コンタクト 1
放課後、僕らはいつものメンツでハンバーガーチェーンのメェクドナルドゥに来ている。
ネットの規制が無くなり、ゲームに夢中になっていたキングだが、最近ちょっと様子がおかしい。
ため息ばかりついていたので、みんなでメェクドナルドゥに誘ったら、あっさり誘いに乗って来た。
キングは普段なら、ゲーム以外に時間を使う事を嫌がる。やはり何かがおかしい気がする。
僕は心配になり、キングに声を掛ける。
「最近、ため息が多いけど、どうかしたの?」
「聞いてくれよ、Gameがはかどらないんだ……」
「この間、ネットワークが早くなったって言ってなかったっけ?」
「確かに、環境は良くなったんだけど、guildの仲間がさ、半分くらい戻ってこなくって……」
「やめちゃったの?」
「そう、引退者が続出している。時間が空いてしまって、やる気を無くしたらしい……」
その気持ちは分からなくもない、僕もスマフォのゲームに対して、すっかり冷めてしまった。
一度、冷めてしまうと、スマフォのゲームはどうでも良く思えてしまう。
「キングもそのゲームやめちゃえば?」
ジミ子が簡単に言ってくれた。
たしかあのゲームは数年は続けているはず。簡単になど辞められないだろう。
ところがキングは、
「そうだな、人も居なくなってきたし、そろそろやめどきかもな……」
寂しげに、遠くを見るように、つぶやいた。
「無理にやめなくても良いんじゃないかな」
僕が励ますように言うと、
「実は他に話題になっているGameがあって、ちょっとそっちに手をだしてみるよ」
「ああ、そう」
僕の心配は杞憂だった。
その後、キングは次に手を出すゲームについて説明をしてくれた。
今度のゲームは、そんなに激しいゲームでは無いらしく、僕らと遊ぶ時間も作れそうだという事だった。
いつもはゲームを最優先にするキングだが、少しだけ距離を置くようだ。
もしかしたら今回の出来事で、ほんの少し大人になったのかもしれない。
キングの相談が終わると、僕らは雑談を始める。
いろいろと話題が上がるが、やはり今週はじまった『宇宙人の字幕システム』の話になった。
「あれってやっぱり本音だよね?」
ミサキがみんなに質問を投げる。ヤン太が
「おそらく本音だろ。だってアナウンサーとかあんなに慌てたじゃんか」
その意見には賛成だ。僕も説明を付け加える。
「確かに、もし本心と全く違ったら、まず字幕を否定をするよね」
「たしかに」「そうね」「Exactly」
僕らの見解は一致した。
「あれってどこまで分かるんだろう?」
ジミ子が疑問を持つ。
僕にはその答えが分かる人物が思い当たる。
「ちょっと姉ちゃんに聞いてみる?」
その返答にジミ子は即答した。
「是非、お願い」
「質問は投げてみるけど、時間がかかるかも」
そう言いながら僕はLnieにメッセージを打ち込む。
次に僕らの話題はテレビ都京のグルメレポートの話になった。
レポーターの内心が字幕で表示されるという、例の番組だ。
「あれ、おもしれーよな。この間、ラーメン屋のオヤジがレポーターを掴みかかってた」
ヤン太がニヤニヤしながら言う。そのシーンは僕も見ていた。
「そうそう、最後に『塩を巻いとけ!』って怒鳴ってたよね」
「私は、字幕で『こんなトマト食べたことがないくらいウマイ』って出たトマトを食べてみたい」
ミサキがうっとりとしながら言う。
「たしかに、あれは美味しそうだった。僕も食べてみたい」
僕が感想を言うと、続いてジミ子も気になったシーンを上げてきた。
「あれ、酷かったよね、『秘密の調味料は?』って質問に、『教えません!』って答えてて、下に字幕で『プルドッフソース』って出たの」
「ああ、あれは大笑いした」
ヤン太がそう答えると、キングが更なる情報を教えてくれた。
「あれは後で店側から訴えられたらしいぜ」
「マジかよ」「ほんとに?」「すごいねテレビ都京」
うん、本当に凄い。やはり正気ではない。
そんな話で盛り上がってたら、姉ちゃんからメッセージが飛んできた。
「姉ちゃんからメッセージだ、読み上げるね。
『あのシステムは思考の浅い所を読み取ってるだけ』だって。
『発言者が言いかけた言葉をそのまま表示できる』そうだよ」
ジミ子が即座に解析を入れる。
「なるほど、なんでも記憶から引き出せる訳では無くて、嘘発見器みたいに質問が必要なのか」
「そうみたいだね」
ミサキが分かっているのか分かっていないのか、あいまいな返事を返した。
「あっ追加のメッセージが来たよ、
『この機能は報道番組か、例のグルメレポートにしか使って無いから安心して』だってさ」
僕がそう言うと、ヤン太が
「そうだな、本音があちこちでダダ漏れになったら、殴り合いが始まるかもな」
確かに。これで思考を日常的に読まれたら、社会が破綻してしまうかもしれない。
だが、テレビに関係の無い僕らに、このシステムは全く関係なさそうだ。
この日は終始、グルメレポートの番組の話で盛り上がり、解散となった。




