エピローグ
●エピローグ
皇紀弐千六百八拾年 拾壱月 五日 木曜日
国立大江戸特別芸能高等専門学校 メインストリート
銀杏の葉も随分と落ちた。琉璃夏と二人、メインストリートを校門へと歩いてゆく。
「元気を出さないか」
「うん」
琉璃夏と二人、銀杏並木を歩く。昨日までは隣に八千代がいた。そう思うと、なんだか切ない。
「はぁ、貴様はあいつを好きだったのだな。――恋、か?」
「うん」
オレの返事に、琉璃夏が息をのむ声が聞こえた。
「そう正直に答えられてもな」
「うん」
琉璃夏のため息が聞こえる。
「元気を出せ。私も無理という言葉は嫌いだが、いくらなんでも限度がある。相手は公方様だぞ。今回の事こそ無理だったのだ。わかるだろう? ――食事にでも行くか? 例のゲームの完成祝いだ」
「うん」
「そうか!」
琉璃夏の努めて明るい声が聞こえた。気を使ってくれているらしい。――つまりは、それほどまでに重症だと言うことだ。
未だ『大高専祭』の文字が躍る校門。片付けは後手に回っているようだ。
「カナタ――あれ」
琉璃夏の声がかすれていた。急に琉璃夏が立ち止まり、勢い余ったオレは琉璃夏の腰にダイブする。
しまった!?
る、琉璃夏!?
ごめんよ!?
ちょっと今のは足が滑っただけなんだ───。
――え? いつまで待っても、鉄拳が飛んでこない。見上げると、琉璃夏は校門の直ぐ脇を凝視していた。
さて、その視線の先には――。
「やっと校門から出て来たな? よし捕まえたぞ。土岐カナタ君。――さぁ行こうか」
どこかで聞いたような声。どこかで聞いたような台詞。それもごく最近に。
「なにをしている? 早く行くぞ、カナタ」
まただ。またも、あり得ない声が聞こえる。そして、ここに居るはずのない姿があった。
「君は――」
思わず聞いていた。目の前の、踝まではあろうかという黒髪の超ロングヘアの子に。
「この自分の姿を忘れたとは言わせぬ。なにせ、そなたとは千代の絆で結ばれているのだからな!」
『コイハル~恋は遥かに綺羅星のごとく~』 END




