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逆転判決 2

 テレビをつけると曰産(いわさん)の元会長、カーロス・ゴルゴンの弁護団から、緊急発表が行なわれるらしい。

 正午に行なわれた、宇宙人の改善政策に関係しているのだろうか?

 僕らは食い入るようにテレビを見る。



 テレビ局のレポーターが、慌ただしく解説をする。


「えー、間もなく記者会見が予定ですが、あっ、弁護団代表の中弘(なかひろ)氏が現われました。これから会見が開かれます」


 弁護団代表の中弘氏は、神妙(しんみょう)な顔つきで席に着くと、口を開く。


「本日、私を含む弁護士4人は、カーロス弁護団を辞任する運びとなりました。当事者が国外に逃亡して、連絡がつかなくなったのが辞任する理由です」



 その言葉を受けて、各局のレポーターが質問をする。


「朝曰テレビの斉藤です。辞任に関して他に理由は無いんでしょうか?」


「ありません、あくまで連絡が途絶えたのが全てです」


(てい)BSの横井です。カーロス氏の海外逃亡に手助けしたという話もありますが」


「関与はしておりません。逃亡する事が事前に分っていたら、私は全力で止めています」


「NHCの沢田です。今日発表された、宇宙人の改善政策と今回の辞任は、何らかの関係はありますか?」


「ありません。全くの無関係です」


 弁護団代表の中弘氏は、淡々と質問に答えていく。



 そんな中、テレビ都京(ときょう)のレポーターが、こんな質問をした。


「テレビ都京の細川です。この記者会見は報道でなく、バラエティ枠での放送をしてくれという話でしたが、なぜですか? 報道番組にすると『思考読み取り装置』で本心がテロップで表示されますが、本音がバレると何かマズい事でもあるのでしょうか?」


「い、いえ、けしてその様な事はありません。弁護士はいつも本心から弁護を行なっており、うそ偽りなどは……」


「では、今からでも報道枠に切り替えて、その『本心』を表示しても良いでしょうか?」


「あっ、もう時間となりました。これにて失礼します」


「ちょ、ちょっと待って下さい……」


 代表の中弘氏はマスコミから逃げるように、会見の場から飛び出していった。


「逃げたな」「逃げたぜ」「逃げたわね」「そうね逃げたわ」


 ヤン太、キング、ミサキ、ジミ子が順につぶやく。まあ、誰が見ても逃げたようにしか感じない。



 記者会見は終了して、カメラはスタジオに戻った。


「さて、記者会見は終了しましたが、これからこの事件は、どうなって行くのでしょうか?」


 スタジオのアナウンサーが、専門家に話を振る。


「弁護団代表の中弘氏は、カーロス氏を『故意か重過失により出国させた』として、すでに弁護士会から懲戒請求(ちょうかいせいきゅう)が提出されています。この懲戒請求に対して、中弘氏はなにかしらの弁明(べんめい)をしなければ、そのまま懲戒処分になってしまいますが、弁明に関しても『思考読み取り装置』が使われるので、おおやけの場に中弘氏が出てくるのか、その点が注目ですね」


「なるほど、今後、中弘氏はどのような方向性で弁明するのでしょうかね?」


「弁明しないで、そのまま懲戒処分になる可能性もありますよ。私は彼がおおやけの場に出てくる確率は、2割以下だと思います」


「……それだけ本音が公開されると、マズいという話ですよね」


「その通りですね。下手をすると、彼が弁護して無罪を勝ち取った過去の判決も、(くつがえ)ってしまう可能性もあります。彼は過去に大物政治家の弁護もしていますし……」


「それは確か4億円が動いた事件ですよね」


「そうですね。一億円が『座布団(ざぶとん)』に例えられた事件です。座布団4枚で4億円。この時、この政治家は無罪を勝ち取っていますが……」


「真相が表に出れば、大変な事になるかもしれませんね」


「ええ、そうです」


 僕としては事件の真相が知りたい所だが、この流れだと、この弁護士は二度と表舞台に出て来なさそうだ。



「こんな感じだと『思考読み取り装置』を使っても真相が分らず、今までとあまり変わらないかもね」


 ジミ子がちょっと冷ややかに言うと、ヤン太もそれに同意する。


「まあ、そうかもしれないな。政治家とか上手くごまかすし……」


 そんな話をしていると、テレビの方で、こんなニュースが流れてきた。


「速報です。メロン、カニなどを贈答していた菅源(すがげん)議員が、本日づけで議員辞職をするそうです。秘書が勝手にやっていたと言っていましたが、主張を改めて、自らの関与を認めたようです」


 キングがちょっとおどけながら言う。


「……意外と効果があるみたいだぜ」


「そうね」「効果があるな」


 ジミ子とヤン太が、あっさりと改善政策の効果を認めた。

 今までは適当に秘書に責任をなすり付けていたが、今後はその言い訳は難しそうだ。



「これからの裁判って、どうなっていくのかしら?」


 ミサキがそう言うと、キングがスマフォで調べながら、こう言った。


「テレビ都京(ときょう)で、この後、裁判に関しての特別番組をやるみたいだ」


「テレビ都京がやるの? ちょっと見てみようよ」


 僕は驚きのあまり、ちょっと声を張り上げて、言ってしまった。

 戦争の時にアニメを流していた、あのテレビ都京が、今回の改善政策に関して特別番組をやるらしい。これは大変な事態かもしれない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 昔から辞任すればOKって頭おかしいなと常々思ってます。 そしてすぐまた別の場所で議員をやる。 相当イカれてますよね。 五輪の元締めがあれなおかげで、五輪が成功する未来が見えません。 おかしな…
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