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間章 ~いづれの御時にか~
主人公はどこにでもいる、しがない青年だった。
とある夏の日のことだ。
親しい仲間と共に故郷の島に遊びに来ていた青年は、沖に流されていたボートを発見する。
ボートには一人の少女、「ユリ」が倒れていた。
介抱する青年。
命を取り留めた少女、ユリ。
ユリは岬の上の洋館に住む、地方華族の娘だった。
自然と惹かれ合った二人は眩しい夏の日差しの中、印象的な時間を過ごす。
そのゆっくりとした時間の終わりに、身分を超えた、その先まで考え出す二人――。
しかし。
出会いがあれば別れがあった。
そして、それは突然に――。
帝国軍の秘密兵器である試作人型汎用兵器、バスタードハタモトが現れたのだ。
バスタードハタモトから聞こえてくる声。
光源氏。
ユリの館に数日前に現れた、女たらしの華族のドラ息子。
有形無形に脅迫を繰り返す彼の要求に、ついにユリは心折れた。
青年に危害を加える、その一言が彼女から闘志を奪い去っていたのだ。
そして、それっきりユリは青年の前から姿を消してしまった――。