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再会3

 クラスメートからの強烈な視線を受け流しつつ、僕とゆかりちゃんはお互いの近況を話し合った。


 ゆかりちゃんは、医療ミスが原因で病院を去った後、都内の大学病院へ転院したそうだ。その病院でゆかりちゃんは治療を続け、ゆかりちゃんの両親は治療費を稼ぐための仕事に追われながらも、医療ミスを犯した三雲とその病院を相手取り裁判を起こした。


 最終的には示談が成立して、多額の示談金が入って治療費の心配はしなくてもよくなったみたいだけど、ゆかりちゃんの両親は、子供の病気の心配や多忙な仕事、さらに裁判のストレスが加わってお互い気持にゆとりがなくなってきちゃって、ゆかりちゃんの病気が完治した中学2年生の夏に離婚したそうだ。


 ゆかりちゃんはお母さんに引き取られ、今は、お母さんの実家でお母さんと祖父母の4人で仲良く生活しているという。


 この高校は、仲が良かった中学の先輩が入学して誘われたからという単純な理由で選んだそうだ。それでも、すんなり合格しちゃうから、ゆかりちゃんは凄い。


 僕も家から近いという単純な理由で選んだ人間だけど、それは足のケガという身体的な問題もあって決めたのに、当時の中学の担任は、『山崎、先生は正直に言うぞ。お前の学力じゃこの高校は絶対に無理だ』とハッキリ言われた。


 『先生、正直すぎるだろ!』と思ったけど、逆に担任のその言葉に発奮して、死に物狂いで猛勉強した。机に齧り付いて意地でも合格してやるんだと勢い込んで受験に臨んだ。その甲斐あって、ギリッギリのギリの成績でなんとか合格できた。おかげでゆかりちゃんと再会するという幸運にも恵まれた。


(神社でお賽銭を奮発して正解だったよ。受験の神様ありがとう!)


 僕は、薔薇色の高校生活を確信して、思わずほくそ笑んだ。


「そうだ! 晶くん、もう入る部活は決まってる? 運動部は……無理みたいだから、文化部だよね?」


 ゆかりちゃんが僕の足をチラリと見て言った。


「うん。足がこんなだから運動部は無理だね。文化部から選びたいけど、中学の時は病院通いで忙しくって部活に入ったことがないんだ。部活自体よくわからないんだけど、何かおすすめの部活はあるの?」


 ゆかりちゃんは待ってましたと言わんばかりに、僕の言葉に飛びついた。


「そうなの! いい部活があるのよ! 正直、私はその部活に入るためにこの高校を選んだといっても過言ではないくらい! 晶くんにも紹介してあげる。――善は急げよ! さっそく部活を見にいきましょう!」


 そう言うと、ゆかりちゃんは僕の腕を取り、ぐいぐい引っ張って部活の場所へと向かった。


(積極的なところは、昔っから変わらないんだなぁ)


 先を歩くゆかりちゃんにされるがままになっている僕は、取り合えず聞いてみた。


「それで、ゆかりちゃんが入部したい部活って何なの?」


 ゆかりちゃんは首だけ僕の方へ回し、ニカッて笑ってこう答えた。


「行ってからのお楽しみ~♪」


 予想通りの答えが返ってきた。

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