表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

537/567

管轄外地域 9

 宇宙人の監視外のテレビ番組を見た、翌日の放課後。僕らはいつものメェクドナルドゥに来ていた。

 話題の中心は、もちろん例のテレビ番組だ。ミサキが投球フォームを真似しながら言う。


「170キロの球を投げられるなんて凄いわね。さっきネットを調べたら、250キロを投げられるようにも肉体改造できるみたいなのよ、私も試してみようかな」


 それを聞いたキングが、スマフォを見せながら聞く。


「250キロを投げれるようにするには、こんな改造が必要なんだが、それでもやるのか?」


 キングのスマフォには、右腕だけ地面近くまでダラリと伸びた、ケプコンのバオイハザードのクリーチャーみたいな完成図が載っていた。どうやら時速250キロを出すには、ここまでバケモノにならないといけないらしい。


「ああ、うん、これはちょっとね…… でも、250キロを投げられるようになるんだったら……」


 ミサキは一度は否定したものの、少し名残惜(なごりお)しそうにしていた。

 ミサキはボールを投げる為だけに、あんな姿になっても構わないというのだろうか……



 ジミ子がクリーチャーみたいな完成図を見ながら、ボソッと言う。


「でも、250キロのボールを投げられるようになれば、野球でボロもうけできるんじゃない? そう考えれば、人間を辞めるのも悪くないわね」


 すると、ヤン太がこう言った。


「それが、そう上手く行かないらしいぜ。肉体改造で、限界を簡単に超えられるようになると、スポーツ業界が困るから、規制するっていう流れらしい」


 それを聞いて、僕もスマフォで調べてみると、そんな内容のニュースが載っていた。それも野球だけでなく、サッカー、テニス、陸上、水泳、ありとあらゆる種目で規制がされるらしい。



「せっかく改造しても、それを生かせる場所がないんじゃ、意味が無いかもね」


 僕が感想を言うと、ミサキも同意する。


「そうね。250キロを投げられるようになっても、試合に出られないとね」


 ミサキは公式試合で見たいようだが、ヤン太がこの意見に反論してきた。


「でも、出場できるとなると、それも問題になるだろ? それまで地道に頑張ってきた選手からすると、改造手術であっさり限界を超えられてきたら、たまったもんじゃない。ドーピングと同じで、規制は必要だと思うぜ」


「まあ、そう言われるとその通りだね」


 僕はヤン太に同意する、確かに何らかの規制は無いと困る。



「あの博士も(もうけ)け損なったわね。試合に出られないんじゃあ、肉体改造をする選手はいないでしょう」


 ジミ子がそう言うと、キングがスマフォを調べながら言う。


「改造するヤツは少なくなったと思うが、居なくなるわけじゃなさそうだ。コレを見てくれよ」


 そう言ってスマフォを見せてくれる。そこには『スーパーマン・リーグ設立のため、クラウドファンディングの出資を募集!』という文字が書いてあった。



「『スーパーマン・リーグ』って何?」


 ミサキが尋ねると、キングが答えてくれる。


「英語で『スーパーマン』と言うと、とあるヒーローと、もう1つ『超人』って意味があるんだ。この場合は後者の意味で、日本語に直すと『超人リーグ』って感じだな。このリーグは、細かい規定が廃止されて、なんでもありのリーグになるらしい」


「何でもありって、例えばどんなモノがOKなの?」


 僕が聞くと、こんな例をあげてくれる。


「例えば、日本の野球やメヅャーリーグだと、バットに対して細かい規定がある。長さや太さの限界が決まっているんだが、それが無くなる。極端な例だと、スーパーマン・リーグでは丸太を振ってもOKになるらしい。ドーピングに関しても規定が無く、もちろん肉体改造をした選手も出場可能だ」



 ジミ子があきれながら言う。


「本当に何でもありなのね。それで、肝心(かんじん)のお金は集まっているの?」


「そこそこ集まってるな。少なくとも、最低ラインのお金は集まっている。まずは4チームで、年間20試合くらいの開催を目指すみたいだ」


 詳しい話を聞いて、ヤン太がちょっとその気になった。


「面白そうだな。クラウドファンディングなら、小額の寄付も受けつけているだろ? 少し寄付しようかな」


 実際に寄付をすると聞いて、キングがさらに詳しく調べる。



「おっ、それならこの特典付きの寄付がいいかな。5ドル払うと、専用の動画サイトが一年の間、見放題。『スーパーマン・リーグ』の全ての試合をいつでもチェックできるみたいだぜ」


「5ドルだと、だいたい600円くらいか。そのくらいだったら寄付してみるか」


 ヤン太が寄付をすると、他の人もつられる。


「私も見てみたいから寄付をするわ」


「僕もやってみようかな」


「俺も寄付してみるか」


 ミサキ、僕、キングが続いて寄付をした。


「私は、30ドルの、グッズ付きのコースを申し込むわ。きっとグッズにプレミア価格がつくわよ!」


 ジミ子は別の目的で寄付をした。



 数日後にチェックしてみると、クラウドファンディングは、目標額の3倍が集まったようだ。こうして、来年からの『スーパーマン・リーグ』の開催が決まる。どんな試合が見られるのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >丸太を振ってもOK ハランデイイ……と言いたいけどFLASHが終了してもうプリーグは開催することはないんだなって……(一時代の終わり) [一言] 現実のドーピングは寿命が縮まるというか体…
[良い点] こういうのは見た目だけはいいけど 中身別物つてパターンでなく強いからには肉体もの見た目もそれなりの変化しないとねなのかいいですね まあ250投げられたら手も変形するだろうし それうつための…
[一言] 現実じゃトランスジェンダーいって男が女の試合に出て大暴れとかあるし、フィクションの方が良心的ですねぇ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ