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生まれてきて最も長い午後の時間 3

 僕たちは、ハンバーガーチェーンのメェクドナルドゥに居る。

 今後のどうすべきか話し合う為だ。



「こんな状態だけど、明日も学校行かなきゃいけないのかよ」


 ヤン太がため息交じりに言った。


「行かなきゃダメでしょ、学生なんだから」


 ミサキは何も考えずに即答する。

 たしかに女性はいつも通りだろうが、男性はそうは行かない。


「とりあえず、政府発表とか情報を見てみようか」


 僕がみんなに提案した。各自、スマフォでニュースサイトや、政府の広報のページを見る。


 ニュースサイトでは、特集として『男性の女性化』が組まれているが、それはもう知っている。

衝撃(しょうげき)』『驚愕(きょうがく)』『震撼(しんかん)』などの文字が躍っているが、有用な情報は特になかった。


 政府機関の広報のページは、『誠に遺憾(いかん)、宇宙人に抗議』などと書かれているが、やはり必要な情報は何もなかった。


「ん~、見当たらないね、情報」


 ジミ子が口をとがらせながら言う。


「おっ、あったぜ、大scoop(スクープ)記事」


 キングが何か有力な情報をつかんだらしい。


「なになに?見せて」


 ミサキが真っ先に食いついた。


「なんと、あのヘルクレスの栄光の続編、『ヘルクレスの栄光Ⅵ』が出るらしい。

 メーカー潰れてるのに続編の発売だ! こりゃ大ニュースだぜ!!」


「「「…………」」」


 みんなは(あき)れるばかりだ。この状況でもゲームのニュースサイトを見ていた。

 だが、この事がきっかけとなり、緊張の糸が一気に緩んだ。


「あぁ、まあ、気にしてもしょうがないか。なっちまったもんはしょうがない」


 ヤン太がしぶしぶ開き直る。


「そうだね、もう気にしないほうが良いかもね」


 僕も少しだけ吹っ切れた。


 みんなが自然と笑顔になる。



「まあ、やり方はダメだったけど、宇宙人は一応良い事をしようとしてたよね?」


 話が一段落ついたら、ミサキがまた宇宙人を擁護する。


「やり方はダメだったけど、まあ、たしかに改善を計ろうとはしてたな」


 ヤン太がしぶしぶミサキの発言を認めた。

 発表の時を思い出しながら、僕は疑問を投げかける。


「そういや銀色の月の女性の兵士って、やっぱり元は男性だったのかな?」


「そうだろうね、『息子が溶かされた』とか言ってたけど、まあ、アレがなくなったことを言っていたんだろうし」


 ミサキが『アレ』という言葉を、ちょっと恥ずかしそうに言った。


「『人類に危害を加える』という点では、安心かもね。一人も死んでないし、ケガだって負わせてない」


 続いてジミ子が安心できる事実を指摘した。

 僕もその意見には賛同する。


「たしかにそうだね。何をするか分からないけど、その点だけは心配しなくていいかも」


 この発言に、周りはうなずいた。




 僕は今回の『処置』に目をつぶり、これからの未来を考えることにした。


「彼ら宇宙人は、これから何をするか分からないけど、悪意はあまりないかもしれないね」


 その発言をミサキは見逃さない。


「そうだよ、きっと良いことも色々してくるよ」


「まあ、そうだな。付き合っていけば誤解もしなくなるだろう」


 ヤン太もすこし前向きな発言をする。


「誤解が解けたら男に戻れるかもよ」


 ジミ子がちょっと茶化してきた。


「男性を女性に出来るんだから、こんどは女性が男性になってもおかしくないかもね」


 僕が冗談っぽく言う。

 ミサキが本気で嫌がってきた。


「それは絶対に嫌」



 ジミ子が元男子に聞いてきた。


「ところで男子の最大の利点ってなによ?」


「そう言われると、なんだろう?」


 僕はとっさに思いつかない。


「ションベンが楽なことかな」


 ヤン太が笑いながら言う。

 ジミ子が今度は真剣な眼差しで聞いてきた。


「それだけ?」


「うーん、もしかしたら、そのくらいかもね」


 僕がはぐらかすように返事を返した。


 でも、ほんとうに男性の有利な点ってなんだろう?

 他には『ちょっと力が強い』くらいしか思い浮かばない。

 以外と、男性の利点は「小の排泄が楽にすむ」という事ぐらいしかないのかもしれない。



 楽しい会話は、本当に時間が早く過ぎる。

 どこからか「夕焼け小焼け」の曲が流れてくる。


 小学生はもう帰宅する時間だ。

 高校生の僕らは、いつもならもう少し時間を潰してから帰るのだが、今日は大変な一日だった。


「家族が心配してるかもしれないから、今日は早めに帰ろうか?」


 僕からそう提案すると、「そうだな」「そうよね」解散する流れになった。



 残ったジュースを一気に飲み干すと、


「じゃあね」「またな」「Good bye(グッバイ)


 僕らはそれぞれ帰路につく。



 ミサキは別れ際、


「分からない事があったら何でも聞いてね」


 といって家の中へと消えていった。

 いざという時は頼りにさせてもらおう。

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