テスト前の混沌 4
18回目の改善政策を受けて2日目、テストの日まであと3日。
3日後にはテストが行なわれるので、準備期間は今日と明日しかない。
朝に届いた新聞は、全紙面の3分の2程は練習問題が書かれていた。
ちなみに発行社毎に問題が違うらしく、多くの人は普段は買わない種類の新聞を買い集め、この日が最も新聞の売れた日となったらしい。
僕らが学校へと行くと、朝から特別授業が始まる。
小学生と中学生の国語と算数と社会の小テストをぶっ続けでやらされた。
この日は体育や美術の授業も関係ない。ただただ小テストをこなしていく。
それでも時間が足りないらしく、小テストが間違っても、先生はいちいち解説をしてくれない。ただ、小テストの右下にはQRコードがあり、それをスマフォで読み取ると詳しい解説のページへと誘導してくれる。分からなかった部分は後で各自が復習できるようになっていた。
そして昼休みが過ぎ、午後の授業が終わり、ようやく学校から解放される。
単純な問題を繰り返しやらされるのは気分が滅入る。いつもの倍は疲れた気がする。
だがテストまでの期限は短い。僕らは残された時間を有効的に使うため、放課後に僕たちは公民館で今日の小テストの復習をする事にした。
公民館に着くと、ちょっと人混みが凄い。
おそらくこの公民館で最大の利用人数だと思うが、ありったけのテーブルと椅子を出してきているので、少し空席があった。僕らはその一角を使わせてもらう。
テーブルの上に、今日こなしたプリントを出す。
厚さは3~4cmはあるだろうか、教科ごとに大雑把に並べると、個人個人で復習を始める。
小テストは10問で10点満点だ。小学生の低学年のテストはほぼ満点で、高学年のものに関しては、所々間違いがあり、平均すると8~9点ぐらいだろうか。僕らは間違った部分をチェックし、同じ間違いをしないようにノートに書いて復習をする。
みんな黙々と復習をするのだが、どうもミサキの様子がおかしい。プリントを鞄から出そうともしない。
「ミサキ、真面目にやりなよ」
ジミ子が割と真剣に注意する。
「ああ、うん。私は家でやるから」
適当な言い訳で逃げようとするが、僕はそれを逃さない。
「小テストの結果が酷くても誰も何も言わないから、とりあえず出して見なよ」
すると、おそるおそる小テストの束を出してきた。
そこには4点とか3点などの悲惨な点数が出てくる。
ヤン太が親身になって言う。
「これは間違った部分を復習するの大変だな……」
「算数が特にひどいぜ…… 分数の計算が全滅かもな……」
キングが数学のテストにザッと目を通して状況を把握する。
するとミサキが僕らにスマフォを見せながらこう言った。
「ほら、見て。ここに『分数の出来ない大学生』って記事があるの、大学生でも計算できないんだからしょうがないんじゃないかな」
するとジミ子に突っ込まれる。
「そんな事を調べてる暇があるなら勉強しなさい」
「……はい」
この後、みんなでミサキの勉強を見直した。
途中で何度も弱音を吐く。そして、終いにはこんなことを言い始めた。
「私、宇宙人に頭をイジってもらって天才になる。そうすれば成績がよくなるわ」
……これはダメかもしれない。
この日はミサキをなんとか慰めながら、夜の7時くらいまで公民館で勉強をする。
そしてあまりにボロボロになったので、そこで勉強会は終わりにした。
家に帰ると母さんがキッチンの机で新聞の模擬問題を解いていた。
後ろから遠目で見た所、7割か8割以上は正解している。こちらはミサキと違い安心できそうだ。
「ただいま、母さん」
僕が声をかけると、ようやく気がつく。
「あら、帰って来たの。晩ご飯は悪いけどカップラーメンかインスタントのカレーよ」
「全然構わないよ、勉強の方はどう?」
「ここら辺がちょっと分からないから、後で教えてね」
そう言って分数の計算の問題を指さした。
どうやら大人になるにつれ、分数の計算が出来なくなるらしい。
僕はカップラーメンにお湯を注ぐと、母さんにさっそく分数の計算を教える。
ある程度、理解してもらい。ラーメンを啜っていると、問題の核心を知る人物が帰ってきた。
姉ちゃんの帰宅である。




