人工知能の黎明期 3
キングが、『自分で育てるAI』という、人工知能の育成アプリを見つけてきた。
「PCだけでなく、スマフォにも対応してるみたいだな。入れてみるか?」
「うん」「そうね」「試してみましょう」
僕とミサキとジミ子が飛びついた。少し遅れて、ヤン太もインストールしてみる。
インストールが終り、キングが操作をしながら説明をする。
「ええと『AIのキャラクターを決めて下さい』か。デフォルトは、ヴォーカロイドの『祝音ニク』になってるな。既存のキャラ以外では、自分の写真からも、キャラクターが作れるみたいだぜ」
「どんなキャラクターが出来あがるのかしら?」
そう言いながら、ミサキが自撮りをする。
写真を撮ると『構成中』の表示が出て、1分くらいでキャラクターが出来上がった。3等身くらいの、ミサキをちっちゃくしたような、かわいらしいキャラクターが作り出される。
「良いじゃない。ええと『名前を付けて下さい』ですって、じゃあ『ミサ子』と。次は『AIのキャラクターの関係を決めて下さい』だって。『親と子』『姉妹』『師匠と弟子』とか、いろいろな関係の選択肢が出てきたわね。とりあえず『姉妹』にしておこうかしら」
ミサキがあっという間にAIの設定を終えた。これから長く育てていくのだから、もう少し、丁寧に決めた方が良いと思うのだけれど……
ジミ子も自撮りをして、キャラクターを作る。ヤン太も同じく、独自のキャラを作った。僕は既存の『祝音ニク』のまま行くか、自分の分身を作るか悩んでいると、ミサキにスマフォ取られた。
「写真なら任せて。私がかわいく撮ってあげるわ」
「あっ、いや、僕は別に『祝音ニク』のままでも……」
そう言いかけると、パシャッと写真を撮られて、『ツカ子』という名前をつけられてしまった。
それにしても『ツカ子』って…… もうちょっとマシな名前は思いつかなかったのだろうか。
全員が作り終わった後、最後にキングがAIのキャラクターを作る。
「俺は『祝音ニク』のままでいいや。やっぱり画面には美少女が映っていた方が、何かと楽しいだろうし」
「はぁ? 鏡とか見たことないの?」
ジミ子がもの凄い形相で、キングをにらみつける。
「ん? 何が楽しくて、自分の顔なんか見なきゃならないんだ?」
キングがさも当然のように言った。やはりキングは自分の美しさを、自覚していないらしい。
まあ、ジミ子もメガネを取れば、かなり良いと思うので、無自覚という意味では、2人とも同類かもしれない。
「AIのキャラクターを作った後は、どうすれば良いの?」
ミサキがキングに聞くと、キングがマニュアルを読みながら答える。
「あとは、AIと会話していけばいいらしい。会話から、色々と学んでいくそうだ」
「スマフォに向って喋ればいいのね? ハロー、ミサ子ちゃん、かわいいわね。今日、学校で英語の小テストがあってさ……」
みんなそれぞれのAIに向って喋り始めた。
さっそく僕も、自分のAIに向って喋ってみる。
「…………」
いざ喋ろうとすると、AIに向って、何を喋っていいのか分からない……
「えーと、今日は良い天気ですね」
「ワタシは、コンピューターの中に居るノデ、『天気』という概念が分かりまセン。『天気』を教えて下サイ」
「えっと、天気とは、『晴れ』や『曇り』や『雨』の場合があって、『晴れ』だと空が澄み渡っていて、『曇り』だと、太陽の光が遮られて、『雨』だと、空から水が落ちてくる感じかな。今日の天気は、晴れ時々、曇りで……」
「『時々』とは、どれほどの割合デスか? あまり多くない確立デスよね?」
「ええと、たしか、気象庁のサイトに詳しく載っていたな……」
僕がウェブサイトで調べようとした時だ、AIから、こんな答えが返ってきた。
「気象庁のサイトを調べました。『時々』は予報期間の半分未満。『一時』は4分の1未満の場合ですネ。ちなみに、雲の割合が、1割未満は『快晴』、2割から8割の時は『晴れ』、9割以上の場合が『曇り』。これで間違いないでショウか?」
「あっ、ちょっと待って、調べてみるよ」
僕がWebサイトで調べると、その通りの答えが載っていた。
「うん、それで間違いないみたい」
AIの出した答えから、かなり時間が経ったあとに僕が返事をする。
コンピューターなので、調べるといった作業は得意らしい。今は何も知らない状態だけれど、このままどんどん学習させていけば、とんでもないAIが出来上がるのかもしれない。




