コンタクト 3
「デハ、5万円を配るヨ。ソレと本音をしゃべって貰う為に自白剤を投与するヨ」
宇宙人はとんでもない事を言うと、例のL字型の銃のような金属が現れて、そこら辺に電撃を放ちまくる。
よける間もなく、僕もその電撃を喰らった。
しばらくして僕はふらふらしてくる、そして頭がガンガンしてきて気持ち悪くなってきた。
ミサキが頬を赤くして、こちらに近寄ってくる。
「あはは、ツカサが二人いる~」
そういって僕のおでこをペチペチと叩く。
この状態は……
僕は思い切って宇宙人に質問をしてみた。
「これって僕らにお酒を注入しました?」
「イイヤ、アルコールは使ってないヨ。君たちは未成年だからネ。
ただ、酔っ払った状態と同じ症状を作ったネ。
この国の住人は酔っ払うと本音を言ってくれるからネ」
僕の質問に宇宙人は律儀に答えてくれた。
酔っ払いか……
確かに人は酔っ払うと本音をしゃべるのかもしれない。
テレビ番組の酔っ払いの特集では『社会への不満』とか、『上司の悪口』とか、普段は絶対にしゃべらない事をペラペラとしゃべるようなシーンがある。
しかし、高校生のクラスをまるごと酔っ払いにしてしまうのは、倫理的にどうなんだろうか?
未成年に対してこんな事をしたとバレると、教育団体がうるさそうだ。
改めて周りを見てみると、症状は人によって様々だ。
何人かは気持ち悪くなってグッタリとしている。
他には机に突っ伏して寝ていたり。笑い出したり、泣き出したりしている人もいる。
頭がガンガンしている僕の症状は、酔っ払いと言うより二日酔いに近そうだ。
阿鼻叫喚の教室に叫び声が響く。
「決闘がしてぇー!」
その声の主はヤン太だ。いきなり叫びだした。
決闘とは1対1のタイマンのケンカの事だ。
ヤン太は以前、ちょくちょくこの決闘というケンカをしていたが、この場でそんな発言はマズすぎる。
僕は何とかヤン太を止めに入る。
「ケンカとかマズイよ、ここには先生も宇宙人も居るんだし」
「関係ないね。そろそろ我慢の限界だ!」
まあまあとやさしく言い聞かせるようになだめるのだが、そこは酔っ払い、全く言う事を聞かない。
ぼくらが揉めていると、最悪な事に宇宙人が気づいてしまった。
「決闘とはナニかネ?」
その質問に、しらふの墨田先生が説明をする。
「生徒同士のケンカのようなものですね。一応ルールはあるようですが……」
「ソレは犯罪なのかネ?」
「まあ、厳密に言えば犯罪ですが、未成年の学生同士のいざこざは、よほどの事が無い限り見過ごされる傾向にあります」
墨田先生は厳しい立場で、なんとか擁護をしてくれた。
一方、ヤン太は
「決闘がやりたい、やりたい」
と子供のように駄々をこねていた。
その様子を見ていた宇宙人はボソリと言う。
「ソンナにやりたいのならやればいいじゃナイ」
「「えっ」」
宇宙人の以外な提案に、僕と墨田先生の声がハモった。
「良いんですか?」
墨田先生の質問に宇宙人は、
「学生のイザコザは見過ごされる文化なのでショ」
と言い放つ。するとヤン太が
「話がわかるじゃねーか」
とニヤリと笑った。
「他の高校に行くのカナ?」
宇宙人はヤン太にたずねる。
「いつもは下巣高校の連中とやりあってたぜ!」
「デハ、転送するヨ」
そういうと宇宙人はピンク色のドアをガチャリと開けた。
するとドアの先は下巣高校の正面玄関につながる。
「話がわかるね。じゃあ、ちょっくら行ってくる」
そういってヤン太はドアの向こう側へと消えていった。
「止めないんですか?」
僕がそう宇宙人に言うと。
「ルールがあるんでショ。この惑星だとボクシングのスポーツの様なものだよネ」
と言い放つ。まあ、確かにボクシングもケンカに見えない事はないけれど……
ヤン太の件が解決して、一息ついていたら後ろから叫び声が聞こえた。
「キングのたるんだ尻を、思いっきりぶっ叩きたい!」
その声には聞き覚えがある。
後ろを振り返って確認すると、声の主はジミ子だった。
僕はますます頭が痛くなってきた。これは二日酔いだけのせいではないだろう。
※イラストはseima氏に描いていただきました。




