増量したメェクドナルドゥ
放課後、ハンバーガーチェーンのメェクドナルドゥに向う。
歩きながら、僕はヤン太に、この間の話を聞く。
「家のリフォームの予定とか決まった?」
「いや、ぜんぜん決まらない。お袋がさ、『100年使うんだったら、しっかりしたキッチンを選ばないと』って、ありとあらゆる資料を取り寄せて、悩んでいるよ」
「モデルルームに行って、実物を見れば、意外とあっさり決まるんじゃないの?」
僕がそう言うと。ヤン太はちょっとあきれながら答えた。
「実は、お袋は、もうモデルルームを見て回ってるらしいんだけど、選択肢が絞られるどころか、増える一方らしい。いつになったら決まるんだろうな……」
キッチンの種類はただでさえ多い。そこに組み合わせが加わってくるとなると…… これは時間が掛かりそうだ。
そんな話をしていると、ミサキが変な事を言い出した。
「あっ、メェクドナルドゥが増えてる」
「増えてるってどういう事? 何が増えてるの?」
そう言いながら店を見てみる。すると、ミサキの言っている意味が分った。
いつも行っているメェクドナルドゥは2階建ての建物なのだが、3階建てになっていた。
3階の部分は、宇宙人の開発したコンテナだろう。従来の建物の上に、不釣り合いな形で乗っかっている。
ヤン太が素直な感想を言う。
「あれ、大丈夫なのか? バランスが悪いんだが……」
「宇宙人の技術を使ってるから、大丈夫なんじゃないか? 普通に見ると、明らかに建築法に違反してるけどな。あの階段を見てみろよ」
キングが階段を指さして言う。
今まで二階建ての建物を、無理やり3階建てにしたので、建物の外側を這うように、無理やり階段が取り付けられていた。ちなみにエレベーターも追加したらしい。こちらも、外壁にへばりつく様についている。
これを見て、ジミ子が疑問に思ったらしい。
「増築するのは構わないけど、おかしいわね」
「何がおかしいの?」
ミサキが聞くと、ジミ子は真剣に答えた。
「だって、あの店。増築するほどお客さんが来てないじゃない。いつも店はガラガラでしょ?」
「……そうね、その通りだわ。なんで増築したのかしら?」
ミサキが大きく頷く。
まあ、確かにジミ子の言うとおりだ。あの店は常に空いていて、席を増やす必要はないハズだ。
不思議に思いながら、店の前まで来ると、店長たチラシを配っていた。
店長は、僕らを見て、近寄ってくる。
「いやぁ君たち、どうだいうちの店の改装は? エレベーターも付いて、立派になっただろう?」
「客席を増やしたのですか?」
僕が聞くと、店長はチラシを渡しながら説明してくれた。
「客席といえば客席だけど、ただのテーブル席じゃないよ。客室のレンタルを始めたんだ」
チラシを見ると、こんな事が書いてある。
『飲み物とハンバーガーを頼んだ人は、追加で100円を払えば3時間の間、専用のレンタルルームを借りられます』
『ひとり部屋、4人部屋、6人部屋、パーティー部屋、さまざまな広さを取りそろえています』
『レンタルルームの3時間の間、飲み物のお代わりは自由!』
この宣伝文句を見て、僕は思わず、こんな事を聞いてしまう。
「これ、安すぎません? 元は取れるんですか?」
すると、店長は明るい表情で答える。
「大丈夫だよ。100年ローンで増築したから、部屋の費用はかなり安い。これでお客さんが増えれば、それで元は十分に取れるよ。君たちは試してみるかい?」
「「「試します!」」」
全員が迷わず返事をする。100円で個室が借りられて、しかも飲み物のお代わりが自由となれば、誰だって利用するだろう。
店長に誘導されて、店の中に入るのだが、注文する前に、こんな注意点を言われた。
「そうそう。お代わりなんだけど、ドリンクバーみたいに自由に出来るって訳じゃないんだ。例えば、『アイスコーヒー』を注文すると、『アイスコーヒー』のお代わりは幾らでも出来るけど、それ意外の飲み物は飲めない。そんなシステムなんだけど、構わないかな?」
「ええ」「ぜんぜん大丈夫です」
僕らは即答でOKをする。100円でお代わりし放題というだけで充分だ。
各自、お気に入りのハンバーガーセットを頼み、追加の100円を払った。
ちなみに、最安値はジミ子の110円のハンバーガーと、100円のコクコーラのセットだ。これに100円を足すだけで、部屋が借りられるなんて安すぎる。
各自、ハンバーガーセット買うと、店長に案内され、エレベーターで3階へと移動をする。
3階につき、エレベータを降りると、一直線の廊下がのびていて、その両脇に部屋が並んで居た。
部屋は、ガラスのドアで、中が見えるようになっていて、カラオケルームのような作りになっている。
ただ、カラオケと違うのは、部屋が暗くない事だろう。部屋には大きな窓も付いていて、非常に明るい作りになっていた。
「ええと、この部屋で良いかな。それではごゆっくり。飲み物をお代わりする時は、空のコップを1階のカウンターまで持ってきて。ロボットがお代わりを入れてくれるよ」
店長はそう言い残すと、去って行った。部屋の大きさは6畳くらいだろうか? あまり大きくはないが、充分にくつろげる広さだ。
キングがスマフォを取り出して言う。
「まあ、Wi-Fiも入るし、ゲームでもしながらゆっくりするか」
すると、ミサキがそれに反論をした。
「何を言ってるの、お代わりが無制限なのよ。すぐに飲みきって、お代わりをしなきゃ損よ!」
そう言って、注文したメェクシェイクを一気に飲み干すと、お代わりをしに部屋を出て行った。
メェクシェイクは非常に飲みにくい。それは、硬いアイスクリームを無理やりストローで吸い込むくらい飲みにくいのだが、ミサキは軽々と飲みきった。これは、さすがとしか言えない。




