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開戦一日目 2

 始めに無人機での攻撃を仕掛ける予定だったが、ハッキングされて乗っ取られてしまう。

 次にミサイルを放つが、これもすべてハッキングされ、モノリスに一つも到達できなかった。


 誘導装置は使えないようだ、この状態で人類は勝てるのだろうか。



 テレビを見ていると、速報が入る。

 世界各国の状況が流れてくるのだが、どこも同じような状況らしい。

 アメリカではミサイルが500発以上を打ち込んだのだが、一つも当たらなかったようだ。

 コンピューター制御の機械による攻撃は、もう無理だろう。


 そう考えていると、現場から中継が入った。

 カメラは日本の最新鋭戦闘機を映し出していた。


「現場の福竹(ふくたけ)です。ただいまから戦闘機による攻撃を掛けます。

 まずは様子見で3機ほどが攻撃するようです。

 みなさん、かれらパイロットの無事と攻撃の成功を祈りましょう」


 僕はテレビにクギ付けになる。


 テレビの中の戦闘機はモノリスに近づき、周りを旋回し始める。

 はじめは慎重に攻撃ポイントを見定めているのかと思ったのだが、2分、3分経っても攻撃が始まらない。


 やがて戦闘機はあきらめたようで、方向を変え、退避していく。どうやら引き上げるようだ。


「なんだよ~、ちゃんと攻撃しろよ~。ガツンとドカーンといけよ~」


 姉ちゃんが悪態をつく。

 まあ、その気持ちは分からなくは無い。人類が攻撃開始から何ひとつとして攻撃が成功して居ないのだから。


「こりゃ駄目かもな」

 父さんがポツリとつぶやいた。


「そんな、あきらめるのはまだ早いよ。始まったばかりなんだから。

 これに負けたら人類は宇宙人の奴隷になるかもしれないんだよ」


 僕は、悲痛な叫びを上げる。宇宙人に支配されるなんて絶対に受け入れられない。


「弟ちゃん、奴隷という状況をあまり悲観しないでくれたまえ。

 今だって父さんは奴隷のようなものなのだよ」


 姉ちゃんが僕にちょっかいを掛けてきた。


「それはいくらなんでも酷いんじゃ無いかな」


 僕は反論をする。父さんは確かに残業が多いが、『奴隷』とは言い過ぎだ、かわいそうすぎる。


「ところで今、父さんはノートパソコンをイジってるよね?」


「うん、そうだね。おそらくネットから情報を仕入れてるんでしょ?」


「違うよ、会社の仕事をやっているんだよ。

 社会人は今だって会社の奴隷のようなものだよ」


 無職の姉ちゃんがドヤ顔で社会人とか仕事を語る。えらそうなその表情は、むかつくというしかない。

 一方で父さんの方を見ると、視線を逸らした。

 どうやら、本当にこの状況でも仕事をやっているっぽい。どうなってるんだ、この国の社会情勢は。



 僕が頭を抱えていると、テレビから中継が入った。


「こちら前線基地です。どうやら戦闘機の火器制御装置も乗っ取られ、攻撃が開始できないようです」


 ……こっちは、どうすりゃいいんだろう。

 何も思いつかない僕はスマフォで巨大掲示板を見た。


「これ、デジタル制御は全滅じゃねーの?」

「手動でアナログな兵器を使うしかないだろ」

「どうなるんだ?」

「もう第二次世界大戦とか、手動の兵器を持ち出すしかないんじゃないか?」

「そんな骨董品が、どのくらい有るんだよ。ほとんど残ってないだろ」


 そんな会話がされていた。

 たしかに、もう大昔の大砲とかで攻撃するしかないかもしれない。そうなると人類に勝機は無いように思えてしまう……



 スマフォを見ていたら、またテレビが急に騒がしくなり、そちらを見る。


「こちら前線基地です。ただいまエイリアンから何らかの攻撃を受けているようです。ただ、安心して下さい。物理的な攻撃ではありません。ネットワークからの侵入だそうです」


 後ろの方から、


「ネットワークを遮断しろ!」

「急にはできません」

「ケーブルを切断してでも何でもいい、すぐにやれ。ここが乗っ取られたら終わりだぞ」


 悲鳴に似た怒鳴り声が聞こえてくる。

 その声を受け、自衛隊の隊員がケーブルを切断しようと、大型のニッパーを持ち出した。


 回線さえ遮断すれば平気だと思ったのだが、遅かった。

 後ろのモニターが全部、例の宇宙人の顔になる。

 基地のコンピューターが乗っ取られてしまったようだ。


「終わった……」


 肩を大きく落とす、自衛隊の隊長。


「隊長……」


 ニッパーを取り出した隊員も呆然(ぼうぜん)として立ち尽くす。


 画面の中の宇宙人は軽快にしゃべり出した。


「ゴメンゴメン、ちょっとやりすぎたヨ。

 まさかこんなに簡単にシステム乗っ取れるとは思わなかったのでネ。

 セキュリティーがあまりにアレだから、調子に乗って全部乗っ取らせてもらっちゃっタ。

 でも、これではゲームにならないので、明日からはハッキングなど、乗っ取りのたぐいは行わないヨ。

 君たちは存分に攻撃してくれたまエ」


 それだけ言い残すと基地のモニターは元に戻った。


「……システムをチェックし直せ、このまま作戦を続ける」


 自衛隊の隊長は、なんとも複雑な表情をしていた。


 人類のコンピューターシステムは彼ら宇宙人にとっては稚拙(ちせつ)なのだろう。

 なんだか馬鹿にされているようだが、もしかしたらこれで宇宙人は油断したかもしれない。

 乗っ取りをしないと宣言させた事は、これからは有利に働くだろう。



 こうして、まともな攻撃ができずに、一日目が終わってしまった。

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