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マルオカート 7

 お昼ご飯を食べ終わった僕たちは、再びカートに乗り込み、上空のレースサーキット場へと移動する。

 これから走るレースは、今までのレースとは大きく違う点がある。それはぶつけ合いとアイテムが加わった事だ。これから激しいバトルのようなレースになるだろう。


 午後のレースは、南国のビーチ沿いのコースだ。路面はアスファルトが3割、残りの7割がダートのような砂浜で、走りにくい部分が多いものの、カーブは緩く初心者向けのコースと言える。


 スピーカーから姉ちゃんの声が聞えてきた。


「準備は良い? カウントダウンをスタートさせるわよ」


「はい」「大丈夫です」


「じゃあ、スタートするわね」


 僕たちが返事をすると、信号機が赤から黄色へ動き出した。

 開始時点の順位は、キング、ヤン太、ミサキ、レオ吉くん、僕、ジミ子の順だ。



 信号が緑へと変わり、「ポーン」という、おなじみのスタート音でレースが始まる。


 アスファルトで舗装された長い直線が終わると、すぐに砂浜の道が現われた。

 やがて大きなカーブに入るが、ミサキはあまり減速しないで突っ込んで行く。そして遠心力に耐えきれず、外側へ放り出されようとした時だ。


「今よ!」「うおっ!」


 ミサキがヤン太にガツンとぶつけた。ミサキは反動で再びインコースに戻り、変わりにヤン太のカートが大きく外側へと押し出される。


 コース外に弾き出されて、ヤン太は少し遅れたが、やがて遅れを挽回し、お返しとばかりにミサキのカートに思い切りぶつける。


「これでも喰らえ!」「痛った、何をするの!」


 2人でガンガンとぶつけ合っている横をレオ吉がすり抜けていく。


 レオ吉くんは、初めはカートを怖がって、あまりスピードを出さなかったが。走行練習の後半になると、かなり良いタイムを出せるようになってきた。おそらく地道な練習の成果が出て来たのだろう。



 先頭のキングはミスをせず、着々と僕たちとの距離が遠くなる。

 今回もキングの勝利で終わるかと思ったが、僕たちの前に『?』のマークの付いた、1メートルくらいの立方体の箱が現われた。


「えっ、なんですか? これは?」


 障害物を避けようとするレオ吉くんに、僕がアドバイスをする。


「それはアイテムボックスだよ、体当たりをして」


「あっ、はい。では、体当たりをします!」


 レオ吉くんが覚悟を決めて、箱に突っ込む。すると箱はバラバラに砕け散り、中からアイテムが出て来た。レオ吉くんがゲットしたアイテムは、赤い『(かめ)甲羅(こうら)』だった。



「なんで『亀』なんて、役に立たない物が入ってるんですか?」


 悲鳴に近い声を上げるレオ吉くんに、姉ちゃんが使い方を言う。


「アイテムを使う時は、ハンドルの中央の、クラクションを鳴らすスイッチと同じよ」


「いや、でも、亀の甲羅ですよ?」


 不思議がるレオ吉くんに、僕がまたアドバイスをする。


「それは役に立つアイテムだから使ってみてよ」


「そうなんですか? では、使ってみます」


 レオ吉くんがボタンを押したようで、カートから亀の甲羅が放たれた。甲羅はそのまますごい勢いでキングのカートに当り、キングはクルクルとスピンする。


「うおっ、やられた」


 キングがコースアウトになって、レオ吉くんが1位になった。


「えっ、なんで、どうして亀の甲羅が飛んで行くんです?」


「「「…………」」」


 レオ吉くんはみんなに質問をするが、その質問に答えられる人は居なかった。おそらくネンテンドーの社員でも答えられないだろう。



 レオ吉くんに続いて、ヤン太とミサキがアイテムを獲得する。


「なんだ、バナナか」「私もバナナだわ」


 2人はさっそくバナナをまき散らしはじめた。あっという間に、路面はバナナだらけになる。


「いや、ちょっと待って!」


 僕はバナナの間の、わずかなスペースを走り抜けようとしたのだが、僕の腕前ではダメだった。スリップしてスピンをする。

 このスピンはゲームとは違い、中に乗っているので目が回る。なかなかキツイ。


 目が回ってしまったので、ちょっと時間をかけてコースに復帰をする。

 すると、目の前をもの凄い勢いでカートが走って行った。それは、今まで最下位のジミ子だが、カートが金色にピカピカと光っている。



 スピーカー越しに、僕がみんなへ警告をする。


「ジミ子が『スター』を取ったみたい、気をつけてね」


『スター』とは、マルオブラザーズに出てくる、取ると一定時間、無敵になるアイテムだ。

 ジミ子は、ヤン太とミサキのカートを狙い、突っ込んで行く。


「あっぶね!」


 ヤン太はサイドミラーを見ていたらしく、なんとか回避をする。


「えっ、いやあぁぁぁ」


 ミサキには当り、スピンしてコース外に弾かれた。

 そして、次の瞬間、予期せぬ非常事態が起こる。


「あっ、食べ過ぎた、お昼が……」


 あのスピンはけっこうキツかった。もしかしてミサキは出してしまったのだろうか?

 姉ちゃんが慌てて指示を出す。


「ミサキちゃんのカート、緊急離脱してトイレの前に直行よ!」


 この後、ミサキはゲームから離脱をする。



 無敵状態のジミ子は、レオ吉くんのカートに近づいて行く。


「フフフ、今の私は無敵よ!」


 ジミ子はそう言って、レオ吉くんのカートをぶつけようとした時だ。ちょうどスターの効果が切れた。

 2人は激しくぶつかり、2人ともコースアウトになった。


「ちょっと、何をするんですか~」「なんで途中で効果が切れるのよ~」


 ヤン太の順位が繰り上がり1位になる。僕が2位で、復帰してきたキングが3位になった。


 ジミ子とレオ吉くんがコースに復帰してきて、レースは後半戦に入る。

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― 新着の感想 ―
[一言] 昔っからレースゲームとか、1人でいいじゃん? 早く走ればいいんじゃないの?と思った事がありました。 妨害ばりばりのレースはそれはそれで楽しいものがありますが。
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