管轄外地域 1
放課後、ハンバーガーチェーンのメェクドナルドゥで何気ない会話をしていると、ジミ子がこんな話題を出す。
「そうそう、今晩、少し気になる番組がやるのよ」
「どんな番組?」
ミサキが聞くと、ジミ子はこんな質問を返す。
「1ヶ月くらい前かな、宇宙人の監視対象から外れた街を知ってる?」
「知らないけど?」
ミサキがそう答えると、ヤン太があきれながら言う。
「少し前に話題になっただろ、ニュースとか見ていないのか?」
「うん、全くみてないわね」
ミサキが開き直った。まあ、ミサキだとニュースをチェックしていないか……
キングがスマフォの画面を見せながら、ミサキに説明をする。
「俺たちは常に宇宙人に監視されているだろ? それが、およそ一ヶ月前に、その監視から外れた街があるんだ。たしか『監視対象になって、常に見張られているのは精神的に苦痛で、もうこれ以上は耐えられない』みたいな訴えをしていたな」
「へえ、それで、その訴えが通って、監視されない街が出来たのね」
「ああ、正式には『管轄外地域』って言うらしいけどな。宇宙人は監視しないし、手を出さない地域らしいぜ」
キングの説明が終り、ジミ子が再びテレビの話題に戻す。
「その『管轄外地域』の特集が、今日の夜に放送されるみたいなの、気にならない?」
「気になるわね。何時からやるの?」
「夜の9時から、テレビ都京でやるわ」
「分った。みんなも見るんでしょう?」
ミサキが僕らに話を振ってきた。もちろん僕らは見る気でいる。
「ああ」「見るぜ」「もちろん」
ミサキが番組の予想をする。
「『管轄外地域』ってどんな所かしら? 監視がないから、みんなのびのびとしていそう」
「意外と普通だと思うよ。宇宙人の居ない時代に戻っただけでしょう」
僕の想像を言うと、キングが正しい情報をネットで調べてきた。
「毎週、宇宙人が行なっている改善政策は、『管轄外地域』でも、自治体の責任で適用しなきゃいけないみたいだな。宇宙人の影響はあるらしい」
「でも、監視さえなければ、適用をサボってもバレないんじゃないかしら?」
ミサキが核心を突く発言をすると、ヤン太が感心をしながら答える。
「まあ、その通りかもしれないな。政策を全く適用しない訳にはいかないから、ほどほどにやってるかもしれない」
宇宙人は、時々、とんでもない提案をしてきて、大混乱をする。
自治体がある程度の調整ができるのは大きい。なかなか住みやすそうな街だ。
この後、この街について意見を交わすのだが、実態がよく分らないので話が弾まなかった。
みんなでテレビを見ようと約束をして、この日は別れた。
家に帰ると、夕食を食べ、お風呂に入り、テレビの前で待つ。やがて番組が始まった。
番組のメイン司会は、おなじみの福竹アナウンサーだった。福竹アナウンサーは、警察の防弾チョッキとヘルメットを身につけ、やたらと重武装の格好で、画面に現れる。
「私、カムルフォルニア州のゴッサルシティーにやって来ました。この街は『管轄外地域』に指定され、宇宙人の監視の目が届きません」
そこまで言いかけると、パトカーがサイレンを鳴らしながら横を通り過ぎていった。
うるさいパトカーが居なくなるのを待って、再び福竹アナウンサーがしゃべり始める。
「えー、この街では、いたるところで犯罪が起きています。もちろん犯罪は警察が取り締まるのですが、従来の警察だけですと監視体制が弱いので……」
そこまで言いかけると、再びファンファンファンとパトカーが通りすぎていった。また、しばらく待ってから、福竹アナウンサーが続きを話す。
「監視体制が弱いので、犯罪をしても捕まる確率が低いようです。今、この街に起きている問題を、これから紹介していきたいと思います。では、VTRどうぞ」
そう言いかけると、こんどは消防車のサイレンが聞こえてきた。この街は、とてもにぎやからしい……




