建築業の行方 3
新しい小屋の発表をした翌日。放課後の教室で、この話題を口にする。
「昨日、建築会社の株価が下がっていたよな。このまま下がり続けて、倒産するのかな?」
ヤン太がそう言うと、キングがスマフォでさっそく調べる。
「どれどれ…… うおぅ、今日は株価が上がってるぞ! どの建築メーカーも上がりすぎて、ニュースになってる」
「なんで? 普通は下がるんじゃないの?」
ジミ子が疑問をなげかけると、キングがさらに調べて答える。
「ええと、各社、エイリアンの技術提供を受けて、色々な製品を発表したみたいだ。製品には、本家の100年保証とまではいかないものの、30年保証とか、50年保証がついているらしい。エイリアンのセンスは酷い物が多いから、これらのメーカーにも需要があると思ったんだろう」
僕も自分のスマフォで調べて見ると、こんな情報が見つかる。
「きょうの夕方に、テレビ都京で特番がやるみたい。僕の家でみんなで見る?」
「おう」「そうだな」「見てみたいわね」
こうして僕の家でテレビ番組を見る事となった。
みんな、いったん家に帰り、荷物を置いて私服に着替えてから、僕の家に集まった。
番組が始まるまでの時間に、どんな製品が発表されたのか、ネットで調べてみる。
始めに、ヤン太がこんな商品を見つけた。
「これ、見てみろよ。木造パネルの製品で、これを使って、室内の壁や床、天井を覆うらしい。本物の木で出来ていて、宇宙人のフレームの中を、『木の温もりを味わえる家』に変るんだってよ」
ヤン太がスマフォを差し出して、それをみんなで見る。そこには、木材で覆われた空間が存在している。普通に見ると木造建築と変らないので、なかなか住みやすそうな感じだ。
ジミ子がすかさずチェックを入れる。
「いくら掛かるのかしら? ええと、幅は2.4メートル、長さは12.1メートル、15畳のノーマルサイズで、およそ50万円…… 宇宙人のフレームは別売りで90万円だから、これにすると、合計で140万円になるわ。高すぎない?」
ジミ子がそう言うと、ヤン太が反論する。
「でも、金を掛けないと、あの灰色の金属みたいな空間で、ずっと過ごさなきゃならないんだぜ。このパネルの保証期間は30年。もし、破損しても、そのパネルだけ張り替えればいいみたいだし、そう考えればお得だろ?」
「うん、まあ、そうね。確かに、あの空間はちょっとね……」
守銭奴のジミ子も、出費に納得してしまった。まあ、そのくらい、あの空間のデザインは酷すぎる。
「他に、どんなのがあるのかしら?」
ミサキがヤン太のスマフォで製品を見始めた。
天井、壁、床は、色々な素材があるようだ。白に近い色の木材から、焦げ茶色に近い木材。漆器のような質感の物や、和室に使う砂壁のパネル。変った所だと、布のデニム生地っぽい物や、鏡のパネル、毛の生えた動物の毛皮みたいな変な物まである。
「私、この毛皮が気に入ったわ。これで床と壁と天井を覆って、もふもふとした空間で過ごしたい!」
ミサキが変な事を言い出した。これは、宇宙人よりセンスが酷いかもしれない……
キングが、どこまでも続くカタログのページ見て、あきれながら言う。
「オプションサービスで、色合いの違うパネルを組み合わせて、独自の模様も作れるみたいだな。選択肢が多いのは良いと思うが、これだけあると迷って決められないんじゃないか?」
「まあ、そうだね。同じ様な色合いの木材でも、合板や、プリントしただけの物もあれば、一本の木から切り出した高級品もあるからね。何十年と、この家に住むとなると、選ぶのに、そうとう時間がかかりそうだよ」
そんな話をしていると、またミサキが変な製品を見つけて来た。
「見てコレ。本物の芝生が生える床ですって。天井に太陽光の照明をつければ、いつでも青々とした芝生の上で寝転べるらしいわ。これも良いわね」
確かに、芝生の上は気持ち良いが、それが室内っていうのはどうなんだろうか?
「本物の芝生だと、水とかあげなくちゃいけないんじゃないの? 水で濡れた部屋は嫌だよ」
僕がやんわりと否定すると、ミサキは製品の説明文を、かいつまんで読み上げる。
「うーんと、人口知能を使った自動で水をやる機能がついていて、最低限の水しかやらないらしいから心配ないみたい。いつでも気持ち良い状態の芝生を使えるみたいね」
どうやら無駄な技術が駆使されていたようだ。ただ、別の問題が出てきた。無駄な技術の分、値段が跳ね上がり、畳2畳分で、130万円と、かなりの金額になっている。誰がこんな物をつけるというのだろう。
新製品のページを見ていたら、けっこう時間がすぎていた。あわててテレビをつけると、ちょうど番組は始まる所だった。




