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チョコレートとモナカ

皇紀弐千六百八拾年 拾月 拾九日 月曜日

国立大江戸特別芸能高等専門学校 文芸部部室


 激昂した琉璃夏(るりか)がオレの胸倉を掴み、ほんの鼻先で怒声を上げ続けて早十分が経過しようとしていた。




「貴様、カナタ!


 ───アレは嘘だったのか、貴様は昨日シナリオが完成したと言っていたであろうが!

 それがどういうことだ、さらに三日も待ってくれだと!?

 貴様それでも男か!

 嘘を言うとはいい度胸だ。

 高専健児の風上にも置けぬ奴、男に二言は無いんだぞ!!」




 ループだ。先ほどから話題がループしている。




「だから、より良いものにするために後三日だけ。頼むよ。

 ……父さんにアドバイス貰ったんだ。作品をより良いものにするためなんだ」

「黙れ! 寝言は聞き飽きた! 

 貴様の根性のなさ、甲斐性のなさ、息を吐くように嘘を吐くその態度! 

 断じて許しがたい暴挙と言えよう! この落とし前は───」


「モナカアイス。大正製菓のモナカアイスでどう?」

「……モナカ……アイス?」


「うん、大正製菓のチョコモナカ」

「チョ、チョコだと……?」




 琉璃夏(るりか)がオレから視線を外した。次の瞬間大きく舌打ちしたかと思うとオレから手を離す。思わず床にへたり込むオレだった。はぁ、助かったかも。




「良いかクソ虫。貴様のその殊勝な心がけに免じて見逃してやろう。ただし───次はないと思え!? 良いな!?」


「全くオレがなにをしたって言うんだよ」

「『オレ』!?」




 琉璃夏がオレ……い、いや、ボクをまた睨むんだ。




「いや、ボクは……なんでもない、なんでもないんだ」




 ◇ ◇ ◇




 ボクが必死でキーボードを叩いているとき、あいつらはボクが売店に買いに行って来た大正製菓のチョコモナカアイスを食べていた。




「秋のこの時期に食べるアイスもなかなか良いものだな、琉璃夏」

「そうだろう。このチョコレートのパリパリ感がなんともいえないとは思わないか?」


「ああ。これは美味い。美味しいな、琉璃夏。癖になりそうだ。───そなたに感謝を」

「あはは、この程度どうという事もない」


「こんな美味いものがこの世にあったとは。初めて食べたぞ」

「そうだったのか、八千代(やちよ)


「うん」

「あはは」


「「あはははは」」


 はぁ。

 君たちが美味しそうに食べてくれて、ボクは本当に嬉しいよ。




 ───ホントだよ?




 それより八千代(やちよ)、ボクの指示したデジ絵、描いてくれてるよね?

 今スキャナで取り込んでいるのがそうだとは思うけど……。

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