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落とし物シリーズ

雪の日の落とし物

作者: 羽入 満月

 俺は、お昼を買おうとコンビニに向かいながら、河川敷を歩いていた。

 今日は、有休を使い、休みを取ったのでだらだらとすごしていた。


 お昼を何にしようかと考えながら、軽い足取りで歩いていた。


 それにしても、寒い。

 天気予報では、今日は寒く雪が降るかもといっていたなぁ。


 こんな日は、きっと、ちょっとおばかな小学生が「雪だ~」ってなって、地面に落ちた雪が溶けたら、「なくなった~」とか騒ぐんだろうな。ふふふ。


 そんなことを考えていると、視界に小学校低学年ぐらいの赤いランドセルを背負った女の子が土手にしゃがみこんでいるのが見えた。


 うん?デジャヴ?なんだか、前にもこんな光景を見た気がするぞ?


 また何か奇怪なものでも探しているのか?


 前々回は、水たまりに映った青空、前回は、金平糖を「星」と呼んでいたな。今回は何だ?


 そのまま横を通り抜けようとしたが、気になってしまい足が止まってしまう。


 なぜならば。

 前回、前々回て違って小学生は、探し物をしておらず、体育座りをして、泣いていたのだ。


 どうした?

 いつもみたいに能天気に、バカみたいな探し物をすればいいじゃないか。


 いったいどうしたんだ。気になるじゃないが。

 だからと、こちらから声をかけるのもためらわれる。


 変な人に声をかけられたってなるんじゃないか、今まで声を掛けてこなかったのに…


 そう言えば、だいたいこのタイミングで女子高生が声を掛けたんだよな。



「あれ?また探し物をしているの?」


「手伝おうか?」



 そうそうこんな感じで… 


 ってええ???



 また、デジャヴか!?幻聴か?



 やはり、出てきたのはショートカットとポニーテールの高校生だった。


 ていうか、今気づいたけど、まだ昼だぞ?お前ら学校はどうした?


 ……ん?小学生の荷物が多いな。

 あぁ!!終業式!!明日から冬休みか!



「…くすん。」


「どどどど、どうしたの?今回はそんなにハードな落し物なの?」


 おい、ポニーテール、慌てすぎだぞ。


「落ち着いて。まず、話を聞こう。どうしたの?」


 ショートカットが軌道修正する。


「ぐすっ、あのね、仲直りを探してるの。」


 うん?仲直り?仲直りの仕方が分からなくて、探してるっていうか、考えてるってことか?


「喧嘩しちゃったの?」


 ショートカットが優しく聞く。よし、詳しく話を聞きだすんだ。


「うんとね。さあちゃんがねっ、ひっく。いっしょに、あそぶっていったのに。ぐすっ、やくそくやぶるから、きらいっていっちゃったの…」


 つまり、言い過ぎてしまった、と。


「そっか。約束したのに破るのはやだね。でも、きらいって言うつもりじゃなかったのに、いっちゃったんだ?」

「うん」

「でも、また、一緒に遊びたいって思ってるんだよね?」

「うん。だから、あやまりたいの」

「じゃあ、まずはきらいって言って、「ごめんね」だな。」

「そうだね。それから「また、一緒に遊ぼう」だね。」


 ポニーテールとショートカットが優しい顔で小学生に語りかける。


「!!おねえちゃんたち、なかなおり、みつけるのはやい!!」


 一瞬、嬉しそうな顔をした小学生だったが、すぐにまた浮かない顔になる。


「でも…」


 小学生がもじもじしている。


 きっと、気まずくて自分から行く勇気が持てないのだろう。


「じゃあさ、お姉ちゃんたちもさあちゃんを一緒に探してあげる。」

「謝るときも一緒にいるからさっ。」


 そう言って、ショートカットとポニーテールが小学生の手を両方から握る。


「ありがとう」


 少し恥ずかしそうに、嬉しそうな笑顔で二人の顔を順番にみる。


 三人はてをつないで歩き出す。

 それを合図に空からはヒラヒラと雪が舞い散りだした。


「あー。雪だー。」


 そんな小学生の声とショートカットとポニーテールの笑い声が遠ざかっていく。


 俺はと言うと…


 再び、コンビニに向かって歩き出す。

 お昼を何にしようかなと考えながら、小学生が友達と仲直りをしたら何をして遊ぶのだろうと考えながら、雪の舞い散る空を見上げた。

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