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勉強合宿 2

 土曜の授業を終えると、僕らは急いで帰宅をする。

 僕とミサキは期末試験に備えて、火星の学習収容所がくしゅうしゅうようじょに行くためだ。


 家に帰ると、ラフな格好に着替え、教科書とノートなどの勉強道具を鞄に詰め込む。さらに前日に用意しておいた着替えの一式を持って、ミサキの家へと向う。


 チャイムを鳴らして中に入ると、ミサキが慌ただしいく支度をしていた。


「お母さん、あの下着はない? 紫の?」


「あの高そうなヤツ? 知らないわよ」


「ええっ、どうしよう。どの下着にしようかしら?」



 ミサキはどうでも良い事で混乱していた。僕が話しに割って入る。


「下着とかどれでもいいから。まずは教科書とノートを持って」


「ええ、うん。国語、英語、社会、理科…… あっ、数学の教科書、学校に忘れてきた」


「見せてあげるから。教科書とノートをもって。さあ、いくよ」


「あっ、うん。じゃあ、お母さん行ってきます」


 家を出て行くときに、ミサキのおばさんから声をかけられる。


「ツカサくんよろしくね~」


「はい、わかりました。必ず勉強をさせて来ます」


 慌ただしく僕らは家を飛び出した。



 僕らは駅前の姉ちゃんの会社へと向う。


 小走りで会社にたどり着くと、入り口にロボットが待ち構えていた。


「ツカサ様、ミサキ様、コチラに用意してありマス」


 すぐに会社の中に入ると、会議室へと通される。


 僕とミサキが部屋に入ると、いきなり体がフワリと浮いた。


「ソレデハ、行ってらっしゃいマセ」


 空中に放り出され、天井のワープゲートを潜ると、そこは濃い群青色の空と赤茶けた大地が広がる火星だった。

 何も説明を受けず、僕らは学習収容所へと送り込まれた。



 火星についた僕らは、まず周りを見渡してみる。

 学習収容所はニュースなどで何度か見たが、それと同じ光景が広がっていた。


 大地の上に、5メートル間隔で点在する、真っ白なベッドと学習机。

 所々にあるトイレと風呂などの水場の施設。

 水場の近くには、長机が並んで居て、ホワイトボードがあるので、あの場所は教室のような場所なのかもしれない。


 以前に見たテレビと違うのは、人の少なさだ。

 テレビの中では人が埋め尽くすようにたくさん居たが、今はほとんど居ない。

 おそらくアホ毛のテストを合格して、地球へと帰って行ったのだろう。



 周りをキョロキョロと眺めていると、ロボットが一体やって来た。


「ツカサ様とミサキ様ですネ。コチラに部屋を用意しておりマス」


 ロボットの後について僕らが進むと、大きなベッドの前で止まり、説明を開始する。


「コチラがツカサ様とミサキ様のベッドになりマス」


 大きなベッドの前につれてこられた。ダブルサイズかそれ以上の大きさがありそうだ。

 ベッドが大きい分には構わないが、困った事にベッド一つしかない。



 僕はロボットに質問する。


「ベッドは一つだけなの?」


「ハイ、ファミリー用の部屋を用意しろと、アヤカ様から伺っております」


 うーんこれは困った。いくら家族同然の関係だとしても、女性と元男性が一緒のベッドで寝るわけにはいかないだろう。


「別々のベッドにしてくれない?」


 僕がそう聞くと、ロボットは首を横に振る。


「一つのベッドの割り当てしか許されておりまセン。申し訳ありませんが、このベッドのみでお願いしマス」


 困った。これだけベッドが空いているのに、他のベッドは用意できないと言う。

 このロボットはあまり応用がきかないらしい。



「とりあえず、姉ちゃんに連絡しようかな」


 そういって携帯を取り出すが、圏外だった。

 しまった。ミサキに勉強を集中させる為、携帯を通じなくするように頼んでおいたのが裏目に出た。


「うーんどうしようか? しょうがない、僕は椅子で寝るよ」


 すると、ミサキが両手をブンブンと振って否定をする。


「だ、大丈夫。私は大丈夫よ。同性同士だし、これだけ広いベッドですもの。大丈夫」


 ミサキはOKを出したが、僕は念の為、確認をする。


「本当? 無理してない?」


「大丈夫だって。むしろ望むところよ!」


「望むところって…… 本当はイヤなんじゃ……」


「いや、何でもないから。ホント、大丈夫だから」


「そ、そう。じゃあベッドの端を使わせてもらうよ」



 話がまとまると、荷物を置いて、これからどうやって勉強をするか考える。


 事前に聞いていた話だと、ロボットの家庭教師が無料で使えるらしいので、使わない手はないだろう。


 おそらく集中力のある最初のうちに数学をやっておいた方が良い。

 その次は社会か英語あたりだろうか。集中力が途切れたら、ミサキの得意な国語を挟んで……


 そんな事を考えて居ると、となりから「ぐぐぅ~」と、腹の虫の鳴る音が聞こえた。


「先に食事にしない? 以前食べた火星の食事って、信じられないくらい美味しかったわよね。今日も楽しみだわ」


 ミサキが満面の笑みで言う。


 ここの食事はマズイって事は、事前に言っておいたはずだが……

 あっ、そういえば、説明している時、ミサキはトイレに行っていて聞いていなかった……


「食事を持って来てくれない? 大盛りでね」


 ミサキがニコニコしながらロボットに指示を出す。


 これから食事が始まろうとしているが、これは大丈夫だろうか……

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