建築業の行方 7
学校で昼休みになり、いつものメンバーで食事を取っていると、ヤン太がこんな事を言い出した。
「うちの建て替えの話が出ているんだ。うちは築40年くらいで、そのうち建て替えなきゃならないんだけど、どうせだったら早めに建て替えて、快適な住宅に住もうって話になってさ」
ミサキがご飯を口に含みながら、相づちを入れる。
「へぇ、いいんじゃないの。レオ吉くんの家みたいになるんでしょ?」
「あそこまで上等な家にするかは分らないな。とりあえず、建て替えのカタログみがいなのが欲しいんだけど、ツカサのお姉さんにお願いできないか?」
「良いよ。ちょっとLnieで聞いてみるね」
Lnieでメッセージを打ち込むと、しばらくして返事が返ってきた。
『今日、私は忙しくて無理だけど、カタログと商品の案内人は手配しておくわ。放課後、会社にいらっしゃい』
僕は、そのメッセージをヤン太に見せながら言う。
「だってさ。案内人って、ロボットかな?」
「まあそうなんじゃないか」
ヤン太はなんとなく返事をすると、キングがスマフォで、新しいニュースを見つけて来た。
「プレアデススクリーンの3Dのホログラムで、商品の案内のサービスも開始するみたいだぜ。これかもな」
「それだと、バーチャルで体験とかも出来そうだね」
僕も思い浮かぶ方法をあげる。
色々と話していると、ジミ子が言った。
「とりあえず、放課後になったら行ってみましょう。お姉さんだから、完璧に手配をしてくれているはずだわ」
相変わらずジミ子は姉ちゃんを信用しているようだ。あこがれの眼差しをしながら言う。
こうして、僕らは放課後に、姉ちゃんの会社に行くことになった。
放課後になり、みんなで姉ちゃんの会社に行く。
会社の前に着くと、ロボットが待ち構えていた。
「ヤン太さま御一行、お待ちしておりまシタ。こちらへどうぞ」
そう言って、会社の中へと通された。
会社の中を進み、ロボットはある部屋のドアを開ける。
「お連れしまシタ」
「あっ、はい、待ってました。ヤン太くんが家を建て替えるそうですね」
部屋の中から出てきたのはレオ吉くんだ。今日はレオ吉くんが案内をしてくれるらしい。
「レオ吉くん久しぶり。実はまだ、建て替えを考えている段階で、実際にやるって決まった訳じゃないんだ」
ヤン太が少し申し訳なさそうに言うが、レオ吉くんはあまり気にせず話しを進める。
「無理に建て替えなくても大丈夫ですよ。とりあえずモデルルームの展示会場に、ご案内しますよ」
どこだってドアをくぐり、僕たちは別の場所へと移動した。
移動先は、どこかの田舎の平原だった。山々に囲まれてた中で、盆地のような広い平地が広がる。
周りは何もない場所なのだが、いくつか大きな建物を建てるらしい、ロボット達が土地を整備して、新たに道路を作っているようだ。
「レオ吉くん、ここは?」
僕が聞くと、レオ吉くんはパンフレットを渡しながら、説明してくれる。
「今回、うちの会社と、地方の自治体が協力して、宅地として分譲販売する土地ですね。ここにモデルルームがあるんですよ」
それを聞いて、ジミ子が本音を言う。
「売れるの? こんな場所?」
「安いから売れると思いますよ。一坪3万円。100坪の330平方メートルの土地を買っても、300万円ですからね。ここは空気も良いですし」
それを聞いて、ますますジミ子は心配しながら答える。
「いや、まあ確かに空気は良いかもしれないけど、周りに何もないじゃない。こんな場所で生活できるの?」
その質問に、レオ吉くんはパンフレットを開きながら説明する。
「大丈夫ですよ。買い物は、宇宙人の冷凍技術を使った食品のスーパーを作りますし、病院はロボットが医師を務める診療所を作ります。移動は、居住区の中央に『どこだってドア』を設置して、移動できるようにします。大都会の東京駅や大阪駅にも、5分もあれば移動できますよ」
「……便利ね。それだったら売れると思うわ」
ジミ子も僕らも納得する。それなら普通に生活を送れるだろう。ただ、娯楽に関しては、何もなさそうだけど……
「ちょっと待って下さいね」
レオ吉くんがスマフォを操作すると、すぐに無人運転のタクシーがやってきた。
「この居住区内は、無料のタクシーがいつでも使えるようになります。車に乗って下さい、展示会場にご案内しますよ」
タクシーに乗り込み、僕らは移動を開始した。




