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キオクノハナ

作者: 壱岐



むかしむかし、記憶の花と呼ばれる花が咲いていました。

その花は、摘み取った者の記憶を奪っていしまうと言うとてもとても危険なものでした。

奪われた記憶がどこへ行ってしまうのかは分かりません、なぜなら記憶を奪われた本人はその自覚が無いからです。

しかし、そんな危険な花を求める人が後を絶えません。

珍しいもの見たさだったり、高値で売ったりしたいと考える人がいるからです。

とある小さな村からやってきた男、タツヒコもまた記憶の花を求めて旅をしていました。

タツヒコは、そういった危険があることを知りながらもがむしゃらに花を探しました。

それには、ある理由がありました。

タツヒコには、ある病気を患っていた妹がいました。

妹の病気は治り、何も問題が無いように見えましたが、なんと妹は病気の後遺症で記憶が無くなってしまったのです。

タツヒコはとても悲しみました、愛する妹が自分や家族のことを覚えていないと言うことにとても悲しみました。

ある日、タツヒコは記憶の花の存在を知ります。

タツヒコは考えました。

記憶を奪うのならば、記憶を戻す作用もあるのでは?と。

そうした一縷(いちる)の望みを持って、タツヒコは花を探すたびに出ました。

雪が降る山々を越えて、嵐の吹き荒れる大地をあるいて、ある時は小さな村で休みながらも諦めることなく探し続けました。

そうした努力の末もあり、ついにタツヒコは記憶の花を見つけました。

タツヒコは大いに喜んで、記憶の花を摘み取りました。

しかし、次の瞬間タツヒコは倒れてしまいます。


次に目が覚めたときには、タツヒコは何故このような場所にいるのか分かっていませんでした。

それどころか、自分が誰で、家族が誰で、故郷は何処で、など色々な記憶がなくなっていたのです。

タツヒコは、頭を掻きながら足元に落ちていた不思議な花を持ってアテもなく歩き出しました。

何日歩いたか分からなくなっていたある日、一つの小さな村を見つけました。

ボロボロになったタツヒコの姿を見た村人は、血相を変えて駆け寄りました。


「お兄さん!帰ってきたのかい!?」


村人の言っている意味がよく分からなかったタツヒコはそのまま力なく倒れてしまいます。

目が覚めると、助けてくれた村人が隣にいました。


「助けてくれてありがとう。

でも、私は自分が誰なのかがわからない。」


タツヒコはそう村人に言うと村人はこういいました。


「私から何か言えることはない。

早く故郷へ帰って安心させなさい。」


村人の言葉にタツヒコは首をかしげた。

よく分からないことを言われたと思いながらも、タツヒコはまたアテもない旅をするために村を出ました。

ある時嵐が吹き荒れる大地を歩き、またある時は雪が降る山々を越えていきました。

初めての経験ばかりだというのになぜかタツヒコはしっかりと乗り越えることができました。

そうして歩き続けること数日、また小さな村を見つけました。

そこの村人はタツヒコの顔を見るなり大きな声をあげました。


「タツヒコが帰ってきたぞ!!!」


村人はとても嬉しそうにそう伝えました。

タツヒコはなんのことだかさっぱり分かりませんでした。

しかし、そんなことはお構い無しに村人はタツヒコをある場所へと連れて行きます。

連れて行かれた先には、女の子が寝床の上にいました。

タツヒコはその少女を見たとたん、なぜだか涙があふれてきました。

ふと、タツヒコは自分が持っていた不思議な花のことを思い出します。

拾った日からかなりの時間が経っているというのにその花はきれいなままでした。

タツヒコは、その少女に自分が持っていた不思議な花を手渡します。

すると、少女も涙を流し始めました。


「おにいちゃん?」


涙を流しながら、タツヒコは答えました。


「そうだよ。お前のおにいちゃんだよ」


そういって、二人は抱きしめあいました。

少女の手に持っていた記憶の花は、そっと枯れていきました。


おしまい。

息抜きに書いてみました。

色々想像しながら読んでいただけたならば幸いです。

元ネタ的なものはありませんが、似たようなお話があればお教えください。

今後もこういう小話を不定期で投稿する予定ですのでよろしくお願いします。

連載中の拙作「死神と墓守」も是非読んでみてください。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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