「よろこべ李儒。問題が発生したぞ」……礼します」


「諦めろ」


俺の言葉を聞かなかった振りをして逃げようたってそうはいかん。若僧が。そう簡単に休めると思うな。


「……問題とはなんでしょうか?」


ふっ。普段から感情を表情に出さねぇコイツが明らかに面倒臭がっていやがる。しかし気持ちはわからんでもないぞ?「ここで皇甫嵩は出ないことになった」なんて言ったら一から作り直しだからな。


……いや、こいつのことだから名前を書き直すだけで良いようにしている可能性も有るか。残念ながらソッチじゃねぇけどな。


「先に言っておくが皇甫嵩については問題ねぇ、この書簡はこのままで十分だ」


「そうですか」


俺の言葉に、あからさまにホッとした態度を見せる。顔には出ねぇのは見事だが、まだまだ甘い。まぁ若僧にしちゃ十分だがよ。


それはともかくとしてだ。


「張譲と袁隗の野郎が面倒なことをしやがってな」


「またですか?毎回毎回よくもまぁ」


「そう言うな。それがアイツ等の仕事だからな」


自分たちよりも偉い奴の存在が許せねぇのか、それとも自分たちに従わねぇのが許せねぇのかは知らんが、所詮は洛陽の中の蟲どもだ。洛陽から離れた地にいる盧植を讒言で追い落とせたから、他の将軍も思い通りになると本気で思っていやがる。


俺を狙う前に、俺の戦力になりそうな連中を追い落とすのは結構だが、いい加減今までのように行かなくなると言うことを知るべきだな。


「それはそうですね。それで、問題とは?」


そうだ、まずはコッチだ。名家としての見方ってヤツを知らねぇとどんな罠が張ってあるかわからねぇからな。


「あぁ、なんでも売官とか言って官位を売買するんだと」


連中は一体全体何考えてんだ?



――――――



「売官、官位の売買ですか」


「そうだ。去年の黄巾の乱や今回の涼州の乱で漢の財政が圧迫されたんで、その改善策の一環とするんだとよ」


「物は言いようですな」


「まったくだ。それで、問題はこの行為にどんな裏が有るのかって話だ」


何進にしてみればすでに位人臣を極めた身なので今更官位に拘る気がないのだろう。完全に他人事だ。


そして他人事と考えた場合、官位しか誇るものが無い名家連中がソレを切り売りすると言う行為は自爆にしか見えないのだろう。俺から見てもそうだ。しかし売官にはいくつかの理由がある。


「そうですな。いくつか有りますが……まずは己の派閥の拡大です」


これはわかりやすいところだな。


「ふむ。まぁ基本的に纏まった金が有るのは名家だの宦官連中だからな。自分たちで官位を買って、ソレをばら蒔けば良いってか?」


「そうですね。ただバラ撒きが効果が有るのは名家連中だけでしょうから、閣下はやらない方が良いでしょう」


「やらねぇよ。どうせ俺がやったところで連中は『ありがたく貰ってやる』って感じで終わるだろうからな」


その通りだ。何進に官位を貰った連中は一瞬はありがたがるかも知れんが、それが永続することは有り得ない。すぐに他の派閥に流れるだろう。


今までは名家連中に見向きもされなかった故に俺たちの派閥に加わっている連中も、官位があれば話は別になるだろうしな。向こうの派閥に移って「何進から官位を分捕った!」とでも言っておけば英雄扱いだ。そして名家閥がソレを利用して小者をこっちに押し付ける可能性もある。


でもってその小者達に「向こうに所属する振りをして閣下の派閥の拡大を狙います!」とか埋伏の毒っぽいことを言わせて、その為に官位を下さい!と何進に官位を買わせ、経済力を奪おうとするだろうよ。


史実とは違い自前の名家閥を持つ何進がそんな罠には掛からんだろうが。既に配下にいる連中に官位を渡すときには注意させねばならんな。


「それでよろしいかと。そして第二は……報奨です」


「報奨?官位を買わせるのが?」


わけがわからんという顔をしているな。まぁ普通はそうだ。だが宦官も名家も普通じゃないんだよ。


「はい。この場合は『官位を買わせる』もしくは『買って貰う』と考えるのではなく『官位を売ってやる』もしくは『買う権利をやる』と言い換えれば分かりやすいでしょうか?」


「……そう言うことかよ」


うむ。そういうことだ。しっかり理解できたようだな。


これは例えるなら「上流貴族のみ参加可能な会合に参加できるようになる貴重な権利を売ってやる。だからありがたく思え」って感じだ。


そもそも今回の売官の口実となった「財政の圧迫」だが、これは乱が起こって税が取れなかったとか、乱のせいで生じた軍事費に圧迫されたからと言うものではない。 (軍事費は少し絡む)


問題は報酬の支払いに関してだ。例としては元寇を退けた鎌倉がわかりやすいだろう。


勅命によって乱を鎮圧したのは良い。しかし働いて成果を上げた彼らには「ご苦労」では済まない。いや、元々が乱を鎮圧する存在である官軍だけならそれで良いのだが(それでも昇進や多少の手当は生じる)、官軍に協力した地方軍閥や地方の名家の連中には報酬を払う必要が生じる。ではその報酬はどこから出るのか?と言う話だ。


外敵を討伐したわけではないから略奪物はない。ならば本来ならばそれは国庫から賄われることになる。これは当たり前の話だろう。


しかしここで名家や宦官が絡んでくる。彼らは国庫に収められてある予算をすでに自分たちで切り分けているのだ。


それなのに軍部や地方に新たに予算を回すと言うことは、自分たちの取り分を減らすと言うこと。そんなことを連中が認めるはずがない。


結果として自分たちとは関係ないところから報酬を絞り出すことになった。その結果が連中が言う「財政の圧迫」だ。で、その解消の為に自分の褒美を自分で買わせると言うウルトラCな発想が生まれたわけだ。


連中の言い分としては「官位を買う権利自体が褒美。そして正式にソレを名乗らせることも褒美。ほら、二重に褒美を受け取ったのだから文句は無いだろう?」と言うもの。まさしく洛陽的思考である。


こんなの普通は理解できんよ。


「なるほどなぁ。官位だけで済む問題ならまだしも、実際に動いた連中には現物が必要になる。ソレをこんな形で賄おうとするとは想像の埒外だったぜ」


そりゃそうだ。


「ついでに言えば地方の名家や、清流派を名乗る連中から金を吸い上げる役割も有ります」


「なるほど。金さえ用意出来りゃ郷挙里選も何も必要ねぇからな。宦官も名家も嫌いって奴ならソレを選ぶか」


「そうですね」


「はっ!元々宦官や名家の連中がタダで好き勝手に弄ってたもんをこうして商品にするって言うんだ。その面の皮の厚さは褒めてやるべきかもな!」


元屠殺業者としては中々に認めがたいことだろうが、ある意味では無から有を作ったとも言えるので、中々にレベルが高いのは事実である。それに……


「ついでです。私も官位を買って貰いましょうか」


「は?」


鳩が豆鉄砲を喰らったような顔と言うかなんというか、オッサンに呆気に取られた表情をされてもなぁ。


「漢の財政圧迫を憂いた閣下が率先して官位を買うのです。宦官や名家も文句は付けられませんよね」


「……俺がお前の分を買うのか?」


何を今更。


「それはそうでしょう?私が自分で買って官位を付けるよりも、閣下が官位を買って私に下賜した方が良いと思いませんか?誰が上で誰が下かを分からせることにもなりますし、他の連中の励みにもなりますよ?」


「いや、そりゃそうかも知れねぇが……」


首をひねりながら釈然としねぇと呟くが、これだって立派な政略だろうに。


「閣下。良くお考え下さい」


「あぁん?」


「今ならば軍部とは別の役職も買えるのですよ?」


「……なるほど。連中の狙いの穴を突くか」


その発想は無かったって顔だな。だが何進がこれなら連中も同じなはず。


今の何進は何とか将軍とかならいくらでも任命できるが、それ以外は難しい。だがここで官位を買うことで今までとは違う切り口での政治闘争が可能になる。


「そういうことです。後から「アレはダメ。コレはダメ」と言われる前に、今のうちに動くべきです」


まさか施行してからいきなり廃止にもできんだろう。バラ撒きは無意味どころか害悪だが、本当の子飼いに官位を与える分には問題ない。いや問題ないどころか、武官以外の役職が貰えると分かれば若手連中も張り切るだろうさ。


「それもそうだな。連中はいつかは俺も官位を買うとは想定しているかもしれねぇが、ここまで早く動くとは思うまいよ」


「えぇ。法制度の公表と同時に行きましょう」


「ふっ。連中の驚く面が見れるかと思えば悪くねぇか」




――――



中平2年(西暦185年)春。漢の心ある者の全てが悪法と断じた売官制度が施行されることとなった。


そして政策の発表とほぼ同時に、大将軍である何進が2つの官位を買ったことで、彼は「金で買える官位に飛びつくとは……所詮は成り上がりか」と酷評されることになる。ここまでは宦官や名家の狙い通りだっただろう。


しかし、そのうちの一つを腹心である李儒に与えたことが、軍関係者や若手の名家出身者からの高い評価を得ることになるとは彼らも予想だにしていなかったと言う。


今年20になる若僧が九卿となった。それもその若僧は郷挙里選による推薦ではない。後ろ盾も何もなく、己の身一つで何進に仕えた彼は、家格も年功序列も完全に無視して仕事の成果だけを評価されての大抜擢を受けたのである。


結果として「彼に続け!」と若者が奮起し、大将軍府の作業効率が上昇したとかしなかったとか。


これが後の「(ゆい)(ざい)()(きょ)」の先駆けとなったと言うことは特筆するまでもないことであろう。


基本的に賄賂社会ですから売官自体はもっと前からあったと思いますが、185年に大々的に売官が始まった(太傅だの司徒まで売りに出された)のって、こう言う理由があったんじゃないかなぁと言う作者の考察と言う名の妄想ですよ?ってお話。


これが後の「唯才是挙」の先駆けとなったと言うことは特筆するまでもないことであろう(民明書房風味)


あれ?もしかして李儒が何進の癒しになってる? (錯乱)


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