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ロボット上司 1

 遊んでいるときに姉ちゃんからメッセージが飛んできた。


「今晩、放送される『ガロアの夜明け』に私が出るの、良ければお友達に宣伝をしておいてね」


『ガロアの夜明け』とは、テレビ都京(ときょう)がやっているビジネス番組だ。毎回、ちょっと変った会社や商売を紹介しているが、今晩は姉ちゃんの会社の特集をするらしい。

 姉ちゃんに返事を書き、みんなに事を伝える。姉ちゃんが出てくるという事は、おそらく宇宙人が絡んでくるはずだ。どんな内容が放送されるのだろうか。



 晩ご飯を食べ終えて、自分の部屋に行き、テレビをつける。すると、しばらくして『ガロアの夜明け』が始まった。

 薄暗く、あまり広くないスタジオのど真ん中に、大きなテーブルが置いてあり、そこに姉ちゃんと司会の人が対面形式で座っている。


 司会の人が姉ちゃんに質問をする。


「今度、新しく子会社を作ったようですね。ロボットが社員の会社みたいですが、今までの会社とどこがちがうんですか?」


「今までの会社は、ロボットを労働者として派遣していました。バイトや派遣社員という形ですね。今回、新しく作った会社は、ロボットが経営者や管理職を務めております。ロボットが経営や人事を行い、人間がその下で働く会社ですね」


「ロボットが上司になる訳ですか。それだと人間側から不当(ふとう)だと、反発が起こりませんか?」


「話を持ちかけた時は嫌な顔をされましたが、導入してみると反発は起きていないですね。上手く会社が回っています、良い方向に変ったと思いますよ」


「そうですか、では、どのように変ったのか、VTRを見てみましょう」


 そう言うと、VTRの映像に切り替わった。



 VTRに映ったのは、どこか田舎のホームセンターみたいなお店だった。

 ナレーションが説明を開始する。


「ここは田舎にある中規模のホームセンタ。素人が日曜大工で使う工具はもちろん、職人さんが建築資材を買い付けたり、農家さんが肥料や農薬を仕入れたりと、地域の中心となっているお店です」


 店の中をカメラが動いて行くと、取り扱っている物がよく分る。

 建築資材や農機具などのプロが使う物から、洗剤やシャンプーといった日用品も置いてあるようだ。



 テレビスタッフの1人が、働いている従業員に声を掛けて、インタビューをする。


「今回、経営陣、管理職がロボットに変りましたが、どうなりましたか?」


「変る前は、正直に言ってどうなるかと思っていましたが、今となっては変った後の方が、(はる)かに良かったですね」


「どこら辺が良くなりました?」


「商品管理、在庫数の管理などが完璧になりました。人間が管理をしていた時は、しょっちゅう在庫切れなどをして、お客様に迷惑が掛かっていましたが、今だとほとんどありません」


「そうですか、でも経営陣がロボットに変る前も、ロボットを店員として雇っていましたよね? ロボットなら在庫管理は得意だと思います。かなり高いレベルで管理が出来ていたと思いますが、経営陣、管理職の入れ替えだけで、そんなにも変るものですか?」


劇的(げきてき)に変りましたよ。ロボットがバイト扱いだった頃は、在庫が切れそうになると、必ず報告をしてくれていました。ですが、管理職が人間だった為に、発注を忘れたり、まだ大丈夫だろうと後回しにして、かなりの頻度で在庫切れを起こしていました。それが今だと全く起こりません」


 ここでナレーションが入る。


「このホームセンターで扱う品目は、およそ14,000品目にのぼります。これを漏れなく管理するのは至難(しなん)の業で、管理ミスがあってもしょうがないでしょう。それに他の問題もあるようです」



音声はナレーションから、再びTVスタッフのインタビューに戻る。


「他に何か変りました?」


「ええ、人事評価(じんじひょうか)が大きく変りましたね。今までは仕事があまり出来なくても、店長にお世辞を言っている人が評価され、地道にコツコツと働いている人は、あまり評価されませんでした。ロボットによる人事管理は完璧で、仕事に真面目に取り組んでいる人、能力の高い人が高い評価をもらえます」


「そうですか、これからは口の上手いだけの人は、評価されない訳ですね」


「そうですね。ロボットにお世辞を言っても、評価には全く関係ありませんからね。今まで評価されなかった人達がちゃんと評価され、モチベーションが大きく上がっています。逆に口先だけで評価を得ていた人達は降格されて、何人かは辞めていきました」


 そう言って、店員さんは苦笑いを浮かべる。そして再びナレーションが入った。


「ロボットが人事を行なう前は、実にいい加減なもので、人当たりの良い人や学歴の良い人が、仕事の出来(でき)に関わらず高い評価を得ていました。それがガラリと変ったのです、今や完全な実力主義になりました。ロボットは誰にでも公平なのでえこひいきもありません、これは理想的な人事の形なのかもしれません」



 カメラはVTRからスタジオに戻ってきた。


「ここまでロボットの管理職は、上手く言っているようですね?」


 司会の人が姉ちゃんに話を振る。


「ええ、とても上手く行ってます。効率化も上がり、店員さん達はやる気に満ちています。店の売り上げは20パーセントほど伸びました」


「それはすごいですね。他にも大きな効果がありましたよね?」


「ええ、株価が大きく上がりましたね。こちらは経営陣の入れ替えが大きな理由だと思います」


 ナレーションが入る。


「経営のトップ、創業者一族には大きな問題があったのです」


 ここでCMが入った。番組は後半へと続く。

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― 新着の感想 ―
[一言] 良いよねーこんな上司 いたら良いよねー あーー
[良い点] これは接客の評価もうまければ 完璧 [気になる点] 管理職は機械的にした方が得ね
[一言] トップが大金を懐に入れなければ会社の資金は潤沢でしょうな。 経営者がダメダメあるある。 初代は偉人なんだけどー。
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