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三輪先輩

「おぃーす! 大川、いるー? ――あっ、いたいた!」


 栗毛色の髪をショートにした背の高い女子生徒が、大川部長を見つけてこちらにやってきた。


 美人と言っても過言ではない容姿だけど、話し方や膝上20センチほどのミニスカート、ブラウスを第二ボタンまで開けリボンタイを先っちょだけ結んだくだけた姿が、僕にはちょっと品がなくスレた印象を受けた。実際、彼女のロウソクも世慣れしすぎて性格が悪くなる人に見られる灰色のロウソクになっている。でも、ロウソク自体の形は普通の円筒形なので、根っこの部分はそれほど悪い子ではないのかもしれない。


「あれ? 三輪じゃないか。ずいぶんご無沙汰だね、もう美術部を辞めたと思ってたよ」


 そう言って、大川部長が僕らに『部員の3年の三輪茜だよ』と教えてくれた。


「まぁ、正式に退部届を出したわけじゃないけど、辞めたというのはほとんど正解だね。あたしも受験勉強で忙しくて部活どころじゃないしね。――ん? 君たちが新入部員?」


 急に僕らの方を向いて尋ねてきたので一応自己紹介をした。


「はい、1年A組の山崎晶です」


「同じく1年A組の青山ゆかりです」


「3年の三輪よ、よろしくね。と言っても、部活にはもう出てこないからあんまり関係ないんだけどね」


 2年の陰険先輩部員とは違い、意外と明るくフレンドリーに挨拶を交わしてくれた。


「ところで、今日は何の用で美術部にやってきたんだい?」


 三輪先輩は、大川部長の言葉にすぐには答えず、周囲を見回してから、


「今日は、朝霧は来ていないの?」


 と、三輪先輩が尋ね返してきた。


「朝霧君は、仕事の関係で夏休み中の部活には来れないって言っていたよ。――もしかして、朝霧君に用があったのかい?」


「いやぁ…… 朝霧に用っていうか……朝霧に会いたかったわけじゃなくて……」


 三輪先輩の奥歯に物が挟まったような言い方でピンときたのか、


「三輪、朝霧君のことで相談しにきたんだろう」


 大川部長がハッキリ言った。


「バレた……か……。ちょっと込み入った話しだから、大川と二人で話したいと思ったんだけど……」


 と、言いにくそうに、三輪先輩は僕らのことをチラリと見た。僕らがいると話しづらい内容らしい。


 僕は、気を利かせてその場から退席しようと思ったけど、ゆかりちゃんは逆に三輪先輩の言葉に食いついていた。


「朝霧先輩のことで相談って何ですか!? 朝霧先輩と何かあったんですか? 三輪先輩、良ければ教えてください!」


 詰め寄るゆかりちゃんに、困惑顔の三輪先輩が目で大川部長に助けを求めている。


「青山さんは、朝霧君と同じ中学の美術部の後輩なんだ。朝霧君に憧れてこの高校を選んだくらい、朝霧君を尊敬してるんだよ。それに朝霧君の話って、金井先生とのことだろ? 二人とも知ってるからここで話しても平気だよ」


 大川部長のその言葉に三輪先輩は少し迷っていたようだけど、結局、僕らがいる前で話し始めた。

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