表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうしようもないご主人様  作者: 黒木夜月
南方領後継者編
8/16

天から訪れし者

「お待ちを!」


空に透き通るような声が響く。

そして俺とバラザの間を巨大な光の槍が通り過ぎた。

「アルスとの楽しみを邪魔するとは……何者だ!」

邪魔された怒りからバラザが声を荒げて光の槍が飛んできた方を見る。

次の瞬間、百を超える光の槍がカイザーワイバーンと魔物達に降り注ぐ!

「くう!」

バラザは目を見開きカイザーワイバーンに合図を出す。

問答無用にバラザを攻撃した第三者。

いや、第三軍団。

「亡き友ニーゼ殿の知らせにより、我ら天翼族はアルス殿に味方する!」

ライトフェザーをさらに多く固めたような翼を背中に持ち、空を飛ぶことを可能にした一族。

かつてこの世界と繋がっていたと言われている天界からの使者の子孫。

全てが女性で構成された鎧を着た戦女神(ヴァルキリー)達だ。

「あの男!死してなお、私の前に立ち塞がるかああああ!」

それはまさに墳怒。

健康であること以外あらゆるものに勝てなかった者への炎のような怒り。

「やりなさい!」

天翼族のリーダーらしき槍を持った者が指示を出す。

再び雨のような光の槍が地上の魔物に降り注いだ。

血を噴き出しながら半分の魔物が血に伏せる。

圧倒的だ。

しかし周りをみればあの短い戦闘の間にも多くの兵が犠牲になったのが見て取れる。

「貴様ああああああ!」

「退きなさい。ここで退けば追いません」

怒り狂うバラザ。

ここで退くような男ではない。

しかしバラザを退かせる情報が天翼族からもたらされた。

「いいのですか?あなたの領地から煙が上がってますよ。大方三男のダラートとかいう男が貴方の領地に侵攻したんじゃないですか?」

俺とバラザが勢いを付けてそちらの方角を見る。

確かにバラザ領からいくつもの黒煙が上がっていた。

あれは……略奪しているのか?

同じ南領の家から!

どこまで堕ちているんだダラート!

「さあ、どうしますか?」

白い輝くような神々しい魔力を辺りに散らせて威嚇する天翼族のリーダー。

形勢が変わったのが分かったのだろう。

苦渋に満ちた顔で歯ぎしりしながらバラザはカイザーワイバーンに後ろを向かせた。

「撤退する!」

下降しながら指示を出すバラザ。

その指示を聞いてあたふたとしながら兵が後ろを向いて退却を始めた。

本当に危なかった。

あの兵が先頭を魔物に任せ側面から回り込むまで時間を稼がれていたら確実に負けていた。

次第にバラザの軍が遠ざかっている。

「割り込んですみませんでした」

「いや……実際に危なかったです。協力感謝します」

ぽつりと呟かれたような謝罪に俺も同じように返す。

この状況をニーゼ兄さんは見越していたのだろうか?

「そうです。ニーゼ殿からお手紙を頂き伝言を預かっていました。お伝えいたします」

それを聞いて俺は天翼族のリーダーと向き合う。

「アルス、君のその心を曲げる必要なんかない。君のその心を汚す必要なんか無い。君の思いのままを貫き通せるように、その力を得て立ち向かいなさい、と」

「……はは。ニーゼ兄さんが言いそうなことです」

やはりこの状況が読めていのだ。

全く、敵わないや。

でも嬉しい言葉だった。

それが他人から言われたものでも。

いや、この女神のような姿をした彼女達だったからこそ、心が洗われたのかもしれない。

やはり、本物は違うな。

「俺は、またニーゼ兄さんに救われたんだな」

でも不思議と嫌じゃ無かった。

死してなお心配させるふがいない弟だけれど、心配してくれるその気持ちが嬉しかった。

俺は隣に人がいることを気にせず泣いた。

いち早く要救助者を救わないといけないのに。

俺の涙はそうやすやすと止まってはくれなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ