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始発と終電の狭間【3】



彼は驚いた顔をして

私が返答を待つことなくその絵を手に取るのをただ黙って見ていた。


何を考えているのだろう。

見ず知らずの私が急に声をかけた事に驚いているのは間違いない。

私も同じことをされたらきっと

びっくりして声が裏返り恥ずかしくなってその場から立ち去ろうとするだろう。


だから自分から見ず知らずの彼に声をかけたことは今でも信じられない。



だけど私は


ただ何かしらの理由をつけて


今から私のすることを目にして


感覚は違えど


自分と同じ気持ちにいつかなるであろうと共感を求めた。



彼の数時間に及ぶ努力を目の前で破り捨てようと思っていた。


だって無駄なんだもん。


彼がやるべきことはきっとそんなことじゃなくて足元に引かれているレールを進むこと。


訳の分からない言い訳を作り


私は彼から絵を取り






それを目にした——————











そのスケッチブックの1ページに描かれていたのは渋谷の風景。


私がここに数時間滞在して何回も目にした風景。



その絵は綺麗だった。




電車が描かれ



人が描かれ



信号待ちをしている車が描かれ




人々の一瞬が描かれていた。




もうすぐ私が離れる思い出の土地が



そのスケッチブックには描かれていた。








私はただその絵を見つめていた。

なぜか分からないけど数年前何度も足を踏み入れて楽しいと感じた学生生活を思い出しながら。



彼の目の前でその絵を破り捨てると決め手に取ったということを私は忘れて


ただそこに描かれている絵を見ながら


私は



感情が溢れ出てしまいそうで

元に戻せない幸せな過去を思い出しながら


必死に


必死に



自分の意思に反して溢れ出てきそうな涙を我慢しながらその絵を見ていた

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