太古宇宙人飛行士説と新たなる説 1
「夕方から見たいテレビがあるの。今日はうちに集まらない?」
ミサキが何か気になる番組があるようだ。今日はミサキの家に集まって遊ぶ事にした。
昼過ぎから集まり、昨日見たアニメの話題や、ミサキのマンガを読んで時間を潰す。
やがて夕方に近づくと、ヤン太がミサキに質問をする。
「そういえば見たい番組ってなんだ?」
「『太古の宇宙人』って番組は知ってる?」
「なんだ、その番組?」
ヤン太がよくわからないといった顔をする。ミサキはさらに僕らに聞く。
「『太古宇宙人飛行士説』は知ってる?」
「聞いた事がないよ」
僕がそう答えると、ミサキはスマフォを見ながら説明を始める。
「簡単に言うと、太古の昔から宇宙人が地球にやって来ていて、色々と人類に関わってきたって説よ。例えば、エジプトのピラミッドは、平均2.5tの石を、270万~280万個積み上げていて、高さ140メートルくらいあるらしいの。どうやって人間が作ったか不思議じゃない?」
「それは不思議だな」
ヤン太が相づちをうつ。
「人の力だけで、これを作れると思う? たとえ作れたとしても、ピラミッドって何にも役にたたないじゃない。莫大な労力を使ってまで、こんな物を作ると思う?」
「思わないわね」
ジミ子が返事をする。
「じゃあ、仮に宇宙人がピラミッドを作るとしたらどうかしら? 彼らにとって、ピラミッドの建設は困難だと思う?」
「簡単だと思うぜ、流石に1日とかじゃ無理かもしれないが。彼らなら1週間くらいで建ててしまいそうだ」
キングが素直な感想を言う。確かに彼らなら余裕で建てられるだろう。
「そう。それが歴史の答えなの。ピラミッドを作ったのは人類じゃないわ、遙か昔に宇宙人がやって来て、簡単に作っちゃったの。それに作ったのはピラミッドだけじゃないわ。イギリスのストーンヘンジや、マヤのマチュピチュ。日本だと前方後円墳とかを作っているわ」
ミサキがとんでもない事を言い出した。
太古宇宙人飛行士説にかかると、なんでも宇宙人が作った事になってしまうらしい。
流石にちょっと無理がある。
僕がやんわりと反論しようとすると、先にジミ子がこう言った。
「そうね。一理あるわね。無駄な建設物を建てるために重労働するなんて、確かにおかしいわ。あの何を考えているか分らない宇宙人だったら、無意味な巨大建築物を建てるとか、そういう事をやりかねないわね」
この意見にヤン太とキングがこう答える。
「まあ、そうかもしれないな」
「ヤツだったら軽い気持ちで建ててしまいそうだぜ」
あの宇宙人の姿が、ちょっと僕の脳裏に浮かんだ。まあ確かに冗談半分でやりかねない。
みんなが肯定する雰囲気になると、ミサキはさらに調子づく。
「でも古代の宇宙人がやった事はそれだけじゃないの。人類に様々な知識を与えて、文明を発展させたの。秦の始皇帝は宇宙人から知識を授かったし、ファラオは宇宙人の協力で、エジプトを統一したの」
ますます無茶な事を言い出した。
あまりにも理屈が破綻しているので、僕は少し反論をする。
「あれ? 確か古い中国だと、占いとかで国の政事を決めてなかったっけ? 亀の甲羅を使ってやるとか聞いた事があるよ」
「それはね。例えばツカサが王さまだったとするじゃない。亀の甲羅を見て、国の行方を決めたりする?」
「いや、決めないよ」
「そうよね。じゃあ、タブレット端末があって、それで宇宙人が送ってくるニュースや天気予報が見られるとしたら、どうする? 長期の天気予報とかで、農作物の出来とかも分るんだけど?」
「もちろん使うけど……」
「じゃあ、王さまのツカサが、タブレット端末で情報を引き出します。宇宙人の作ったタブレット端末が、たまたま六角形だったとすると……」
ここでジミ子が気づいたようだ。
「ああ。ツカサが六角形のタブレット端末を見て、大切な事を決めている様子が、何にも知識のない古代の人から見ると、亀を見つめて占いで決めていると思い込んだのね」
「そうよ。さすがジミ子、分ってるじゃない!」
ミサキがニコニコとしながら言う。
しかし凄まじい屁理屈だ。この調子だと太古宇宙人飛行士説にかかれば、どんな事でも宇宙人と結びつけてしまいそうだ。
「アトランティスやムー大陸を作ったのも宇宙人だし、滅ぼしたのも宇宙人よ!」
さらに熱っぽく語るミサキを遮るように、ヤン太が質問をする。
「それで、今日、ここに集まって『太古の宇宙人』って番組を見る理由はなんだ?」
「そう、今日は『太古の宇宙人』の特別番組があるの。番組に宇宙人が出て来て、質問に答える予定なの」
ミサキの話を聞いていると、この番組は、かなり無茶な理論を振り回して来たらしい。
いままで宇宙人がいなかったから、妄想のような理屈でも大丈夫だったが、宇宙人が来るとなると、これまでの真相が分るだろう。
僕は、これから始まる番組が、ちょっと楽しみになってきた。




