食糧問題、その後に 4
キングが変わり果ててしまった日の帰りのホームルームの時間、例の『どこだってドア』が設置されている。
担任の墨田先生は、
「キングは放課後に少し残ってくれ、宇宙人が話しを聞きたいらしい」
と、告げた。
他に連絡は無く、ホームルームはすぐに終わる。
おそらく少しだけ話しをするだけだろう。
たいして時間は掛かりそうにないので、僕らはキングに付き合う事にした。
放課後に入ると、すぐに墨田先生はどこかへ連絡を入れる。
すると宇宙人がガチャリと扉を開けてやってきた。
「ハーイ、どうだった?」
宇宙人はいきなりキングに話しかけた。
「どうだったも何も、こうなったよ」
あきれ顔で応えるキング。宇宙人は気にせず話を続ける。
「ちょっと体脂肪率を計らせてネ」
「いいけどさ」
「ハイ、終わったヨ。体脂肪率37%から、19%への変化、ダイタイ予定の範囲内ネ」
僕はスマフォで体脂肪率の基準を調べてみる。
どうやら女性の理想的な体脂肪率は20%らしい。ほぼ理想の体型と言えるだろう。
理想の体型を手に入れた宇宙人にキングが文句を言う。
「下痢が酷かったんだけど、何とかならないのか、これ」
「ソウネ、チョット結果を急ぎすぎたのかもネ、市販する時は穏やかな効果に直そうカネ」
『市販』という言葉にミサキとジミ子が飛びついた。
あまり痩せる必要のなさそうなミサキが質問をする。
「これ、発売されるんですか? 痩せられるんですよね?」
「私も、これ欲しいです」
ジミ子も目を輝かせて言う。
ジミ子はどちらかと痩せ型で、もうちょっと太った方が良いと思うのだが……
「キミタチ、十分痩せているじゃナイ、それ以上痩せる必要は無いデショ」
宇宙人に指摘される。やはり宇宙人も同じ事を思っていたらしい。
「いや、それが…… 『部分痩せ』ってできます、ちょっと下腹部周りが……」
ジミ子が頬を赤らめて、ちょっと恥ずかしそうに言う。
「マア、やろうと思えば出来るネ」
「『部分痩せ』ってどの部分ができますか?」
ミサキがその話に食いついて来た。
「ダイタイ出来ると思うヨ、要望を聞くけどドノ部分が痩せたいノ?」
「『お腹周り』『胸の下周り』『腰回り』『太もも』『お尻』『顎の下』『二の腕』……」
ミサキがありとあらゆる場所を言う。
「ほとんど全身じゃねーか」
ヤン太があきれ気味にツッコんだ。
「違うもん、胸とかは痩せたくないもん」
ミサキの指摘に、宇宙人もあきれたような口調で応えた。
「注文が多いケド、分かったネ。薬屋の棚を一つ丸々占領してしまいソウダケド……」
「やった、よろしくお願いします」
あまりに喜んでいる姿を見て、宇宙人は疑問に思ったようだ。
「ソモソモなんでキミタチそんなに痩せたいノ、食料摂取量を調整シテ太らなければ良いんじゃ無いノ?」
「それは、その、えへへ」
ミサキは笑ってごまかす。一方、ジミ子は真剣は顔をして、こうつぶやいた。
「これは…… 食べても食べたことにしなければ良いんじゃないだろうか?」
訳の分からない事を口にする。
「ドウイウ事?」
この一言は、宇宙人にも理解不可能だったらしい。ジミ子に説明を求めてきた。
「食べても食べなかった事にする。つまり、好きなだけ食べても太らない。栄養を吸収されないような薬は作れますか?」
「作れるケド、何のために作るノ?」
「それができれば甘いもの、脂っこいもの、おやつ、それら全てが食べ放題になる訳ですよ」
ジミ子はとびっきりのドヤ顔をした。
しかし宇宙人はますます理解不能の状態に陥る。
「必要な量、適量を摂取すれば、イイだけなんじゃないノ?」
すると、ミサキが話しに割り込んでくる。
「そうはいきません、甘いものは女子に必要です」
「マア、ワカッタネ、一応作ってはみるネ……」
宇宙人は、女子というものが良く分かっていないようだ。
女子が理解不可能な存在だと思ったらしく、元男性陣の僕らにこう意見を聞いてきた。
「トコロデ、今言った薬は需要あると思ウ? 売れると思ウ?」
ごくごく簡単な質問に僕らは答える。
「売れると思いますよ」「売れるんじゃねーかな」「売れると思うぜ」
「……ワカッタヨ、マッタク理解不可能ネ」
宇宙人は一通り意見を聞くと、不可思議な様子でドアの向こうへと帰って行った。
これらは後日、改善政策の場で、発表される事となった。




