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アサガオの咲いた日  作者: 玲瓏
二輪目
19/73

夢の始まり

 無意識の中で、夢を見た。

 波がさざめく音を、一人、海の上の、透明な瓶の中で聞いていた。周りには人が誰もいないし、地上もないし、島もない。ただ波の流れに連れ去られて、進んでいく。

 変わらない風景に退屈して、ふと足元の海を見下ろした。するとそこには、瓶の中に入った自分がいた。

 どうやってこの光景を説明すればいいのかわからない。きっと、夢を説明しろなんて言われたら誰でもそうであろうが。努力して説明するとすれば、今目の前の光景は、水面に浮かぶ一人ぼっちがいる瓶の、鏡の姿だろう。

 海の鏡に見える自分は、笑っていた。そして、その瓶の中にいたのは自分だけではなかった。ダン、モーニンガード、お母さんにお父さん。みんながそこで笑い合っていた。その瓶の中で笑い合っていた。一人ぼっちで寂しく海に置かれている瓶に気づかず。

 一人ぼっちがいる瓶の中から、笑い合う瓶へ手を伸ばした。そっちに連れていって、楽しい世界に、連れていって。

 手を伸ばしたところで、触れることはできなかった。

「なんで……」

 もう一度、大きく手を伸ばしてみる。この時にはもう、夢を夢だと気づいていた。

 届かなかった。一人ぼっちの瓶の中から、夢の中であっても、出ることはできなかった。そして、自分は夢の中でも幸せの世界にいくことができないのだと思い、ついに我慢していた涙を、流した。大声でわんわん泣いた。もしかしたらその声に気づいて、みんなが振り向いてくれるかもしれないと思って。

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