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移動式デパート 4

 3階の若者向け婦人服を見終わると、4階のシニア向け婦人服を通り抜け、5階の元紳士服の売り場へとやってきた。


 元紳士服は、高そうなスーツの店もあれば、見慣れたカジュアルな服の店もある。僕らは、とうぜん、カジュアルな感じの店へと行く。

 ワニのマークの『ラスコテ』、ポロシャツで有名な『ボロ』、名前だけは聞いたことのある『ラルフレーロン』などが並んでいた。



「まあ、これくらいなら、俺らでも買えるか」


 ヤン太は、そこら辺に飾っていたポロシャツを手に取って言う。


「そうだね、そのレベルなら大丈夫かも。値段はいくらするの?」


 僕が聞くと、ヤン太は値札を見て、そっと服を元に戻す。


「19,800円だった。俺たちには買えないな……」


 なんの変哲(へんてつ)のないポロシャツが、19,800円…… やはりデパートは僕らには高すぎる。



 服を買うのをあきらめかけていると、姉ちゃんがタブレットで何かをしらべ始める。


「ちゃんと安いメーカーもあるから。ほら、ここら辺とか安いわよ」


 そう言って連れてこられたのは、『ナイチ』『アディダヌ』『プーア』など、スポーツメーカーのコーナーだった。


 キングが値段を確認しながら言う。


「おっ、このジャージ。上下で6千円しないぜ!」


「こっちのスニーカーは5千円だ!」


 ヤン太も掘り出し物を見つけた。それを聞いて、僕も値札を確認する。


「このパーカーは7千円だよ。これなら僕らでも買える」


 喜んでいると、ジミ子に突っ込まれた。


「おちついて、そのパーカーは『ファッションセンターしまぬら』だったら、2千円くらいで買えるから」


「あっ、うん。そうだね」


 僕らは手に取った商品を戻して、紳士服コーナーを離れる事にした。他に何も買う物がなかったら、再びこの場所に戻ってくれば良いだろう。


 僕らはフロアを上がり6階に進む。



「6階は家電と家具と日用品のコーナーね。家電や家具とかは無理だけど、日用品なら買えると思うわ」


 姉ちゃんの後について、僕らは日常品のコーナーへと移動をした。

 日常品は、洗剤などの消耗品、小物のインテリア、食器、などが置かれているようだ。


 ミサキが、いつも使っているおなじみの洗剤を手に取った。


「よかった。洗剤は普通の値段なのね」


 それを聞いて、姉ちゃんはある棚を指さして言う。


「まあ、洗剤はそんなに変らないわ。ここで値段が変るのは、シャンプーくらいかしら」


 シャンプーの棚を見てみると、いつも使って居るシャンプーの他に、見たこともないような高そうなシャンプーが並んで居た。



 ジミ子が棚を見ながらつぶやく。


「ええと、このコーナーは『ノンシリコンシャンプー』ですって。値段は800円から1500円くらいが多いわね。買えないわけじゃないけれど、シャンプーにこの値段を出すのはちょっとね……」


 それを聞いて、ミサキが反論をする。


「でも、一度くらいは高いシャンプー使ってみたくない? どれだけ違うのか試してみたいわ。コレとかどう?」


 ミサキは、化粧箱(けしょうばこ)に収まった、一番高そうなシャンプを手に取った。


「それ、いくらするの?」


 僕が聞くと、ミサキはこわばった表情で答える。


「な、7400円ですって。ま、まあ、買えない事はないわね……」


 そう言って商品を棚に戻した。やはりデパートは高い物が多すぎる。



 僕らは日常品コーナーから、食器コーナーへと移る。

 食器は、もちろん高い物もあるのだが、皿やコップなどは500円くらいから揃っていて、これなら僕らでも買えそうだ。


 一通り眺めた後で、家具コーナーを横切ろうとすると、キングが声をあげた。何かを見つけたらしい。


「おっ、ゲームの『艦隊コレクター』のポスターがある」


 僕がキングに聞いてみる。


「そう言えば四越デパートでグッズ販売するとかニュースがあったね。見て行く?」


「見ていこうぜ! ゲームのグッズだったら買えるだろう」


 僕らはデパートには似つかわしくない、ゲームのグッズコーナーへと立ち寄る。



『艦隊コレクター』とは、昔の戦艦を少女に擬人化したゲームだ。一時期は一世(いっせい)風靡(ふうび)するほど流行(はや)った。


 ヤン太が、小さな座卓(ざたく)を指さして言う。


「ゲームのロゴが入った、ちゃぶ台が売られているな」


 ゲームのポスターなどのグッズが売られている中で、目に付くのはこれだろう。ロゴが入って居るものの、普通のちゃぶ台がこの空間にあると違和感がすごい。


 ちゃぶ台を見て、キングがその気になる。


「俺、このちゃぶ台を買おうかな。ゲッ、8万円もする!」


 その値段を聞いて、僕は安そうなものを薦める。


「じゃあ、このボールペンはどう? あれ? ボールペンじゃなくて、万年筆だった。値段は3万8千円……」


 姉ちゃんが、万年筆のメーカーを確認して言った。


「あら、そのメーカーだと妥当(だとう)な値段ね。物によっては10万を超えるような商品もあるわよ」


「あっ、うん。そうなんだ……」


 僕はとりあえず返事をする。まあ、たぶん良い品なんだろう。僕らには高すぎて使えないけど……



 このフロアをザッと見終わると、次の階に移る。僕たちに何か買える物はあるのだろうか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 昨今の困窮している現代人には厳しい世界。 そりゃデパート潰れますわ。
[良い点] まあ、そうなるな しかもリアルで売れているし… [気になる点] シャンプーとかも値段相当の価値があるのは 最近知ったけど 庶民には手を出せないね
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