表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天空の村・アタシはミーナ  作者: シード
6/42

第五話『対決』

「もぐもぐ。にゃあ、ミーにゃん」

「もぐもぐ。なぁに? ミアン」

「ぜいたくを言うようで悪いのにゃけれども、なにかもう少し、おなかがもっちりとするものが食べたいものにゃ」

「本当、ぜいたくだわん。他になにか持ってこなかったの?」

「持ってきたのは首に巻きつけた風呂敷の中身だけにゃんよ。食べ物はここまでにゃ」

「じゃあ、諦めなさい。赤玉ゼリーはまだ残っているんだし、ちびちび食べていけば、読み終わるまで持つわん」

「にゃけども……」

 がさごそ。

「うん? なに今の?」

「確かドアの向こうから聞こえたような気がするのにゃけれども」

「ミアン。なんか怖いわん」

「ミーにゃんはここで待っているのにゃ。ウチが見てくる」

 ずぼっ!

「あっ、待って。危険があるかも知れない……、あぁあ。行っちゃったわん」

「ふにゃああああ!」

「ミアン!」

 ずぼっ!

「きゃあああ! ……ってミアンじゃない。脅かさないでよ、もう。

 ……あれっ、なんなの? その白いもの。取っ手部分みたいなところを口にくわえているみたいだけど」

「ドアの外にこの白いかごが置いてあったのにゃん」

「へぇ、これが。あの物音は誰かがこれを置いたからなのね。さっき外へ行った時にはなかったもん」

「かごの上には、花の模様が描かれたピンク色の布がかぶさっているのにゃ。

 ……うん? ミ、ミーにゃん。にゃにやら香ばしい匂いが」

「ミアン。布を取り払うのはちょっと待って。かごの端のところになにか紙がさしてあるわん」

「紙? ああ、これだにゃ。一体なんにゃろ?」

 ぺらっ!

『差し入れの「たい焼き」です。お口がさみしくなったら、食べてください』

「にゃ、にゃんと!」

 ひらっ!

「こ、これは! 見まごうことなく、たい焼きにゃん。し、しかもあつあつ。もう、たまらないのにゃん!」

「あっ。待ってよ、ミアン」

「ふにゃあああ!」

 ばたっ!

「ミ、ミアン、どうしたの! 毒でも入っていたの?」

「あ、あんこが……」

「あんこが?」

「熱すぎたの……にゃん」

「……そりゃそうだわん」

「ふぅ。困ったのにゃあ、なにしろウチは」

「ウチは?」

「猫舌だし」

「ごもっともだわん。それじゃあ、しょうがないわん。もう少し冷めるまで」

「冷めるまでどうするつもりにゃん?」

「第五話へ突入よ!」

「まぁ、それもいいけどにゃ。さて、お次の話はどんな……、

 はっ! ミ、ミーにゃん!」

「うん? なによん? ……うわぁっ、やっ、やったぁ!」

 第五話『対決』


 突然、すぅぅっと、壁から猫が現われる。

(あっ、ミアンだぁ!)

 やっとやっと逢えたわん。

「ネイルにゃん。ラミアにゃんは気がついたのかにゃ?」

「ええ、ミアンさん。もう大丈夫みたいですよ」

「それはよかったにゃ。……うん?」

 ミアンは、『ミアァン、こっち向いてぇ!』と、きゃあきゃあ、手をふっているアタシに気がついたらしい。それなのに、

「…………。じゃあ、ネイルにゃん。またあとで」と再び、壁の中へ消えようとしている。

「こらぁ! お待ちなさぁい!」

 アタシはその背中に、がばっ、としがみつく。

「ミアン。親友がわざわざ来ているのに、なんで逃げるような真似をするの!」

「ミーにゃん。これは真似じゃにゃくて、実際に逃げようとしているのにゃけれども」

「だから、どうしてなの? さっぱり判らないわん」

「やれやれ。困ったものにゃん」

 ミアンは尻尾を長く伸ばしてアタシの身体に巻きつけると、顔の前にぶらさげたわん。

「おはよう、ミーにゃん。今日も元気かにゃ?」「おはよう。元気だわん。ミアンは?」

「もちろん、元気にゃよ。ところでミーにゃん」「なによん、ミアン」

「今朝もまたあれをやる気かにゃ?」「当然だわん」

 アタシの返事を聞くや否や、ミアンは、ふぅ、とため息をつく。

「それで前座のお芝居はどうする気にゃん?」「聞くまでもないわん」

 はあぅ。ミアンは更に深いため息を。

(ミアンったら、ため息ばかり。このままじゃあ、いつまで経ってもらちがあかないわん。よぉし。こうなったら有無をいわさずやっちゃえ!)

「さぁ、ミアン。最初からやり直しよぉ!」

 はああぅ。ミアンは更に更に深いため息をつく。


 ……壁から現われた猫は、アタシをふり向いた。

「はっ! あ、あんたは!」

(ふぅん。嫌がっていた割には、台詞と身がまえる仕草が完璧じゃない。どれ、アタシも)

「そういうあなたは!」

 アタシも目の前にいる猫の姿に、思わず身を固くする。

「ば、化け猫ミアン!」

「にゃにおぉ、精霊イオラにゃんの箱入り娘。甘えん坊妖精ミーにゃんめ!」

「なにおぉ!」

(いうにこと欠いてなんてことを。確かに打ちあわせの時、台詞はなんでもいいっていったわん。だけど、なんかむかつくぅ)

 もはや気分は本気モード。両手に拳を握りしめ、戦いのポーズをとるアタシ。一方、ミアンも二つ足で立ち、それを迎え討たんとしている。

 きらぁん! きりっ! 妖精対化け猫。互いの目が輝き、闘志をむきだしにする。

(ミアン。前座の芝居はこれにておしまい。ここからが本番よ)

 バトル開始!

「ミアン、勝負よ!」「ミーにゃん。受けてたつにゃよ!」

 先制攻撃を成功させることこそ、勝つことへの近道。アタシは翅を拡げる。

「勝利はアタシのもの。ミアン、いくわよ! 『妖力波拡散』!」

 ざぶぅん!

 アタシの身体中から放たれた白色の霊波が大きな波に。

「ミーにゃん。そんなもので負けるわけにはいかないのにゃよ。それっ、『ねこねこ波散開』!」

 ざざぁん!

 ミアンから放たれた水色の霊波も大きな波に。

 二つの大きな波がぶつかりあう。

 ばざぁん!

「うわぁん!」「ふにゃあ!」

 アタシたちは跳ねかえってきた自分たちの霊波に巻きこまれ、きりもみ状態に。

「はぁ、はぁ、はぁ。く、くやしいわん。相討ちなんて!」

「ふにゃ、ふにゃ、ふにゃ。お、おにょれ、ミーにゃん!」


「……でも、ミアン。ちょっと休まない?」「ウチも賛成にゃよ、ミーにゃん」

 束の間の休憩をとったあと、アタシたちは再び対峙する。


「まだまだよ、ミアン。勝負はこれから。『妖力眼光弾』!」

 ばきゅぅん!

「その手は食わないにゃ。これでも受けるがいい。『ねこねこ眼光線』!」

 びぃっ!

 アタシの目から放たれた光弾と、ミアンの目から放たれた光線が衝突。

 ずばばばばぁん!

「ううわわわぁん!」「ふふにゃにゃにゃあ!」

 アタシたちは爆発の勢いで、それぞれが反対方向へ、くるくる、と転がった。

「な、なかなかやるわね」「ま、またしても互角にゃんて」

 ぜいぜい。ぜいぜい。アタシとミアンは早くも息切れ寸前の状態。


「ミアン、タンマ(休みたい)」「ウチも、にゃ」

 アタシは休みの間、こんなことを考えた。

(元々アタシは小柄だし、それほど体力に自信はないわん。この化け猫と張りあえば、最初のうちは互角でも、やがては)

 心は決まった。自分からいいだした休みを強引に打ちきり、またまたミアンと対峙。


「ええい! この闘い。妖精としての意地に賭けても負けるわけにはいかないわん。

 ミアン、これが最後よ! 『妖力爆風波』でとどめを刺す! 妖力充填!」

 アタシは妖力をためこむ。完全に充填が終われば、二枚翅から強力な妖力波が放たれる。

(ふふっ。背中の翅が輝き始めたわん。この勝負、もらったぁ!)


「おにょれ、ミーにゃん。切り札を使うつもりかにゃ。こっちも負けるわけにはいかないのにゃよ。『ねこねこ砕撃破』で返り討ちにゃん。ねこねこぢから充填!」

 二つ足で立っているミアン。四肢を拡げている彼女の身体全体が水色へと変化。輝きを増していく。

「ミーにゃん。降参するなら今のうちにゃよぉ!」

「ミアン。それはこちらの台詞せりふだわん!」

 ぶぉぉっ! ばぁぁっ!

「ミアン! 充填はもうじき完了するわん」「ウチの方もにゃ。ミーにゃん!」

 ならばと、それぞれが切り札を放つかまえに入る寸前。

 ごつん! 「あっ、痛たたた!」

 ごつん! 「ふにゃあっ!」

「君たち。さっきからなにをしている。診療室は騒ぐところではない」

 セレンさんにげんこつで頭をたたかれ、怒られた。

「ごめんね」「ごめんにゃ」

 アタシとミアンは並んで謝った。

(忘れてたわん。そういえばセレンさんって、アタシが見えるんだっけ)

 いざという時の場合、アタシはミアンだけを残して逃げるつもりだった。その英知を結集したともいえる目論みが、たった一つの見落としだけで、ものの見事に瓦解した。

(もぉう。くやしいわん。くやしいわん)

 そこには地団駄じだんだを踏むアタシの姿があった。


「……おかしいわん。『イオラの木』は数万年もの間、この村で生きつづけてきた最長老の樹木。イオラはそのイオラの木に宿る精霊。そんでもってアタシはそのイオラが造りだした妖精なのよ。言わば、数いる精霊の中でも、名門中の名門の出の筈だわん。それなのにどうして、今は化け猫とは言え、前身が普通の猫であるミアンと同じ力なの?」

「……おかしいにゃん。同じ霊体とは言っても、ウチとミーにゃんでは体格差がありすぎる。当然、ウチの方が多くの霊力を使える。それにゃのに、何故、こうも力が均衡しているのにゃろう?」

「うん?」「うん?」

「……あははは」「……にゃははは」

「ふぅ」「ふぅ」

「まぁ、そんなのはどうでもいいけどにゃ……。

 それにしても、ついにウチが、このどうしようもないお話に現われてしまったのにゃん。しかも、今まで謎のベールに包まれていた正体があばかれようとしているみたいにゃし」

「謎のベールって……。単に化け猫だって言うだけのことでしょ? そんな大げさに騒ぐほどのことじゃないわん」

「それもそうだにゃ。それにしてもミーにゃん。……じーっ」

「な、なによん!」

「はぁふぅ」

「なんなのよ、アタシの顔をじっと見たかと思えば、深い溜息なんかついたりして」

「別にぃ。ただ、どの世界でもミーにゃんはミーにゃんだにゃあ、と思って」

「なに言ってんのよ、アタシがアタシでどこが悪いのよ」

「はぁふぅ。……にゃからお守りが大変なのにゃあ……」

「うん? よく聞こえなかったわん。もう一度言いなさい、ミアン」

「はぁふぅ」

「んもう!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ