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第9回目の改善政策 2

 宇宙人は電子レンジプラスという物を出してきた。

 それは従来の温める事に加えて、さらに瞬間冷凍が出来て、しかも味の変わらない(すぐ)れものだった。



「『食品ロス』って言葉は知っているカネ?」


 宇宙人が福竹アナウンサーに問いかける。


「ええ、食べられる食料を捨てる事ですね」


「コノ国の食品ロス、どのくらいだか知っているカネ?」


「いいえ、ちょっとわかりません」


「年間646万トンだヨ」


「すごい量ですね、ちょっと想像できませんが」


「国民一人当たりに直すと、一日あたり約139g。茶碗一杯分捨ててる計算になるネ」


「……ちょっと酷いですね」


「デモ、世界的にはマシな方ネ、世界的に見ると、年間約13億トン、食品の3分の1が捨てられているという地域もあるネ」


「3分の1ですか…… でもこの装置でかなり減りますよね」


「ソウネ、さすがに100%は無理だケド、70~80%ぐらいなら減らせると思うネ」


 僕たちはかなりの食品を無駄にしてきたらしい。

 それがこの装置でかなり減らせる。

 冷凍食品にはちょっと抵抗感があるが、味もほとんど変わらないという話だし、その位は我慢できるだろう。



 宇宙人はさらに話しを続ける。


「アト、普及の為に冷凍食品には消費税を掛けないようにするヨ」


「本当ですか、財源とか大丈夫ですか?」


「消費税は元々社会保障費の為の税だからネ、医療費が大幅に削減できたので大丈夫デショ」


「そうですね、医療費はかなり削減できましたね」


 消費税の削減はありがたい。

 電子レンジプラスの値段はそこそこしそうだが、これなら1~2年で元が取れるんじゃないだろうか。



「他ニモ、根本的な問題の解決もするヨ。ワレワレの技術でいろいろと品種改良したネ」


「作物の品種改良ですね。どのような物を改良したんでしょうか?」


「トリエアズ、生産量の多い穀物から改良したネ。サンプルを持って来たから食べてみてヨ」


「わかりました、私はあまり食レポは得意ではないのですが、頑張ってみます」


 福竹アナウンサーはあまり演技が上手いとは言えない。おそらく率直な意見を返してくるだろう。

 まあ、この番組は報道番組で、あの本音をテロップで出してしまうシステムが採用されているので、下手な事は言えないのだが……



「マズはコレを改良したネ」


 そういって宇宙人はトウモロコシの写真を出した。

 どこにでも植わっているようなトウモロコシで、特におかしなところは見当たらない。農家の人が見れば違いが分かるのかもしれないが、僕には分からなかった。


「どこが違うんでしょう?」


「マズ、成長に必要な水分量が従来の5分の2ネ、アト、収穫量を多くしたネ」


「収穫量ですか? 写真ではあまり違いが分かりませんが」


「まあ、食べて見てヨ」


 そういって宇宙人は実物のトウモロコシを取り出した。

 見た目も普通の物と変わった点は無い。


「生のままでは、ちょっと……」


「その為の電子レンジプラスだネ、調理するヨ。『塩ゆで』と『焼きもろこし』どっちがイイネ?」


「そうですね、素材の味を確かめる為に『塩ゆで』でお願いします」


「デハ、電子レンジプラスにトウモロコシを入れるネ。

 続いて『調理ボタン』を押す、そして『塩ゆで』と料理名を言うネ」


 すると電子レンジプラスのディスプレイに、調味料入れに水と塩を入れるよう表示される。


 宇宙人はレンジの脇にある引き出しを開けると、水と塩を入れた。


「コレで準備は完了ネ、アトはスタートボタンを押すだけネ」


「これは便利です」


 スタートボタンを押すと2分もしないうちにチーンという音がして、塩ゆでのトウモロコシができあがる。

 ふつうなら10分近くかかりそうだが、どうやら調理も早いらしい。



「それでは頂きますね」


 福竹アナウンサーは、できあがったばかりのトウモロコシにかじりついた。


「味は…… 従来と変わりませんね。私の味覚では違いは分かりません」


 そうい言いながら、黙々と食べるが、どうも食べるスピードが遅い。


「ちょっと待って下さい、これ量が多すぎます」


 トウモロコシ一本くらいなら直ぐに食べ終わりそうだが……


「ダカラ、生産量を増やしたネ」



「……食べかけですが、失礼して実と芯をバラしますね」


 そういって福竹アナウンサーはトウモロコシの実をほぐし始めた。

 すると、その異常性が視聴者にも分かる。トウモロコシの実、一つ一つが異様に長いのだ。


 普通、トウモロコシと言えば、表面のわずかな部分だけが食べられるだけで、残りの大部分は芯でできている。

 だが、このトウモロコシは違った。実を全て剥がしたトウモロコシの芯は鉛筆程度の細さで、残りは全て実でできているようだ。


「食べられる部分を増やしたネ、従来の5~6倍は食べれるネ」


「これは凄いですね、育て方などは従来と変わりませんか?」


「水の量が少なくて済む以外は、従来どうりネ。誰でも育てられるヨ」


 宇宙人のバイオ技術はやはりすごかった。

 これだけで地球上から飢えが無くなりそうだが、毎食トウモロコシだけだと飽きてしまう。


 だが、宇宙人の用意して置いたものはこれだけではないらしい。


「マダ、他にも品種改良したヨ」


「そうですか。他にどのような物があるのでしょうか?」



 宇宙人の説明はつづく。

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