壊れた心
彼の名は心。中学二年生。父親は既に死んでいて母親と二人で暮らしている。母親は忙しくて夜遅くまで帰ってこない。夜は作り置きの弁当だ。それにクラスでは気が弱いからと一部の人からいじめられ、加えて友達もほとんどいない。クラスの皆はそのことを知らない。だから昼は屋上でぼっち飯だった。
ある日、彼はスマホでSNSを開いた。すると、悪口を書かれていたのだ。例えば、「お前死ね」と「カッコ悪い癖に勉強ができてマジむかつく」とか。彼は鳥籠に閉じこもり、学校でも家でもマスクをするようになった。こうして地獄のような日々は続いていった。それと比例して彼の心の闇は深くなっていった。ネットに人を刺した絵を投稿したり、自殺の方法を調べたりするようになった。もちろん、一人で抱え込んでいたままだった。そんなある日、一人で屋上で食べていた時、誰かがやってきた。
「一緒に昼飯食わねぇか」
「お前は…」
「俺は純希だ。」
「僕は、心。」
純希も心と同じクラスで彼もまた、友達がほとんどいなかった。ある意味心と境遇が似ていた。
「どうした。なんかあったんかい?」
「僕、クラスで一部の人からいじめられているんだ。」
「昼休みになったら怒りに行くから名前言えよ。」
「春夫と佑と正一と和雄だ。」
「わかった。」
純希はこの四人にいじめをやめるように言った。心へのいじめが治まるどころか、彼もいじめられるようになってしまった。彼に対するいじめの方が心の時よりももっと酷かった。昼休み、校庭の裏で服で隠れている部分をたたかれたり、蹴られるようになった。また、SNSにも誹謗中傷を書かれるようになり、追い詰められていった。心とは互いにいつも相談するようになた。いじめられて三ヶ月、もう、いっそのこと死にたい、そう思うようになり、リスカに手を出すようになってしまった。心はそれを知り、純希を庇った。すると、心へのいじめも余計に酷くなり、途方に暮れたその時、純希が屋上へ向かった。僕も屋上を向かい、純希と話していた。屋上は夕焼け空でオレンジ色の光が二人を照らしていた。
「俺たちさ、いっそのこと死なない?」
「僕も、同じ気持ちだよ」
「俺たちが死んでもあのいじめっ子たちは何も感じないしそれに地球だって回り続ける。太陽だってあるし、星だって輝き続けるよ。」
「あの四人が少しでも悪いと思っても罰が当たらないのにな」
「そうだな」
「じゃあ、行こうか」
二人は低いフェンスを乗り越えてからひもで心の左手首を、純希の右手首を結んで手を繋ぎ、飛び降りた。通りかかった人に119番通報され、病院に搬送されたがもう既に死んでいた。二人は倒れていたときも手を放していなかった。それは二人の”友情”だった。