エイリアンに支配された日常 3
授業を終え、僕たち5人は会話をするため、ハンバーガーチェーンのメェクドナルドゥに来ている。
こういった時間つぶしのような集まりは、キングは「ゲームをする時間が減る」といつもは嫌がるのだが、オンラインゲームの出来ない今はどうでもいいらしい。僕らにおとなしく付き合っている。
飲み物と、一番安いハンバーガーと買うと僕らは席につく。
学校で休み時間に色々と話したが、まるで話したりなかった。
初めにミサキが話題を切り出す。
「宇宙人はどんな事ができると思う?」
朝に話してた続きのような話題をみんなに振った。
なかなか興味をひかれる内容だ。
宇宙人擁護派のミサキとしては、ネガティブな会話になりにくい議題を選択したのだと思う。
「空間転移はやってたな、あれが使えれば、すげー便利そうだ」
ヤン太がポツリと言った。
ただ、ああいう便利なものには何か恐ろしい副作用みたいなものがあるかもしれない。僕は理由もなく、漠然と反論をする。
「でも、なんか怖くない?」
「大丈夫じゃないかな。かなりの数の軍人がさらわれてるけど、平気そうだったし。それに、ド今ゑもんの『どこだってドア』みたいな機密道具があったら使いたいと思わないか?」
ヤン太はどうやら転送装置に魅入られたらしい。
「使って見たい。一家に一枚、欲しいねアレ」
ジミ子も物欲をあらわにした。
「たしかにあれがあれば家から学校まであっという間だね」
ミサキがニコニコしながら答えた。
「その気になれば何処まで行けるんだ、アレ?」
ジミ子がみんなに質問を投げる。
「兵士たちはSilver Moonまで飛ばされてたぜ、地球上ならどこだって行けるんじゃないか?」
キングが的確に答えた。たしかにその通りだ。
月までの距離は約38万4400km。銀色の月の月はそのちょっと手前にあるので30万~37万kmぐらいかもしれないが。そんな距離の移動ができれば、直径12,742 kmの地球なら、どこにでもいけるだろう。
「そうだね。あれさえあれば通学だけじゃなく、海外旅行だって自由に行けるね」
ミサキが目を輝かせながら言った。
あまり暴走した意見を出されても困るので、それを僕は止めにかかる。
「まって、アレを一般人が自由に使えるとは限らないじゃない。
彼ら宇宙人が独占して使うだけかもしれないし」
「ああ、まあ、そうだな。自由に使えたら、下手すると犯罪とかにも使われるかもな」
ヤン太が意外な利用方法を言い出した。
「鞄をパクって、ドアをくぐって移動すれば、追ってこられないね」
ジミ子が早くも完全犯罪を思いつく。
「確かにそうだね。自由に使えるとしたら色々と問題がでてくるんじゃない」
僕の言葉に、全員がうなずく。
『どこだってドア』は悪用しようとすれば、いくらでも方法が思いつく。
その気になれば、銀行強盗や、密室殺人だって簡単にできそうだ。
僕らが『どこだってドア』の使用をあきらめると、ミサキがほかの物をほしがった。
「私はね、あの翻訳機が欲しい」
「そういえば記者会見前に配ってたな」
ヤン太が答える。そういえばそんな物も配っていた。モノリスとの攻防で僕はすっかり忘れていた。
「色々な国の人としゃべれたら便利じゃない」
ミサキが楽しそうに言う。
「たしかに便利だな」
ジミ子も欲しそうだ。
ミサキの考える事はだいたい分かる。
僕はミサキの本音をバラす事にした。
「ミサキは英語が苦手だからね。アレがあれば英語のテストに困らないと思うし」
口を閉ざすミサキ。
「……図星か」
ヤン太が問いつめる。
「……まあ、そういう事もあるよね」
ミサキは苦々しく返事をした。
話題が一区切りして落ち着くと、キングがゲーム以外では珍しく、真剣なまなざしでしゃべり出した。
「hackingとCrackingもヤツらはやってたぜ。俺はこれが一番ヤバいと思う」
「クラッキングって何?」
ミサキがキングにたずねる。
「不法侵入、データー書き換えとかだ。軍のミサイルや基地の乗っ取りとかやってただろ?」
「うん、基地が乗っ取られてたね」
「軍のコンピュータとえいば、securityは最高レベルだぜ。
貧乏な日本の自衛隊とか乗っ取られてもしょうがないが、金をかけているアメリカの軍も乗っ取られた。
これは、ヤツらはその気になれば全てのコンピューターを乗っ取れるって事だ」
「ふーん」
ミサキはよく分かっていない模様。
しょうがないので僕が補足を加える。
「つまりキングの言いたいことは、コンピュータなら何でも乗っ取れるって言いたいんだよ。
役所や銀行とかのデータが除きたい放題。個人情報が筒抜けになるかもしれない」
「ふーん」
まだ事態が分かっていないっぽい。僕はさらに解説を加える。
「身近なもの、たとえばスマフォとかも乗っ取って、盗聴や盗撮もやりたい放題って事だよ。」
「そういう事だ!!」
キングが決めポーズを取りながら答えた。
「え、盗撮とかも……、まずいじゃん」
ミサキが事の重要性にようやく分かったらしい。
「カメラにキャップを付けるか、シールでも貼っておけば?」
ジミ子が具体的な対処法を提案した。たしかにその方法だと盗撮だけは防げそうだ。
「うん、そうするよ。これで大丈夫だね」
シールを貼っただけでは盗聴や、閲覧情報の個人情報は守れないけど……
まあ、本人が納得しているようなので、放っておく事にしよう。
キングとヤン太も面倒くさいのか、この事に関しては突っ込まなかった。
有意義な時間は早く過ぎる。時計をみたらかなり時間が経っていた。
気づけば外は暗くなり始めていて、この日は解散となった。
僕は家にかえり、ぼーっとする。
宇宙人の規制でスマフォでゲームが出来ない、ネットもろくに更新されない。
時間がゆっくりと流れていく。
家に帰ってくつろいでいると、23時を過ぎた頃に酔っ払いが帰ってきた。姉ちゃんだ。




