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どうしようもないご主人様  作者: 黒木夜月
南方領後継者編
7/16

兄と弱さと

「おおおおおお!」

先頭に立って突撃する。

あれらは俺じゃないと倒せない。

中でもバラザの乗るカイザーワイバーンは!

「アクセルブーツ起動!」

足の金属製のブーツが音を立てると幾何学模様が発生する。

「発動ライトフェザー!」

キイイイインという音を立て白い光を放つ羽が舞い散るとブーツに羽が生えた。

空気を蹴って上空に駆け上がる。

強大な戦力と強力な一撃を持つ敵相手には長期戦は不利。

一気に片を付けて勢いのまま押しきる!

「発動ドラゴンスレイヤー!」

竜殺しの力を大剣に付加し空間をかじるような電撃を纏う。

空を飛ぶバラザに詰め寄り距離を縮める。

「はあ!」

気合一閃。

間合いに入ったとたん剣を振り切る。

空気を切り裂き、周りを焼いて飛ぶ雷がバラザに、カイザーワイバーンに向かっていく。

しかし流石は皇帝の名を持つ飛竜か、なんなく雷を避け火を吐いて反撃してくる。

冷静に軌道を読んで避けると上空に回り込むため更に上へと駆け上がる。

カイザーワイバーンも死角に入りこまれるのを防ぐため上へと向かって翼をはためかせる。

「いいのかい?私一人に構っていて」

「くっ」

通常の兵士が百人いても理論上は討伐可能な生物でもたった一撃で数を減らされてしまえば瞬時に軍の瓦壊を意味する。

そして下には俺みたいな指揮官は町の権力者しかいない。

その町の指揮官も現場慣れしていないだろう。

ただ権力があるから上に付いてるだけのほとんどお飾りだ。

彼らを容赦なく殺すためにバラザはあれらを連れてきた。

「さあ、ダンスを始めよう。私はこの日が来るのを楽しみにしていたんだよアルス!」

「バラザーーーー!」

上空の風の音に消されないように自分の兄の名を憎しみを込めて叫ぶ。

殺させてたまるか。

誰一人の命だって無駄になんかさせやしない!

「おおおおおお!」

『ガアアアアアア!』

ガチンガツンと爪と剣がぶつかる。

ドラゴンスレイヤーをもってしても切れない。

通常のカイザーワイバーンじゃないのか?

「この子はね、特別なんだ。生まれてからずっと同族の血肉しか食らっていない。竜殺しの飛竜なんだよ」

『ゴアアアアアア!』

炎が柱のようになって迫る。

それを急速に回避する。

「それが例えアルスの持つ竜を殺す剣でもそれが竜の特性を持つ限り、この子も条件は対等。君のために育ててきたんだ。勝たせてもらおう」

「舐めるな!」

バラザ自体に直接的な戦闘力はほとんどない。

しかしこの男は自身の整った顔で女をたぶらかし、その女達から資金を受け取っていた。

その資金は領内の開発に留まらず、下の魔物やドラゴンの幼体を買って育てていたのだろう。

全ては、このときのために。

「ぐああああああああ!」

「くっ……」

下でぶつかり始めたのだろう。

兵士の断末魔の叫び声がここまで聞こえてきた。

圧倒的な不利。

この状況を覆すには、本気を出すしかない。

でもそうすれば……。

「ふふ。何を迷っているのかな」

『グルア!』

ドンドン!と連続して炎の柱が吐きだされる。

俺はそれを旋回して回避する。

『グルオオオオ!』

さらに炎が吐きだされ空を焼いていく。

使ったら死んでしまう。

兄が……死んでしまうんだ。

こんな兄といえど兄なんだ!

俺の目を見たバラザがカイザーワイバーンの動きを止めさせて滞空する。

「ふ……。今更だよアルス。そんな目をした君はいらないな」

するとバラザはちらりと下を見た。

それを合図にするかのようにカイザーワイバーンが下を見て口を開く。

「やめろおおおお!」

何をするか理解した俺は防ぐために空を蹴る。

しかし旋回して回避していたため距離が開き過ぎていた。

カイザーワイバーンの炎が下に居るアルスの軍の兵を狙って吐かれた。

俺でも避けるのがやっとの炎が兵に向かって降り注ぐ。

「ぎゃああああああ!」

飛竜の炎に焼かれた兵達が吹き飛ばされ、断末魔を上げながら地面を転げまわる。

そして力尽きて動かなくなった。

「あ……ああ」

それを俺は空で見ていることしかできなかった。

倒す手段があったのに、未だに決めきれない心のせいで。

柄を握りつぶすような力で剣を握る。

そしてバラザの方を見た。

「そう、その目だアルス。君は優しすぎる。これからを生き抜くためにはもっと私側に来るんだ」

「うわああああああ!」

叫ぶ。

心で。

全身で。

泣き叫ぶ。

俺はバラザを殺すために剣を振り上げる!

第一話で登場した次男バラザですが第二話以降盛大に名前を全て間違えていました。

申し訳ございませんでした。

現在修正を完了しています。

引き続きお楽しみください。

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