表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

252/567

第25回目の改善政策

 参議院選挙が近づいてきた、ニュースでは立候補者が決まる前から、政党ごとの議席数を予測している。

 もう少し経つと、選挙カーが走り回りうるさくなりそうだ。


 そんな中、第25回目の改善政策が発表される。



 今日は夏休みなので、家のリビングで改善政策の放送を見る。

 母さんと二人でソファーに座って待っていると、正午の時報が鳴り、いつもの番組がはじまった。


「こんにちは。暑い中、みなさまどうお過ごしでしょうか? 第25回目の改善政策の発表です」


「ヨロシクネー」


「さて、早速ですが、今週の改善政策の内容な何ですか?」


「この国では、少し先に選挙が有るじゃナイ?」


「ええ、ありますね。 ……まさか? 選挙に立候補するのですか!」


 福竹アナウンサーが驚いた顔で宇宙人に話を聞く。


「ワレワレ、プレアデス星人は立候補はしないヨ、だけどコレを作ろうと思うネ」


 そういって用意しておいたテロップを出す。そこには『ロボット党』という文字があった。



 福竹アナウンサーが驚きながら言う。


「政党を作るのですか?」


「ソウネ。ロボットの政党を作るヨ」


 福竹アナウンサーは険しい顔をしながら、詳細を聞き出す。


「それはロボットが議員として立候補するのでしょうか?」 


「ロボットを議員として国会に送り込むヨ」


綱領(こうりょう)。ええと、政党の理念、方針や目的ですね、どういった理由で政党を作られるのでしょうか?」


「綱領は無いネ、目的も無いヨ」


「えっ! 何か目的や実行したい政策があるのでないのですか? 政党を作って直接的に政治に介入するのは、何かしら理由があるんでしょう?」


「全く無いネ」


「……じゃあ、なんでわざわざ政党を作るのですか?」


 宇宙人の意図が分らず、福竹アナウンサーは、珍しく、ちょっとふてくされながら問い詰める。

 確かに、今までの説明を聞くと、遊び半分で政党を作るような感じがする。



「政党を作るのは、民意を反映するためダヨ。説明するより実感した方が早いネ。手が空いている人は、プレアデス・スクリーンを表示してネ」


「「プレアデス・スクリーン・オン」」


 僕と母さんは宇宙人に言われるがままに、画面を表示する。

 すると、いつもの画面に『ロボット政党員【仮】』という、ボタンが追加してあった。



 宇宙人は続けて説明をする。


「その『ロボット政党員【仮】』のボタンは、ロボット議員に投票して、その地区のロボット議員が当選すると表示されるネ。今はテストだから、試しに押してみてヨ」


 ボタンを押してみると、今度はこんな画面が出てくる。


『【サンプル】法案A、テスト用の法案です、あなたは賛成しますか? 「はい」「いいえ」「どちらともいえない」』


「アンケート画面と同じシステムですね。テストなので、適当にボタンを押してみて下さい」


 福竹アナウンサーに言われて、僕は「はい」を選択した。母さんは、なんとなく「いいえ」を押している。



 しばらく時間が過ぎ、テレビ画面に、こんな結果が表示される「はい」が5割、「いいえ」が4割、「どちらともいえない」が1割。


 アンケート結果が出て来て、宇宙人がテロップを出しながら言う。


「分りやすい様に結果をチョット簡略化したケド、このアンケートの結果で、比例区でロボット議員が10人受かった場合は、議会の議決を取る時に『賛成』は5割なので5人、『反対』は4割なので4人、『無投票』や『投票の欠席』は1割なので1人となるヨ」


「なるほど、わかりました。アンケートの結果の比率通りに議員が決議をする訳ですね。これは比例区の例ですが、小選挙区の場合ははどうなります?」


「小選挙区の場合は、その地域の最も多かった意見に投票するヨ。『はい』が多ければ『賛成』に、『いいえ』が多ければ『反対』に、『どちらでもない』『無投票』が多かったら『投票を棄権』するネ」


「これは直接民主主義にかなり近いシステムですね」


「ソウネ。民意を出来る限り誠実に反映するヨ」


 宇宙人が『政党の方針が無い』と言った理由が、この説明を受けてよく分る。

 ロボット政党に宇宙人の意思はまるで無く、投票者の考えを尊重するシステムのようだ。



 ロボット政党の概要が分ると、福竹アナウンサーが矢継ぎ早に質問を浴びせかける。


「立候補者はどのくらい立てるのですか?」


「選挙区に必ず一人は立てるネ。候補者として必ず選べるように配置するヨ」


「そういえば、議員年金とかはどうなります?」


「年金だけでは無く、報酬は受け取らないネ。無料で働くヨ。政党補助金も受け取らないネ」


「国政だけですか? 県政や市議、町議、村議会などにも参入しますか?」


「参入するネ。選択肢の一つとして、必ず有るようにするネ」


「『ロボット政党』は、日本だけで行なわれるのですか?」


「世界中で実行する予定ネ」



 熱心に質問をしていると、時間が来たようだ。


「アンケートの時間になってしまいました。みなさまご協力をお願いします」


 いつものアンケート画面が現われ、僕は「今週の政策は『良かった』」「宇宙人を『支持できる』」に投票する。



 しばらくすると集計結果が表示される。


『1.今週の政策はどうでしたか?


   よかった 84%

   悪かった 16%


 2.プレアデス星団の宇宙人を支持していますか?


   支持する 61%

   支持できない 39%』



 アンケートの結果を見て、福竹アナウンサーが感想を言う。


「今週の政策は好評のようですね。ロボット政党に関しては、他にも色々と質問があったのですが、時間が足りませんでした」


「ソレハ、選挙の番組で答える事にするヨ」


「そうですね。それでは、また来週会いましょう」


「マタネー」


 こうして番組が終わる。

 僕はまだ選挙権が無いが、投票権が存在したら、この政党に入れるかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ