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月面旅行 3

「ワンルームで、6人が入るとなると、ちょっと狭いと思いますが入って下さい」


 僕たちはレオ吉くんの家の中に入る。

 部屋に入ると、そこは確かにワンルームの部屋だが、やたらと広かった。

 20畳を超えそうな大きな部屋に、ベッドとタンスが二つ、他にはテーブルと本棚くらいで、家具があまりない。とにかく見通しが良いので、更に広く感じる。家電もテレビと冷蔵庫くらいで、最低限しか置いてなさそうだ。


「広いな。何畳くらいあるんだ?」


 ヤン太がレオ吉に聞くと、こんな答えが返ってくる。


「確か22畳くらいですかね。動物ノ王国だと、これが標準的な一人暮らし用の広さです」


 広さも凄いが、とにかく部屋が片づいている。その様子はマンションのモデルルームか、ホテルの一室のような印象だ。いくつもある大きな窓からは、絵画(かいが)のような庭の風景が見えている。



「折りたたみの椅子を持ってきますが、とりあえずベッドにでも腰掛けて下さい」


「ふわぁ~、このベッド、すごい寝心地が良いわ」


 レオ吉くんがそういうと、次の瞬間にはミサキがベッドにダイブして、あおむけになりながら言った。腰掛けるどころか、寝てしまいそうな勢いだ。



 ジミ子は部屋の様子を見ながら、感心しながら言う。


「しかし良く片付いてるわね。レオ吉は綺麗好きなのかしら?」


「ゲームのグラフィックでもここまで片付いている部屋は少ないぜ。もしかして、俺たちが来るから片付けたのかな?」


 キングがそんな事を言っていると、レオ吉が椅子を持ってきながら僕たちに言う。


「いえ、ボクは掃除とかあまりしませんよ。ロボットが週2~3回、掃除してくれるんでが、その時に散らかっていると、勝手に片付けてくれるんです」



「すごいサービスね。いくらくらい掛かるの?」


 ジミ子が金の話をすると、レオ吉が答える。


「無料ですよ。国民なら無料で受けられるサービスです」


「……うらやましい限りね、地球でそのサービスを受けるとしたら、いくら掛かるか分らないわ」


「確かに地球だとそうなんですが、このサービスは、この国の国民には必須なんですよ。元は動物なので、片付ける習慣の無い方が、とにかく多くて……」


「……まあ、それなら仕方ないわね」


 レオ吉くんの話を聞いて、ジミ子が納得をする。確かに言われてみれば、片付ける習慣のある動物の方が少なそうだ。



 僕が、ちょっと気になった事を聞いてみる。


「掃除はサービスって言っていたけど、他にも無料サービスがあったりするの?」


「ええ、洗濯とかも無料ですね。この家には洗濯機が無いんですよ」


 するとヤン太が茶化すように言う。


「洗濯機がないって、洗濯はどうするんだよ。ロボットが手洗いでもするのか?」


 僕は洗濯板で丁寧(ていねい)に洗濯するロボットを思い浮かべてしまった。ただ、真実は違ったようだ。レオ吉くんが詳しく説明してくれる。


「玄関にあるランドリーボックスに衣服を入れておくと、定期的にロボットが回収してくれます。クリーニングの施設に持っていって、後日、綺麗になった服が届けられる形ですね」


「ホテル暮らしみたいだね」


 僕がそう言うと、レオ吉くんはちょっと考えてから返事をする。


「そうかもしれませんね。ボクも家事は、興味のある料理しかしていませんから」



 そんな話をしていると、ミサキがベッドからガバッと起き上がった。


「これは……、カレーよ、カレーの匂いがする!」


 ミサキの発言に、レオ吉がちょっと驚いた様子で答える。


「そうです。今、完全密閉型の電子圧力鍋でカレーを作っているんですが、よく匂いで分りましたね?」


「私の嗅覚を舐めないで! うーんと、これは2つあるわね。チキンカレーと、あとマトンのカレーでしょう?」


「……正解です。少し早いですけど、お昼にしますか?」


「食べましょう!」


 こうして、僕たちは少し早めの昼食となった。どうやら食べ物に関してはレオ吉くんよりミサキの嗅覚が勝るらしい。



「まだテーブルが外にあるので、外で食事を取りますか?」


 レオ吉が僕たちに聞くと、ジミ子が嫌な顔をする。


「お茶は外でもよかったけど、食事だと、虫とか寄ってくるんじゃないの?」


「虫なら大丈夫ですよ。心配はいりません」


 自信満々のレオ吉くんの態度に、僕は、ある理由を思いついた。


「わかった。虫を退治する装置の『バグバスター』があるんでしょう?」


「いいえ違います。月面には虫が一匹も居ないんですよ。だから心配する必要はありません」


 サラッとレオ吉が、すごい事を言う。



「本当なの? 虫が一匹も居ないなんて……」


 驚くジミ子に、レオ吉くんが理由を説明する。


「虫がいると、農作物とかけっこう被害を受けるじゃないですか。それなので月面に虫を持ち込まない事にしたんです。ちなみに農業が主産業の火星にも虫は居ないみたいです」


「……うらやましいわね。それなら外で食べましょうか」


 ジミ子が納得したようなので、僕たちは外でご飯を食べる事にした。



 お皿にご飯をよそい、カレーをかける。

 カレーは、辛さを抑えたバターチキンカレーと、本格的なインド風のマトンカレーだった。


 料理を外のテーブルに運び、全員がそろってから、僕たちは食事をする。

 緑豊かな森の中で食べるカレー。ただでさえ美味しいカレーが、この環境で更においしく感じる。ミサキは予想以上に食べすぎて、ごはんが足りなくなり、レオ吉は慌ててをレトルトのごはんを温めて間に合わせていた。



 食事を取りながら、これからの予定を話し合った。

 とりあえず、午後は月面の観光スポットを回るという話になったが、レオ吉くんはあまり乗り気ではなさそうだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 理想郷ね しかし虫がいないとなると植物の受粉とか はちみつ作るとかそういう虫使う作業気になりますね [気になる点] ミサキさんはもうミサキっていう新種族ね [一言] 観光ね まあ価値観ち…
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