表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

566/567

人体エディット 1

 改善政策の発表が終り、自由に容姿が変えられると分ると、教室内がざわつき始めた。


「どう変えようかしら」「顔だけじゃなく、体も変えられるのよね」


 あちこちから声があがると、担任の墨田(すみだ)先生が注意をする。


「ほら、お前たち、少し静かにしろ!」


 注意を受けると、クラスのみんなの少し声が小さくなるものの、おしゃべりは止まらない。ガヤガヤと話していると、テレビの方からティロン、ティロンと、臨時ニュースのチャイムが聞えてきた。



 テレビにニューススタジオが映り、慌ただしい雰囲気の中、アナウンサーが原稿を読む。


「えー、ただ今、国会より緊急発表がありました。今回の改善政策で行なわれる容姿の整形についてですが、実際に施術(せじゅつ)を行えるようになるまで、5日ほど猶予(ゆうよ)が欲しいそうです。主な理由は免許証、マイナンバーカードなどの、写真での本人確認ができなくなると予想されるので、何らかの替わりの認証システムを導入したいそうです。宇宙人による整形サービスの開始までは、いましばらくお待ち下さい」


 アナウンサーが短い告知をすると、臨時ニュースが終わった。どうやら実際に整形できるようになるまで、もうしばらく時間がかかりそうだ。



 しばらく時間がかかるというニュースを聞いて、クラスのみんなが少しだけ冷静になる。


「さっきまでは、整形しなきゃと思っていたけど、無理して直さなくても良いかも?」「そうね、急いでやる必要は全く無いわね。周りの様子をみてからでも遅くないかもね」


 確かに、整形などしなくても問題なく生きて行ける。焦る必要はまるで無いだろう。

 教室は静けさを取り戻し、気がつけば、いつもの光景になっていた。



 やがて授業が終り、放課後が訪れる。僕らはハンバーガーチェーンのメェクドナルドゥに行き、雑談を始めた。話題はもちろん、今週の改善政策についてだ。


「背が高く出来るのは良いよな。俺、試してみようかな……」


 ヤン太が言うと、キングが反論をする。


「でも、遺伝子操作をするんだろ、ちょっと怖くないか?」


「怖いけど、いざとなれば元に戻せるとも言ってたぜ、やってみる価値はあるだろう」


 ヤン太は身長が低い事を気にしている。体の整形に関して、かなり本気のようだ。



「ふ、ふふふ、これで豊満(ほうまん)なバストが手に入るわ。どこまで大きくできるのかしら、とりあえず、できるだけ大きくしてみましょうかしらね」


 ジミ子がブツブツと、独り言のようにつぶやいていた。こちらはヤン太以上に本気のようだ。どこか虚空(こくう)をにらみつけるような目つきが、とても怖い。



 ミサキがみんなに問いかける。


「でも、自分のやりたい整形をうまく伝えるのって難しいんじゃない?」


 それを聞いて、僕が答える。


「確かにそうだね。番組でやっていたけど、目を大きくしてくれって言ったら、グレイ型の宇宙人みたいになってたし」


「そうね、背を高くしてくれって言ったら、下手すると2メートル以上にされたりするかもよ」


 ミサキが冗談っぽく言うと、ヤン太が苦笑いを浮かべながら答える。


「さすがにそのサイズは困る。それだったら、今のままで良いな」


「バストサイズも、Zカップとかにされるかもしれないぜ」


 キングがジミ子をからかうように言うと、ジミ子はさらりと答えた。


「私はZカップでもぜんぜん構わないけど」


 目がマジだった。ジミ子はとことんやる気なのかもしれない…… 



 僕は話題をそらすために、ミサキに話をふった。


「ミサキは何かやりたい整形とかあるの?」


「私はもう少し、背がほしいかしら。こう、シュッと、格好いい感じになりたいのよね」


「そのリクエストの仕方だと、とんでもない姿にされるかもよ。もっと明確にイメージを伝えないと」


「……そうかもしれないわね。もしかしたらガリガリに痩せた姿にされちゃうかも」


 ミサキなら、ガリガリにされてしまっても、すぐに食べて体型を戻せる気がするけど…… まあ、余計な事は言わないでおこう。



「キングは何かやりたい事とかある?」


 モデル体型のキングに話をふってみる。パーフェクトなボディのキングには徳に要望など無いと思ったのだが、こんな返事がきた。


「俺は、少し体が小さくても良いかな。バスの座席とか、乗り物の座席を狭く感じる事が多い。まあ、大した話じゃないから、わざわざ整形までして直そうとは思わないけどな。そう言うツカサはどうなんだ?」


 実は、できるなら胸を少し軽くしたいのだが。


「いや、僕は特にないかな」


 ジミ子の前では絶対に口に出せない内容だ。



 この後、顔のパーツの話になる。目はどの女優が良いのか、鼻は、唇は、と、理想を話していると、姉ちゃんから僕のスマフォにメッセージが飛んできた。


『弟ちゃん、友達をさそってバイトをしてみない?』


『どんな内容のバイトなの?』


 質問を出すと、すぐに返事がきた。


『整形のユーザーインターフェースのレビューをするお仕事かな。実際に使ってみて、色々と意見が聞きたいのよ』


『ユーザーインターフェースって、どんな感じなの?』


『時間があまり無いから、今回はゲームからの完全移植ね。パラメーターをイジると容姿が変る感じなんだけど。もちろん、実際に整形を実行するわけじゃなくて、整形後のイメージを作り出すだけなんだけど、興味はあるかな?』



 僕はスマフォのメッセージを、みんなに見せながら聞く。


「こんなバイトのお誘いが来たんだけど、みんなはやってみる?」


「おう」「興味はあるぜ!」「もちろん」「やってみたいに決まってるじゃない!」


「じゃあ、全員参加で返事をしておくね」


 こうして、僕らはレビューのバイトを引き受けた。ゲームのキャラクター作成でも、色々と種類がある。はたして、どんなシステムになっているのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 元に戻せても怖いなぁ。 元々超美人枠の2人が特に問題ないしって言うとこリアルですなぁ。
[良い点] これかなりいいけど 実際からだいじるとバランス悪くなるだろうし たった3キロ体重落ちるだけでも色々と変わるから どう動くかも確認しないとあれね [気になる点] おっぱいを減らす… まあリア…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ