民住島 3
本の全く無い図書室という、変わった場所で写真撮影を行なった後。
僕らはランチを食べる為に、海上都市の中を移動する。
クラスが丸ごと乗れる、60人乗りの大型エレベーターで、いくつかフロアを上がり、学校の正面玄関から外に出ると、円形の広場の一角に出た。
円形の広場の大きさは、およそ50メートルほどで、周りを見渡すと、デパートくらいありそうな巨大な商業施設用の建物、4万人規模のスタジアム、病院や図書館、役所や市民会館といった公共の建物がある。
そして、少し遠くの位置には、この広場を3方向から囲むように、5000人規模の巨大なマンションがそびえ立っていた。
「すげえ建物だな……」
ヤン太がマンションを見ながら言う。
「中が見たいなら後で見せるわよ。まずはお昼にしましょう、こっちについてきて」
「はい、そうですね。お昼に行きましょう」
姉ちゃんとミサキにせかされて、僕らはスタジアム沿いに伸びている道を進む。
僕らは姉ちゃんの後を付いていく。
スタジアム沿いの道は、小さな店がいくつも並ぶ、ショッピングモールのような通りだった。僕らはその通りを抜けて、スタジアムに寄り添うように建っている高層ビルにたどり着いた。
「姉ちゃん、この建物は何?」
「うちの会社の経営するホテルよ。さあ入ってちょうだい」
入り口の自動ドアを通り抜け、僕らは中へと入った。
中に入ると、広いロビーがあり、正面にフロント、右手に喫茶店、左手にエレベーター乗り場があった。姉ちゃんは迷わずエレベータに乗り、僕らもその後に続く。ボタンを押すその行き先は、最上階の展望レストランのようだ。
ドアが開くと、ほぼ360度、全面ガラス張りの展望レストランが目の前に広がる。
エレベーターのそばに控えていた、案内役のロボットがこう言った。
「ただいまの時間は空いておりマス。ご自由な席へドウゾ」
もちろん僕ら以外の客は居るはずがない。どの席でも選び放題だ。
「ここは海をみながら食事でしょう」
ミサキが海側の席へ行こうとすると、姉ちゃんが反対側を指さして言う。
「こっちはスタジアムが見えるわよ」
「そっちに行ってみようぜ」
ヤン太が迷わずスタジアム側へと駆け出す。つられて僕らもそちらへ行くと、ミサキもしょうがなく付いてきた。
スタジアム側の席は、想像以上にスタジアムを見渡せる席だった。
「あのグラウンドは野球やサッカーやラグビーとか、ほとんどの球技ができるわよ。もちろん陸上競技にも対応しているわ」
姉ちゃんが説明すると、キングが感想を言う。
「すげぇ良く見えるな、ゲーム画面みたいだ」
スタジアム芝生のグラウンドがハッキリと見えて、これなら試合観戦を楽しみながら食事が取れそうだ。
「せっかくだから、この席に座らない?」
「まあ、ツカサが言うなら、この席でも良いわよ」
こうして僕らはスタジアムを一望できる席を確保した。
「どんな食事があるんですか?」
ミサキは風景にあまり興味がないのか、メニューの事を質問をする。
「うーん、あんまり期待しないでね。場所は良いけど、メニューは普通のファミレスと変わらないから」
そう言って姉ちゃんはメニューを見せてくれる。
メニューにのっているのは、パスタなどのイタリアン、ステーキやハンバーグなどの鉄板料理、一般的な洋食と、和食メニューがそこそこ載っていて、確かに普通のファミレスと変わらない。値段もセットで1000円そこそこが中心で、これもファミレスとあまり変わらなかった。
ウェイターのロボットを呼び出して、注文をする。
「海のそばだから、海鮮だな。海鮮丼と味噌汁セットを喰おう」
「俺はシーフードでなくてもいいや、ハンバーグセットで良いかな」
「私は焼き魚定食で良いわ」
「ペスカトーレのスパゲッティ、ダブルサイズで」
「僕はシーフードドリアをお願い」
ヤン太、キング、ジミ子、ミサキ、僕の順でメニューを注文する。
「海のそばだけど、この食事は別な場所で作っているから関係ないのよね。私は親子丼でお願い」
姉ちゃんが余計な事を言いながら、注文をした。
まあ、確かにそう言われればそうだ、それにシーフードドリアは、ほとんどが冷凍食品の気がする。
僕らの注文したメニューは、およそ2分で出て来た。
食べて見ると、味は美味しかったが、この時間で出てくるという事は、そういう事なんだろう……
食事が終わり、落ち着いた時間が流れる。
ここで、僕は気になっていた事を姉ちゃんに聞いてみる。
「この海上都市の建設費用は『プレアデス財団のポケットマネー』とかいう話だけど、お金とか大丈夫なの?」
「大丈夫よ。基礎の部分は、宇宙人の技術を使って作ったから、ほとんどタダみたいなものだし」
「そうなの?」
「まあ、少しはお金は掛かっているんだけど、費用を回収する方法はあるから」
「どんな手段なんですか?」
金儲けの話が出て来て、ジミ子が興味を持ったようだ。姉ちゃんはちょっと得意気に解説をする。
「まず一つ目はこのホテルね。この海上都市にホテルは一つだけだから、利益を独占できるわ。海上都市が発展すればするほど利益が上がる予定よ。まあ、もしこの都市が衰退しても、そばに東京デスティニーランドとか、国際展示場のビックリサイトがあるはずだから、それなりの収益を見込めそうだけどね」
確かに、東京デスティニーランドがそばにあるというだけで、ホテルは採算は取れそうだ。あそこはシーランドもあるので、とても一日では廻りきれない。泊まり客も多いだろう。
「二つ目は何です?」
ジミ子が聞くと、姉ちゃんはこう言った。
「二つ目は、内装の工事のお仕事。外側の建物の部分はうちの会社が作ったから、おそらく内装の工事を発注する時に、うちの会社に受注が一番来るでしょう。もちろん、他の会社に内装が発注される事もあるけどね」
どうやら、おもしろ半分でこの海上都市を作った訳では無さそうだ。
「内装って必要なんですか? 我慢すれば、そのまま住めるのでは?」
確かにジミ子だったら、費用をケチってそのまま住みそうな勢いはある。すると姉ちゃんはこう答える。
「さすがに水道やトイレの無い場所で住めないでしょう」
「……それは無理ですね」
どうやら設備は本当に何にも無いらしい。いくらジミ子でも、トイレの無い場所に住むことは出来ない。
姉ちゃんの打算的な一面を、すこし感じた。
「他にもお金を稼ぐ方法はあるの?」
僕が聞くと、姉ちゃんはこう答えた。
「実は三つ目があるのよ。これはかなり先になると思うんだけど、都市が手狭になった時、ユニットを追加する形で、後から島を拡張する事が出来るの。この時に追加ユニットの代金として、高額の費用を請求する予定よ、どうせ他の企業じゃ作るの無理だろうし、出来るだけ値段をふっかけるわ」
「幾らぐらい絞り取るんですか?」
ジミ子が恐ろしい笑顔を浮かべながら、姉ちゃんに聞く。
「埋め立て地だけど、関酉国際空港の建設費は、1兆5000億円だって言うから、その坪単価あたりを参考にさせて貰おうかしらね」
姉ちゃんも恐ろしい事を言う。追加するユニットは幾らくらい掛かるのだろう。民住党の財源は大丈夫だろうか……
こうして食後の雑談が終わった後、僕らは本格的に、この海上都市を散策する。




