無敵の服 3
耐衝撃のパーカーの性能を試すため、僕らはスポーツレクリエーション施設の『スポッチャン』にやって来た。
受付で入場料を払い中に入る。料金は割引を適用して、学生1600円、大人2400円だった。
中に入ると、施設の案内板の前で、レオ吉くんが真剣に悩み始めた。
「うーん。どれから行きましょうか?」
するとミサキがレオ吉くんの手を引っ張りながら言う。
「とりあえず屋上から順番に行ってみない? 実際に見て、気になったヤツを全部やって行きましょうよ」
「そうですね。そうしましょうか」
僕たちはエレベーターに乗り、屋上へと移動する。
屋上には、ネットで囲われた色々な競技のコートと、バッティングマシンなどが設置されていた。
コートでは、バトミントン、バレーボール、フットサル。色んな人が楽しんで遊んでいる。
どれにしようか見渡していると、バスケットのコートが空いているので、僕が指をさしながら言う。
「あそこにしない、コートが空いているみたいだよ」
「そうだな、とりあえずバスケから始めるか」
ヤン太を先頭に、僕たちはコートに入る。
「かなり狭いわね」
コートに入るなり、ジミ子がつぶやいた。キングが周りをみながら言う。
「ああ、確かに狭いな。半分か、下手をすれば3分の1くらいしかないな。ゴールのリングもかなり低い位置にあるし……」
すると、ヤン太が軽く笑いながら言う。
「まあ、レジャー施設だからしょうがないだろ。細かい事を気にせず楽しもうぜ。まずはチーム分けだな」
「知っています。こういう時は、ジャンケンのグーとパーで別れるんですよね」
レオ吉くんが目を輝かせて、ジャンケンの構えを取る。もしかしたら、こういったジャンケンでやるチーム分けは、初めてなのかもしれない。
いつもは、チームの力が拮抗するように、バランスを考えてチームを分けるが、ここはレオ吉くんの言うとおりにしよう。
「じゃあ、グーパーで決めようか。せーの」
全てを運に任せて決めたところ、運動神経の良い、ミサキとヤン太、運動神経が比較的普通の僕が同じチームとなった。そして、運動神経のあまり良くない、ジミ子、キング、レオ吉くんが同じチームとなってしまった。
これはあまりに戦力差がありすぎる。
「あー、どうしよう、うちのチームが強すぎる気がする。もう一度、決め直す?」
僕がそう言うと、レオ吉くんが否定をする。
「大丈夫です。ボクはバスケットボールは得意な方ですよ、ダンクシュートが出来ますから」
確かにレオ吉くんは背が高い。あの背の高さなら、ダンクが出来てもおかしくはない。
「とりあえずやってみるか。試合時間は15分くらいで」
ヤン太が終了を告げるアラームのタイマーをセットして、試合がはじまった。
試合開始のジャンプボールは、背の高い向こうのチームが圧倒的に有利だ。
キングがジャンプをし、ボールを奪うと、ジミ子へパスを出し、ゴール前に居るレオ吉くんへと、さらにボールを送る。
レオ吉くんはダンクシュートが出来ると言っていた、これでもう得点を取られてしまう。
そう思っていたのだが、レオ吉くんは20センチくらいの、ちょっとしたジャンプをしただけで、ボールを持ったまま再び地面に着地をした。
「えっ、何をやってるの?」
ジミ子から声があがる。
「い、いえ、地球の重力がちょっと重くて……」
どうやらレオ吉くんがダンクシュートをした場所は、月での話だったらしい。
月の重力は、地球の6分の1なので、先ほどのジャンプは、月だと120センチの大ジャンプになるハズだ。
「ダンクできないなら、そのままシュートして!」
「はい、わかりました」
ジミ子に言われて、慌ててシュートをするレオ吉くん。しかし地球の重力になれていないのか、それとも運動が苦手だからなのか、ボールはかなり外れた位置に飛んでいった。
コース外になったボールを回収して、僕とミサキとヤン太のチームの反撃が始まる。
ヤン太がドリブルで上がっていくと、キングとレオ吉くんがブロックに入った。
運動神経の良いヤン太を止めるには、二人がかりでないと厳しいだろう。
ブロックされたヤン太は、僕のほうにパスを出してきた。
僕がドリブルで少し進むと、ジミ子が前に立ちふさがる。
ジミ子のブロックぐらいだったら何とかなりそうだったが、前の方から声が聞えた。
「ツカサ、こっちにパスをちょうだい」
ミサキが前方に回り込んでいたようだ。ノーマークなので、そちらにパスを回す。これで得点が入っただろう。
そう思っていたが、ボールはミサキの体にベチッと当ると、そのまま床を転がった。
ジミ子が落ちたボールを慌てて拾い、キングにパスをすると、あっさりと得点を決められてしまった。
「ミサキ、なにをやっているの?」「そうだ、やる気があるのか!」
僕とヤン太たちがミサキに詰め寄る。
「いや、わざとじゃないのよ。このパーカー、首がギッチリと固定されていて、ほとんど振り向けないのよ」
かなり力を入れて、僕たちの方向へ首を向けているように見えるが、角度で言うと10度も動かせていない。
確かに、体が強い衝撃にさらされるような時は、頭と首の保護は最優先だ。首は弱くて脆い。
ただ、今はバスケで遊んでいるだけなので、そんな衝撃に備える必要は全くない。
「それだったら、そのパーカーを脱げばいいんじゃないの?」
「だ、ダメよ。今日はこのパーカーのテストをしに来たんだから」
僕が脱ぐことを進めると、ミサキは頑なにそれを拒否した。
この後のプレイは大変だった。
ミサキは正面を向いていれば、パスが通るが、体の向きが違っていていると、ほとんどボールを取りこぼす。
パスをして良いのか悪いのか、非常に判断に困る。まるでチーム内に裏切り者がいるみたいだ。
そんな事で、試合は五分五分の勝負をする。
やがて時間が来て、終了のアラームが鳴ると、運動神経の良いはずの僕のチームは負け、ジミ子とキングとレオ吉くんが勝利を収めた。
僕たちに勝ったジミ子は、心の底から嬉しいらしく、これまで見たことの無い、ドヤ顔をきめていた。
やはり、このパーカーは耐熱や耐衝撃を最優先に作られていて、運動には向いていないんじゃないだろうか。




