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第4回目の改善政策 1

 本日は、第4回の改善政策の発表会。

 昼食を早めに済ませ、僕たちはテレビの前に待機している。


 やがて12時の時報と共に『第4回 改善政策施行かいぜんせいさくしこう』とタイトルが映し出された。


 放送場所はいつも通り『明石市立天文科学館』。

 そしておなじみの宇宙人と福竹アナウンサーが画面に映し出される。

 今週はどのような発表がなされるのだろうか。



「さて、今週もやって参りました『第4回目の改善政策の発表』。今週はどのような発表をされるのですか?」


 福竹アナウンサーが宇宙人に話を振る。


 すると、宇宙人は顔を伏せがちにして、こう言った。


「怒られたヨ。先週の改善政策の発表の後、一部の人からメチャクチャ怒られたヨ」


 どうやら怒られて(こた)えているらしい。


 しかし先週の改善内容は『肌の色、髪の色、目の色』を自由に変えれるというものだった。

 何か不都合な事でもあったのだろうか?



 福竹アナウンサーが的確な質問を投げる。


「どのような方々から、どんな怒られ方をしたのでしょう?」


「ヘアカラーとヘアマニキュア作ってる人たちから、怒られたネ。

 このままじゃ食べていけないって文句をサンザン言われたネ」


「ああ、まあ、そうでしょうね」


 確かに先週の改善政策の実施で、ヘアカラーなどの売り上げは壊滅的(かいめつてき)だろう。



「ソコデ、今週の改善案はコレだヨ」


 そう言って宇宙人はテロップを取り出した。そこには『ベーシックインカムの導入』と書いてあった。


「ベーシックインカムですか? 国民全員にお金を配るという、あのシステムですか?」


 福竹アナウンサーが詳しく聞き出す。


「ソウダネ、その『ベーシックインカム』で間違いないネ。

 『働かないと食べていけない』ナラ、『働かなくても食べていける』システムを導入すれば問題解決ネ」


 いや、まあ、確かにその通りかもしれないが、こんな理由で導入してしまうのはどうだろうか……



「確かに、ベーシックインカムを導入すると、働かなくても日々の生活が送れるかもしれません。

 しかし、肝心の財源はどうなるのでしょうか?」


 福竹アナウンサーが、もっとも問題になりそうな点を質問する。


「『ベーシックインカム税』を設けて、働いてる人から聴取するネ。

 後、ワレワレも少し費用を出すヨ。アノ生殖活動用の薬の売り上げが予想を超えてイイのでネ」


 そりゃそうだろう。独占状態で必要不可欠な薬なのだから売れない訳がない。



 しかし福竹アナウンサーが意外な質問した。


「『予想を超えて』ですが、あなた方でも予測が出来ない事があるのでしょうか?」


 確かに、宇宙人なら売り上げの予想くらい簡単に出来そうだが……


「アノ薬は、受精確率を0%、10%、25%、97%と用意したヨネ」


「ええ、そうですね」


「ワレワレは生殖活動に使うのだカラ、確率が一番高い97%が一番売れると思ったのネ。

 売り上げ予想は、この国の出産数が年間94万人、ダカラ受精率97%ダト、薬は年間97万回分も売れれば良いと思ってたワケ。

 でも実際は0%ばかり売れるノヨ。おかしくナイ?」


「いやぁ、たぶんそうなるでしょうね……」


「受精確率0%なんて必要ナイデショ。なんでナノ?」


「まあ、この星の文化の一環です」


「……まあイイヤ。とにかく思わぬ収入があったから、ベーシックインカムの財源に当てるヨ」


 宇宙人は納得がいかない様子だが、改善政策の話を進めた。

 まあ、確かにこれは宇宙人には理解不可能な現象なのかもしれない。



「ところで、ベーシックインカム税とはどのくらい徴収されるのでしょうか?」


「いくつか、具体的なサンプルを提示するヨ」


 福竹アナウンサーの質問に宇宙人はテロップを出して丁寧に答える。


 テロップには様々な月収が書かれている。


「まずは『月収が21万円の場合』の場合ネ」


 宇宙人がテープで隠された部分をめくると、そこには


『ベーシックインカム税で5万円徴収』とあった。


「これでは暮らして行けません」


 福竹アナウンサーが悲痛な叫びを上げると、


「大丈夫ダヨ」


 そういって次の隠された部分をめくった。


 そこには『ベーシックインカムで7万円配布』と出てきた。


「おっ、なるほど。つまり差し引きプラス2万円となる訳ですか」


「この税は収入が増えると、上がっていくヨ。こんな感じダヨ」


 宇宙人はテロップの隠された部分を次々と剥がす。


『月収が30万円の場合 収支がマイナス1万円』

『月収が50万円の場合 収支がマイナス8万円』

『月収が100万円の場合 収支がマイナス26万円』


 僕は学生なので実感は沸かないが、こうして見てみると現実的な数字に見えてきた。


「これなら何とかなりそうですね」


 福竹アナウンサーも、この数字には納得のご様子。


「アト、暮らしていく上でお金足りない場合は手当を付けるヨ。

 住宅の無料貸し出し、食料の現物支給トカ。

 他にこのシステムを導入するには、他にもいくつか理由があるネ」



 宇宙人の説明は続く。

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