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第16回目の改善政策 1

 第16回目の改善政策の発表が、いつも通り『明石市立天文科学館』から放送される。


「こんにちは、第16回目を迎えました改善政策の発表です」


「今日もヨロシクネ」


 挨拶がおわると、福竹アナウンサーがすぐに宇宙人に質問をぶつける。


「さて、今週は何をするのでしょうか?」


 その質問に宇宙人がもったいぶって答えた。


「キミは『失われた王国』というモノを知っているカネ?」


「『失われた王国』ですか? ええと、あまり歴史には詳しくないもので……」


 福竹アナウンサーは照れ笑いを浮かべながら、はぐらかす。

 すると宇宙人がヒントを与えた。


「よくテレビでやっていたヨ、有名なので知っていると思うヨ」


「えっテレビですか?」


 福竹アナウンサーは驚いた表情を見せる。

 テレビ番組でやっているというと、なんだろう?


「今週の政策の内容は、『失われた王国』の再建をしようと思っているヨ」


 なんと、その国家の再建をするらしい。


 僕はいくつか有名な国を思い浮かべる。

 テレビで放送されていたという事なので、かなり有名な国である事は確かだろう。


 歴史の教科書に出てくるような国名がいくつか思い浮かんだのだが、宇宙人の姿を見てしまうと、どうしても『アトランティス』とか『ムー大陸』とか『レムリア大陸』とか、いかがわしいオカルトっぽい名前しか出てこなくなってしまった。



「ええと再建ですか? 建国では無くて?」


 福竹アナウンサーが宇宙人に確認をする。


「再建ネ、思い当たる国があるんじゃ無いカナ?」


「いや、ちょっと待って下さい…… 思い当たるのは『アトランティス』とかですかね。いや、あれは都市か大陸の名前でしたっけ?」


 答えに困った福竹アナウンサーは、宇宙人の顔をみながら、そう答える。

 やはりあの姿をみてしまうと、そういった答えしか思い浮かばなくなるようだ。



「ハズレだヨ、そもそもアトランティスって国はちゃんと存在していたのカネ?」


 宇宙人が福竹アナウンサーを問い詰める、だが、そんなオカルトめいた答えを知っている人物は、地球上には存在しないだろう。


「いやぁ、どうなんでしょうね。ちゃんと見つかってないですからね」


「ワレワレが再建しようとしている王国は、キチンと存在していたモノだヨ」


「そうですよね、すいません」


「しっかりしてネ。『失われた王国』、ソレハ、これネ」


 そう言って宇宙人は手に持っていたテロップを力強く出した、そこには『動物ノ王国』と書いてある。


「『動物ノ王国』ですか? 聞いたことがありません。そんな国ありましたっけ?」


「あるネ、テレビでよくやってたでしょ。北海道にあるヨ」


「ええと、もしかして『動物ノ王国』とは、別名は『ムツロゴウ王国』の事でしょうか……」


「ソウネ、ヤッパリ知っているじゃナイ」


 福竹アナウンサーは大きく頭を抱えた。


『ムツロゴウ王国』という番組は、子供の頃に何度か見たことがある。

 動物好きのおじいちゃんが、熊やライオンなどの動物を、なでまわすという内容だった気がする。


 あれは単なるテレビ番組のはずだったが、宇宙人は何か勘違いをしているようだった。

 福竹アナウンサーが宇宙人になんとか説明をしようとする。


「あれはちゃんとした王国では無いです」


「それネ、この国の政府の役人も同じ事を言っていたネ」


「まあ、そう言うと思います」


「北海道の一部を国家として認めて貰うつもりだったんだけどネ、民主主義国家の中に王国があるとマズイらしいネ。絶対に認めなかったヨ」


「ええ、まあそうでしょう。そうだと思います」


 あきれながらも相づちを打つ福竹アナウンサー。

 なんかもう『どうにでもなれ』といった、投げやりな雰囲気が漂ってきた。



 宇宙人はそんな空気を全く読まずに、こんな宣言をする。


「ソコデ、ワレワレが新たに月で再建をするネ」


「そんな場所に作るんですか?」


「ソウネ、月面に『動物ノ王国』を再建するヨ」


 北海道ではなく、宇宙人は意外な場所を言ってきた。

 だが、まあ、彼らの技術なら問題はないだろう。彼らの手に掛かれば、月面にだって快適な住処が出来るはずだ。


 ただ、建国するには、もう一つ、別の問題がある。

 その問題に福竹アナウンサーも気がついたようだ、さっそく質問を投げかける。


「ええと、月面に建国する事は良いと思うんですが、移住する住人はいるんでしょうか?」


 宇宙人は、さも当然のように答えた。


「『動物ノ王国』なんだカラ、住民は動物に決まってるじゃナイ」


 福竹アナウンサーは再び頭を抱えた。


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