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全滅 2

 僕らはキングの制服を受け取ると、下着を買うためにファッションセンターしまぬらへと向う。


「いや、下着は要らないと思うぜ」


 キングは嫌がるが、それをからかうようにミサキが言う。


「さっきみたいに下着が落ちても平気なの?」


「それは…… 困る」


「買うしかねーんじゃねーか?」


 ヤン太がそう言うと、しぶしぶ決心がついたようだ。


「……そうだな。OK 分かったよ」



 しまぬらに到着すると、僕らは下着コーナーへと移動する。


 女性用の下着コーナーへ入ったキングは挙動不審な人物と化す。キョロキョロと落ち着かない。

 やがてキングが『元男性用コーナー』という看板を見つけ、そこに逃げ込もうとするが、ミサキがそれを許さない。


「あそこにあるのは、女性用と同じだから」


 ピシャリと言い放つ。


Really(本当に)? 男性用のが残ってるんじゃないの?」


 あくまで逃げようとするキングの退路をヤン太が完全に断つ。


「いや、ひとつも残ってなかった。そういや前来たときは入り口でゲームやってたな」


 たしかにゲームばかりやっていた気がする。僕も思い出した情報を補足する。


「前々回もゲームをやってたよ、店の中にまったく入らなかった」


「もしかして、女性用のコーナーに入った事がない?」


 ジミ子がそう質問すると、キングは照れながら答えた。


「ないよ」


 なるほど、それなら恥ずかしがるのも分かる。

 最初は僕もこんな感じだった気がする。



 女性用の下着コーナーに入ると、キングはまず試着室に押し込められた。


「さて、まずはカップのサイズを計りましょうかね、Tシャツ姿になって」


 ミサキに促されて、不思議がるキング。


「Tシャツになるのはいいけど、カップって…… バストサイズ?」


「そうだよ、しかし大きそうね……」


 ジミ子がうらやましそうなジト目でキングのバストを眺める。

 初めてのキングは拒否反応を示す。


「いや、いい、いらない。俺がブラジャーなんて」


「最初はそう思うんだよね」


 僕がブラジャーを付け始めた頃を思い出しながら言う。

 ヤン太がふと思った事をキングに質問した。


「そういや痩せてから体育の授業はまだだっけ?」


「まだだね、受けてない」


「両足跳びの運動です、足をそろえて軽くジャンプしてみましょう」


 ミサキはヤン太の意図を理解してラジオ体操の一節を言う。


「えっ、なんで?」


 困惑するキング。


「騙されたと思ってやってみな」


 ヤン太にせかされて、キングは軽くジャンプをする。

 そして着地。ゆさりと遅れて下がる胸の肉。


「いってぇ、もげる、ちぎれる」


 悲鳴を上げるキング。

 その様子を見てジミ子が言い捨てる。


「だろうね、そのサイズじゃ」



「痩せていると、こんなにも痛いのか……」


 深刻な顔をするキング。


「まあ、とりあえず計りましょう」


 こんどは素直にミサキの言うとおりにする。

 両手をあげて、サイズを計る。


「ええと、トップとアンダーがこうだから…… Fカップ」


「馬鹿な…… ツカサ超えだと!」


 愕然(がくぜん)とするジミ子。


「で、でかいのかな?」


 照れるキングに対してジミ子は


「でかいわ! つかませろ!」


 そう言うなり、胸をわしづかみにする。


「ちょ、ちょっと」


 ミサキが止めに入って、ようやく手を離す。

 僕ははキングに耳打ちをする。


「とりあえずジミ子に謝って」


「えっなんで俺がジミ子に謝るの?」


「いいから謝っておいた方が良いよ」


「わかった。すまない、ジミ子」


「……分かればよろしい。今日のところはこれで勘弁してやるわ!」


 胸をわしづかみにされて、なおかつ謝る羽目になるキング。

 今日は災難続きかもしれない。



 そしていよいよ下着選びとなる。

 ミサキとジミ子が次から次へと持ってくる下着をキングに付け方を教えながら試着させていく。


 女子がもってくる下着はどれも似合うものだった。

 ただ、なぜかもってくる下着はどれもセクシー系の下着ばかりだ。

 モデルのような体型のキングがそれを身につけると、少し興奮するものがある。

 ヤン太もそれは同じようで、ときおり膠着(こうちゃく)したように見入っていた。



 何度も試着していると、キングが飽きてきたようだ。


「OK、今日はここら辺でいいや。もう違いが分からない」


「お気に入りのモノはございましたか?」


 ジミ子がふざけて店員のマネをする。


「どれが良いのか正直に言うと分からない」


 赤面しながら真面目に答えるキング。するとミサキが、


「じゃあ、私たちで適当に選んでいい?」


「ああ、任せるよ」


 ミサキとジミ子が生き生きと商品を選び出した。

 アレでもない、これでもないと選別を繰り返す。

 はっきりいうと、僕もヤン太もキングも違いがよくわからない。

 女子には元男子には見えない何かが見えているのかもしれない。


 そして20分ほど時間をかけて選抜し、購入した後に僕らはようやく店を出た。

 外はもう暗くなっており、この時は直ぐに解散となった。



 しかし、男性から女性に変わったときは、見た目はほとんど変わらなかったキングだが、痩せただけでこうも変わってしまうとは……


 ……それに、女性の下着売り場に居ても違和感を覚えなくなってきた僕が怖い。


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