表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

527/567

マッドハンド 4

『スマッシャーブラザーズ』で、ミサキとジミ子のタイマン勝負にもつれこんだ。ゲームの腕でかなわないミサキはジミ子に対して、ちょっとした妨害をしようとする。

 どこだってドアと同じ仕組みの腕輪を使い、腕を切り離した。


 離れた腕は、トコトコと指を足のように使い、歩いてジミ子へと向っていく。



 腕は、ジミ子の場所に来ると、体を()い上がり始めた。


「いま、大事な所なんだから、ちょっかいを出さないでよ」


 ジミ子がヤン太に向けて言う。


「俺は何もしてないぜ、何を言っているんだ?」


 ヤン太はテレビ画面を見ながら答える。みんなゲームに夢中で、この事態に気がついていない。



「ああ、もうしつこいわね!」


 振りほどこうとして、ジミ子は這い上がってくる手を見てしまう。


「えっ? ぎゃあー!」


 見た瞬間に悲鳴があがった。まあ、あたりまえだろう。こんな光景は、ホラー映画かテレビのドッキリ映像でしか見たことがない。



 悲鳴をあげてコントローラーを放り出すジミ子。ミサキはこのチャンスをのがさない。


「ふふ、今なら一方的に攻撃できるわ。これでも喰らいなさい!」


 左手だけで器用にコントローラーを操り、ジミ子のキャラクターを画面外に押し出そうとした時だ。ジミ子が勢いよく立ち上がったので、体をつかんでいたミサキの腕が離れて、床に落ちた。


「いたっ!」


 思わず声をあげるミサキ。慌てたジミ子は、たまたまミサキの腕を踏んづけた。


「いったぁ!」


 落ちた時はあまり痛そうではなかったが、踏まれるとさすがに痛いようだ。ちょっと涙目になっている。



「なんだ、こりゃ。気持ち悪いな」


 キングが腕を見てドン引きする。


「とりあえず、窓から捨てるか」


 ヤン太がそう言って、腕をガシッとつかんだ。


「待ってぇ~」


 ミサキはつかまれた状況から脱出しようと、腕を激しく動かす。それはまるで意思を持った別の生物だ。動きがとても気持ちが悪い。



 このままでは本当に捨てられそうなので、僕が止めに入った。


「ヤン太、待って。それはミサキの腕なんだ」


「これが? 本当かな?」


 そう言ってヤン太は腕をつねってみる。


「いった。つねらないでよ!」


 ミサキが痛がっているのを確認すると、どうやら納得したみたいだ。


「そうだな。ミサキだったら、こういう事をしでかすな」


「そうね」


「ああ、やりかねないな」


 ジミ子とキングも納得したようだ。まあ、ここら辺は、日ごろのミサキの行動によるものだろう。



 一息つき、とりあえず落ち着いたようなので、僕がみんなに説明をする。


「ミサキの腕についている腕輪は、小型の『どこだってドア』のような装置で、腕輪同士は繋がっているんだ」


 それを聞いたキングが言う。


「じゃあ、断面はどうなっているんだ? もしかして切断面が見えるのか?」


 その質問にはミサキが答える。


「何か、プラスチックの(ふた)が付いてる感じね。そこに製造番号か何かが書いてあったわ」


 一瞬、グロい光景を思い浮かべてしまったが、そうではないらしい。腕輪を見てみると、ミサキの言った通り、灰色の蓋で覆われて、そこにシリアルナンバーのような英数字が振ってあるだけだった。

 僕は少し安心をする。これで切断面が見えていたら、まさにホラーそのものでしかない。



「これ、なかなか便利なのよ。例えばあそこにリモコンがあるじゃない」


 ミサキは遠くにあるテレビのリモコンを指さして言った。続いて説明をする。


「そんな時には、こう、腕を取り外すの」


 腕を取り外すと、腕はトコトコと歩いて行き、リモコンのボタンを指で押すと、ふたたび指で歩いて戻ってきた。


「ね、便利でしょ」



 これを見て、キングが言う。


「それだったら、スマフォのリモコンのアプリか、音声認識で家電が動かせるスマートスピーカーを設置すれば良いだろ」


「テレビのリモコンはそうかもしれないけど、これはもっと便利なのよ。チョット離れたお菓子とか、飲み物とか、何でも持ってこられるんだから。冬だったら、コタツから出ないでなんだって出来るわよ」


 多少は便利になるかもしれないが、少し歩けば済む話でもある。ミサキはそこまでして動きたくないらしい……



「まあ、有効な使い道は後で考えるとして、面白そうだから、僕にも貸してよ」


「いいわよ。はい。ここをこうすれば、腕が外れるようになってるの」


 僕はミサキから腕輪を借りると、装着して、試しに腕をはずしてみる。そして、トコトコと指で歩こうとするのだが、腕だけではバランスよく歩けない。それどころか、ひっくり返って、まともに立つのも難しい。


 この様子をみて、ミサキは僕に言う。


「意外と難しいでしょ。自由に歩けるようになるまで、朝まで掛かったんだから」


 なるほど、ミサキはこの練習をしていて徹夜した訳か。それだけ時間があれば、残っていた宿題を終わらせられた気がするのだが……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 手を捨てられて犬が咥えて持っていったり、大冒険して懲りれば良かったのにw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ