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恋愛相談 その4

「へぇ、意外だったなぁ。佐々木が佐藤さんのことが好きだったなんて……」 


 放課後、図書室にやってきた渡嘉敷さんと三浦さんに、昨日の佐々木とのやりとりを教えてあげた。


 三浦さんは、『佐藤さんに負けた』とメチャクチャ悔しがってたけど、渡嘉敷さんは意外と落ち着いていた。


「わたしは、佐々木君の好きな子が佐藤さんて聞いて、『ああ、やっぱりな』て思った。だって、佐々木君と佐藤さんって家が近所で幼馴染だって聞いたことあるもの。両親とも知り合いで、子供の頃は兄妹のようにいつも一緒にいたって。残念だけど、すでに佐々木君の心は決まってたんだね」


 サッパリとした表情で話す渡嘉敷さんを見ると、佐々木にふられてできた心の傷はすでに癒えてるようだった。渡嘉敷さんの治癒力が半端ないな、と僕は思った。


「それでさ、ちょっとおせっかいと思ったんだけど、そのことを休み時間に佐藤さんに教えてあげたんだよね」


 僕が佐藤さんを図書室に呼び出したことを、2人に話した。


「ホント、山崎っておせっかいだねぇ。これで2人の関係がこじれたらどうするの?」


「大丈夫。さっき佐々木から聞いたんだけど、佐藤さんから告白されたって。それでオーケーして付き合うことになったって言ってた。最初、『お前が余計なことをするから、逆に加奈に告られて俺が恥をかいた』って佐々木のヤツが怒ってたけど、最後には『ありがとう』だってさ」


「ふーん……そっか、恋のライバルが幼馴染なんじゃ勝てないか…… よし! 佐々木のことはあきらめて、また好きな人を作ろうっと! ――そうだ、山崎! お前はなかなか見どころがある。私に好きな人ができるまで、お前が私と付き合え!」


 三浦さんが僕にヘッドロックを仕掛けながら無茶なことを言ってきた。


「三浦さんは、お断りだよ」


 僕が笑いながら言ったら、


「じゃ、薫ならいいのかよ!」


 ヘッドロックで思いっきり首を絞められて、三浦さんの体育会系のノリにはやっぱりついていけないと、薄れゆく意識の中で僕は思った。





 その後、僕は中学の3年間を図書委員として過ごすことになった。あれから渡嘉敷さんもクラスは違ったけど、3年間同じ図書委員で共に働いた。その間、親友の三浦りんもしょっちゅう図書室にやってきて無駄話をしていった。おかげで僕は、2人とは気の置けない仲間になった。


 その2人が、僕の相性診断が当たると女子の間でふれまわったせいで、図書室には恋に悩む女子がちょくちょく訪れるようになった。


 ホント、お年頃の女子って恋を糧に生きてるようなもので、僕の中学校生活は次から次へと持ち込まれる変な相談で大変だった。でも、そのおかげで人の持つロウソクの見方も大体わかってきたし、何よりも意識しないとよく見えなかった人の頭の上のロウソクが、ハッキリクッキリといつでも見えるようになった。僕の能力が中学の3年間で飛躍的に伸びたようだ。


 しかし、1つだけ不安だったのは、いつまで経っても自分自身の頭の上のロウソクを見ることができないことだった。もちろん触れることもできないから、どんな形をして、どんな色をして、どんな色の炎を燃え上がらせているのかもまったくわからなかった。


 僕の頭の上のロウソクは、どんな形をしているのだろう……と、そればっかり考えていたら、あっという間に中学3年間が終わってしまった。

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