第39回目の改善政策 1
学校の昼休みに、教室のテレビから、いつもの番組が流れてくる。
「第39回目の改善政策の発表です。今週もよろしくお願いします」
「ヨロシクネー」
福竹アナウンサーと宇宙人が挨拶をして、今週の改善政策が始まった。
「さて、今週は何を行なうのですか?」
福竹アナウンサーが話を振ると、宇宙人は不機嫌や様子で答える。
「こんなクレームがワレワレに来たネ」
そう言ってテロップを出した。そこには『容姿差別の撤廃』と書かれていた。
宇宙人が話しを続ける。
「企業の採用面接に落ちた人カラ、クレームが来たのネ。『私が落ちて、隣の女子が受かったのは、能力ではなく、顔の点数が低かったからだ!』というクレームがネ。そこで、ハッキングをして、面接試験の点数を調べたら、その通りだったのヨ」
「あー、顔採用ってヤツですか…… まあ、業界によっては、そういった事もあるでしょうね」
福竹アナウンサーが、苦笑いをしながら答えた。
ちなみに、ハッキングに関しては違法行為だと思うが、福竹アナウンサーは華麗にスルーをした。あまり細かい事を指摘していると、番組が進まないからだろう。
「『顔採用』って、顔の好みで採用を決める越権行為だよネ? どんな業界でやってるノ?」
宇宙人の質問に、福竹アナウンサーが丁寧に答える。
「販売員や接客業など、人と人が触れあうような業界では、顔が良い方が受けが良いでしょうね。おそらく、販売額などに繋がると思います。まあ、私の居るテレビ業界も、なかなか酷いと思いますよ……」
女子アナはテレビに映るので、容姿を重要視する理由は解る。おそらく、視聴率とかにも直結するのだろう。
宇宙人が福竹アナウンサーに問いかける。
「『顔採用』は撤廃した方がイイよネ?」
「できれば撤廃した方が良いと思いますが…… 色々と難しいんじゃないでしょうか。業界によっては、不可能に近いかもしれません」
「ドウシテ? こうすれば簡単だヨ?」
そう言いながら宇宙人の出したテロップには『顔の統一』という言葉が書かれていた。
愕然とした顔で、福竹アナウンサーが宇宙人に問い詰める。
「『顔の統一』って……、もしかして、全人類を同じ顔にするんですか?」
「ソウネ。顔が同じなら、『顔採用』や『容姿差別』が起こらないでショ」
「た、確かにそれなら差別は起こらないかもしれませんが、色々と困ります。他人の区別もつかなくなりますし……」
「同じ顔では困るのカネ?」
「ええ、全人類が大混乱になると思います。」
宇宙人が、少し残念そうな顔で言う。
「秘書からも同じ理由で反対されてネ。仕方が無いので、こっちのアイデアを実行するヨ」
そう言って、宇宙人はさらにテロップを出す。そこには『キャラクター・エディット機能の導入』と書いてあった。
意味の分らない言葉に、福竹アナウンサーが質問をする。
「何ですか? 『キャラクター・エディット』って? 意味が分りません?」
「『キャラクター・エディット』って言葉は、聞いた事は無いカネ?」
「ゲームでなら知っていますよ。操作するキャラクターの外見をいじりまわして、自分好みの容姿に変える機能ですよね? あっ、もしかすると……」
「ソウネ。人間の外見を、自由にイジれるようにするヨ」
宇宙人がとんでもない事を言い出した。




