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天空の村・アタシはミーナ  作者: シード
38/42

第三十七話『天空の村』

 きっ!

「文字喰い! ミアンをお前なんかに渡さない! 『妖力充填』!」

「どうしても逆らう気もじ。ならばもじ」

 だだんだだんだだんだだんだだん! だだんだだんだだんだだんだだん! …………。

 すぱん! すぱん! すぱん! すぱん! すぱん! …………。

「これは……。さっきのやつと同じもじ。完全結界なら終わるのを待つしかないもじ」

 ぴかぁぁん!

「ふむ? やつの翅が白から緑色になったのもじ。一体なにをするつもりもじ」

「やったぁ! 『充填完了』だわん。

 ミアン、今助けるからね。それぇっ。『妖力爆風波』あ!」

 ばふぅぅっ!

「うっ! 霊力によって造られた爆風もじ。ふき飛ばされて……たまるかなのもじぃ!」

 …………ひゅぅぅっ。

「ふぅ。なんとか耐えたもじ。やい、ミーナ。お前の爆風波は効かなかったもじ」

「うるさい、文字喰い。今のは攻撃じゃない。力を与えるための爆風波だわん」

「おかしなことをいうもじ。敵であるわじに、何故、力を与えようとするもじ」

「文字喰い。アタシが力を与えたのはミアンよ。あなたじゃないわん」

「なにぃ? もじ。それはどういう……、あっ! あっ! あっ!」 

  ぽこ。ぽこ。ぽこぽこ。ぽこぽこ。ぽこぽこぽこ。ぽこぽこぽこ。…………。

「こ、これは! わじの身体にもぐりこんだ水滴状のやつもじ。ま、まさかぁもじ!」

「ミアンだ! ええと、そうだ。霊覚交信を始めなきゃ。

 ミアン、大丈夫?」

「大丈夫にゃよぉ、ミーにゃん。心配かけてすまなかったにゃあ」

「いいのいいの。ミアンが無事なら。さぁ、ミアン。やっちゃってぇ!」

「判ったのにゃん。にゃら、いくにゃよぉ!」

「ま、待てぇもじ。い、一体なにを、もじ」

「問答無用にゃ。文字喰いにゃん。これでも食らうがいい。それっ!

『ねこねこ砕撃波・散開』!」

「ぐふっ!」

 ずばばばぁぁぁん!

「やったわん! 文字喰いが砕け散ったわん!

(砕撃波。……たくさんの滴に身を変えたミアンが相手の霊体内部に侵入してこれを爆砕させる。文字どおり捨て身の技にして、ミアン最強の技でもあるわん)」

 ぺた。ぺたぺた。ぺたぺたぺた。ぺたぺたぺたぺた。…………。

 ぴたっ。ぴたぴたっ。ぴたぴたぴたっ。…………。

「砕けたミアンの身体が一つになっていく……」

 ぴたぁぁん!

「ミアンだ! ミアンの身体が元に戻ったわん!

 ミアン! やったね!」

 ぱたぱたぱた。

「ミーにゃん。応援、ありがとうにゃん!」

 すたすたすたっ。


 ひしっ。


「ふにゃははは」「あははは」


「ミーにゃん。闘いは終わったにゃあ」

「うん。文字喰いは砕けたまま。このままにしておけば、すぐに消えてなくなるわん」

「ふぅ。やっと気が楽になったにゃあ。ミーにゃん。本はどうなっているのにゃん?」

「そう。それがあったわん」

 ぱたぱたぱた。

「ええと、残りは、と。……うぅん。まだ次と次の話が埋まっただけだわん」

「まぁ、とりあえずはよかったじゃにゃいか」

「うん。ねぇ、ミアン。ほっとしたついでに読書でもしない?」

「うんにゃ。ミーにゃん、次は何話めだっけ?」

「第三十七話めだわん」

「やっと取り戻したお話にゃん。残りのぺーじも埋まることを期待しつつ、楽しみながら読もうにゃん」

「大賛成だわん!」

 第三十七話『天空の村』


 陽がだいぶかたむいてきた。あともう少しすれば夕陽となって空が、じわぁっ、と紅く染まり始めるのに違いない。

 アタシはとミアンは今、天空の村を上空からながめている。

「ねぇ、ミアン。天空の村ってさ。『ウォーレス』だっけ? なんかそんな名前を持つ惑星の上空に浮かんでいる孤島なんでしょ?」

「そうにゃよ、ミーにゃん。なんでも元はウォーレスの大地だったのにゃと。他の天体から来た移民による支配と闘争による混乱。それらからこの地に棲むものらを守るため、神霊と呼ばれる地霊ガムラが大地から切り離したと伝えられているのにゃん」

「でもここからじゃあ、ウォーレスは全然見えないのよね」

「ほら。天空の村よりもずっと下の方に雲海が拡がっているにゃろ? あれがすっぽりとウォーレスの地上を覆い隠しているのにゃよ」

「暗雲ってやつよね。どす黒くてまるで波のようにうごめいている。時々、ぱちっぱちっ、と光がはじけることもあるわん」

「この雲は自然の造形物とは違うみたいにゃよ。雲海の下、つまり地上に拡がる大気汚染と、それに伴う天候の悪化が造りだした、猛毒性を持つ雲とのことにゃ。この状況はかなり昔からつづいているらしいのにゃけれども」

「どうしてこんな風になったの?」

「それが判らないのにゃよ。ただ一ついえるのは、あの雲海より下の世界には、いかなる命も存在しにゃい。ウォーレスの地上は、ないも同然の世界なのにゃ。みんにゃ、この村で暮らしている。今では『地上』といえば、村の大地を意味する言葉となってしまったのにゃん」

「ふぅん。それにしても大きいわん。アタシたちの村って」

「広大な面積を持つこの村は見てのとおり全体が丸っぽい。そのうち人の住む区域はほんのわずかにゃ。村の真ん中よりにあるのは中央区と呼ばれる地区。村人のほとんどがここで暮らしている。この区には村役場、病院、学校などの公共施設を始め、市場いちばなどの商業施設もある。この中央区から村の最端へ向かって住居区、農業区、工業区と拡がっているのにゃ」

「ねぇ、ミアン。今はどれくらいの人間が住んでいるの?」

「村役場の職員になったマリアにゃんの話によれば、全部で百人ぐらいにゃとか。便利な生活を好む人は中央区を、静かな生活を好む人は住居区を選んでいるということにゃよ」

「いろいろな形の建物が並んでいるね。あっ、ミアン。村役場の時計台が見えてきたわん」

「やっぱり目立つにゃ。村役場の外壁は『れんが』と呼ばれる赤い石型が積まれてできているし、屋根は緑色の三角形にゃから、どうしたって目につきやすい。そんでもって、屋根の上には赤いのっぽの時計台。『ここは村役場にゃよお』って宣伝しているみたいな建物にゃん」

「でもミアン。時計をよく見てよ。ほら。白い円が描かれているとこ。あの内側には『1』から『18』の数字が記してあるでしょ。多分、黒色の長い針と短い針が現在時刻を示していると思うんだけど、どうして『36』にしなかったのかな」

「見にくくなるだけにゃよ。同じ時刻を指しても、それが昼にゃのか、それとも夜にゃのかは、周りを見れば一目瞭然。必要がないのにゃん」

「なるほどね。よくこんなものを考えだした、って感心するわん」

「村がウォーレスの一部であった時、移民との交流の中、向こうの文化、生活様式なんかが入ってきたそうにゃよ。中でも『異星技術』と呼ばれるものは、村に多大な影響を及ぼしたとか。時計台にかぎらず、真下に見える家々も、それらがもたらした結果の一つともいえるのにゃ」

「ミアン。『村に多大な影響』とはいっても、『人にとっては』、よね。人間が住む区域って、村全体から見ればほんの一角じゃない。村のほとんどが森に覆われているわん」

「それはそうなのにゃけれども。ところでミーにゃん。ミーにゃんは村の主な森の名前を全部いえるのにゃん?」

「あったりまえよ。その一つはアタシのすみかだもの。ええと。まずは自由の森でしょ。あと、アーガの森、フーレの森、銀光虫の森、そしてイオラの森。この五つよね。

 ちなみに自由の森には、この村で一番大きな山がそびえ立っているわん。それがさっきまでいた霊山『亜矢華』。村のほぼど真ん中にあって、霊体には近づきにくい山だけどね」

「自由の森にはもう一つ特筆すべきものがあるのにゃ。それは森全体が人間の区域を囲むようにして連にゃっていること。いい方を変えれば人間の区域は自由の森の一角にすぎにゃい。他の森は全てその外側にゃ。この立ち位置は村にとって重要な意味を持っているのにゃん」

「というと?」

「村に棲むものを大雑把に分ければ、人間とそれ以外。この二つにゃん。それ以外というのは」

「精霊や妖精を含めた、アタシたち森に棲む全ての生きものを指しているのよね」

「そうにゃ。自由の森は両者にとって共有の場であると同時に、それぞれが棲む区域をへだてる『かきね』の役目も担っている。両者の共存を可能にしている森ともいえるのにゃ」

「そうかぁ。ねぇ、ミアン。人間とアタシたちがいつまでも仲良くできる村だといいわね」

「ウチもそれを願っているのにゃん」


 アタシは自分が乗っているアーガに声をかける。

「ねぇ、ミレイ。ラミアさんとはいつからの知りあいなの?」

「くぉーっ(初めてお逢いしたのは、ラミアさんが生まれてまもなくにございます)」

「へぇ。そんな小さい頃から」

「くぉーっ(もちろん、言葉は喋れませんでしたが、なんとなく意志の疎通みたいなものは、はかれていたと、記憶には残っております)」

「すごいなぁ。その頃からアーガの使い手としての才能があったってことね」

「ミーにゃん。確かにラミアにゃんはアーガを自分の手足のごとく使いこなせる。でもにゃ。使い手となってからは、『アーガの森』にある小屋を自分の家として、アーガと一緒に暮さなければならなくなったのにゃ。早くから親元を離れて一人暮らし。その上、周りはアーガばかり。大変といえば大変にゃよ」

「アーガは多いもんね。空を見あげれば、すぐにあの紅い身体を目にすることができるわん」

「村人にもおなじみな霊翼竜にゃ。荷物や人の運搬などに利用されている。村人の中にはラミアにゃんの手ほどきを受けてアーガを乗りまわす者もいる」

「とはいっても、アーガの言葉を本当の意味で理解できる村人は、ほんのわずかだわん」

「会話をとおしてアーガと心をかよわせ、自在に操ることができるのは、ドラスの霊力を受け継ぐ血族のみにゃ。ラミアにゃんが使い手となれたのも、この血族の一人だからにゃん」

「レミナさんも似たような境遇よね。あっ、そうだ。ねぇ。ミアン。フーレは霊水を降らせるから雨神って呼ばれるのよね。それじゃあ、どうしてアーガは聖竜なの?」

「ミーにゃん。アーガっていう霊翼竜は村の環境を維持する重要な役割も担っているのにゃ」

「へぇ。どんな?」

「村を照らす太陽。それがもたらす熱と光は、村全体の活性化や環境の維持に、必要不可欠なものにゃ。その反面、度を超す強い照射は、異常な気温の上昇を招き、動植物問わず有害な放射線などもまき散らしてしまうのにゃよ。その悪影響をおさえるため、村のはるか上空では耐熱耐光防壁『ルナ』が張りめぐらされている。これは、かつてこの村に存在していた森の精霊たちによって造りだされた防壁。ルナのおかげで太陽の照射度は常時一定範囲内に収まり、村で生きるものにとっては快適な環境とにゃっている」

「うん。それは知っているわん。でもそのことと、アーガが聖竜と呼ばれているのとは一体どんなつながりあるの?」

「くぉーっ(すみません。その件につきましては、アタシメからお話ししても、ようございますか?)」

「いいにゃよ」「もちろん、だわん」

 ミレイが話に割りこんできた。

「くぉーっ。くぉーっ(大変悲しいことに、現在、この村には森の精霊は一体もおりません。ですが彼女らは、自分たちが滅びを迎えることを予期していたのでございましょう。アタシメどもにもルナを保護することが可能な霊力をお与えになりました。空を飛ぶ際に翼からその力が放たれています。それゆえ、ルナは今も安定した状態が保たれているのでございます)」

「ミレイにゃんのいうとおりにゃ。その結果、森の精霊がいなくにゃった今でも、村は太陽からの悪影響を受けずにすんでいる。ミレイにゃんのようなアーガたちが村を守ってくれているからにゃよ。この事実を知るものでアーガに敬意を表さないものは誰もいにゃい」

「なるほどね。それなら聖竜って呼ばれても不思議はないわん」


「ミーにゃん。ほら、お喋りしている間に」

「……あっ、中央病院が見えてきたわん!」

 既にガン・ドラスが病院の裏口にある駐竜所で翼を閉じようとしている。アタシたちもそのかたわらへとおりた。

(さぁてと。ラミアさんは……。ふふっ。いたいたいたわん)


「今回のお話は『天空の村』案内、ってとこかな?」

「今の今になって書かれているにゃんて。ひょっとしたら」

「うん? どうしたの? ミアン」

「この本の主眼って、実は、当時の天空の村を伝えることにあったのかもしれにゃい。だとすればにゃ。この回こそがウチらに対して本当にいいたかったこと、といえなくもないにゃ」

「えっ。でもそれなら、ミーナが主人公なのは? ラミアさんを命がけで救ったことは? ミアンは? ラミアさんやレミナさんは? セレンさんやネイルさんは?」

「もちろん、そういった生きものどうしのふれあいも含めて全部、ということじゃないかにゃ」

「そぉんなぁ! それじゃあミーナの活躍が色あせて……って、文句いうほどのことでもないか」

「そうそう。元々、ウチら以外、誰を対象にしているのか、どこに焦点がさだまっているのか、そこらへんがにゃんとも判らにゃい、ぬるい物語にゃん。ぬるいウチらにとってはこれくらいにゃ本の方が、かえって読み心地がいいのにゃん」

「そうよねぇ、ぬるさ、っていう点についてはアタシたち、誰にも負けたくないもんね」


「……助けて……くれぇもじ」

「おや。ねぇ、ミアン。砕けた文字喰いが『助けて』、だって」

「助けをこう者に知らんふりはできないのにゃあ。……よぉし」

「助けるの?」

「相手の返事一つにゃ。まぁ、任せるのにゃよ」

「うん。判ったわん」

「文字喰いにゃん。奪った本の文字を全て元に戻すと約束できるのにゃん? 今後、ウチらも含めて誰にも悪さをしにゃいと誓えるのにゃん? それにゃら、助けてやらにゃいこともないのにゃけれども」

「……判ったのもじ。……約束するもじ」

「決まったにゃあ」

 くいっ。

「この欠片でいいにゃん」

 ちゅっ。

「『口づけ』が終わったのにゃ。すぐに元に戻れるにゃよ」

「ミアンったら本当に助けちゃったわん。

(ミアンの口づけ。……砕撃波で砕かれても、一定時間内にミアンが欠片の一部に口づけすれば、たちどころに元の姿へと戻れてしまう)」

 ぼむぼむ。ぼむぼむ。ぼむぼむ。ぼむぼむ。…………。

 がしっ。がしっ。がしっ。がしっ。がしっ。……がしぃぃん!

「ふふふもじ。やっと元の身体に戻れたもじ」

「文字喰い。もうこれに懲りたら悪さなんかしちゃだめよ」

「ふふふもじ。やめるわけがないもじ」

「にゃんと! あんたはさっき、約束するっていったじゃにゃいか」

「おろかものぉもじ。妖魔との約束など、あてにする方が間違っているもじ。身体はいくぶん小さくなったものの、まだまだ闘えるもじ」

 ぐぃぃん! ががん!

「また『あ砲』が出てきたわん!」

「お前らぁもじ。どうせ力などとうに使い果たしているに決まっているもじ。こちらも早く力を取り戻したいもじ。だから、従来の『あ砲』を使って一発でしとめてやるもじ」

「ミアン、どうしよう?」

「こうにゃったら仕方がにゃい。死力をつくして闘うまでにゃん」

「ミアン……。うん、判ったわん」

「むだむだもじ。お前らの残った霊力をどんなに合わせても、この『あ砲』の敵ではないもじ。まとめてあの世に送ってやるもじ」

 がが。がが。がが。……。

「砲筒がアタシたちにねらいをさだめているわん」

 がが、がが、がが、がっ。

「とまった……。まもなくにゃ。撃ってくるにゃよ」

「ふふふもじ。それでは、おさらばもじ。『あ砲』、発」

 ひゅるひゅるひゅるひゅる。びしっ!

 ひゅるひゅるひゅるひゅる。びしっ!

「あっ! ミアン、見てよ。文字喰いの身体や『あ砲』の砲筒に、金髪の髪がからみついたわん!」

「閉まっているドアをつき抜けてずぅっと伸びているにゃ。ミーにゃん、あれはもしや」

「ま、まさかぁ……もじ」

「こらっ、文字喰い! よしこ、の友だちに手を出すとはなにごとなのねっ! もう絶対に許さないんだからねっ!」

 ぼわぁぁん!

「よしこ!」「ねねねのよしこにゃん!」

 にこっ。

「戻ってきちゃったのよね。忘れものが迷惑をかけてごめんなさいなのよねっ」

 つかつかつか。

「罰を受けなさいねっ。文字喰い!」

 ぐわぁん! ばたん! ぐわぁん! ばたん! ぐわぁん! ばたん! …………。

「うわぁ。からんだ髪の毛が文字喰いをふりあげては床にたたきつけているわん」

「相変わらずよしこにゃんは情け容赦がないにゃあ」

 ぐわぁん! ばたん! ぐわぁん! ばたん! ぐわぁん! ばたん! …………。

 ぐちゃぐちゃ。ぐちゃぐちゃ。ぐちゃぐちゃ。

「よ、よっちゃん。わじが悪かったもじ。ほんのできごころもじ。助けてもじ」

「うるさいのねっ。飼い魔の分際でご主人さまである、よしこ、から離れたばかりか」

 ぐわぁん! ばたん! ぐわぁん! ばたん! ぐわぁん! ばたん! …………。

「勝手にぶくぶくと大きくなったあげく、友だちにまで迷惑をかけるなんてねっ。一罰百戒のたとえもあるようにねっ。きつくお仕置きしてあげるのねっ。

 いらっしゃいなのねっ、なみこ!」

 ふわっ。まるまるまる。

「あっ。よしこにゃんがつるっぱけに」

「金髪のかつら、いや、なみこ、が、よしこ、の右手にまるまったわん」

 がきん!

「ミーにゃん、今のを見たのにゃん? よしこにゃんの右手が」

「うん。金づちに変化したわん」

「片方は四角で、片方はとがっているのにゃ。あれでたたかれたらさぞかし」

「痛いわん」

「よっ、よっちゃん。やめてもじ。あやまるからもじ。ねっ。やめてもじ」

「うるさいのねっ。なんか頭にきたわねっ。もう絶対に許せないんだからねっ! あんたなんか、こうしてやるっ! こうしてやるっ! のねっ!」


 ぼこぼこぼこ! ぼこぼこぼこ! ぼこぼこぼこ! ぼこぼこぼこ!


「あっ、判ったにゃん! ばんにゃあい! ばんにゃあい!」

「ミアン。前足をあげて喜んでいるけど、なにが判ったの?」

「ほら。よしこにゃんって、最初に会った時はウチをぼこぼこにしたのにゃん」

「そういえばそうだったわん」

「一体にゃんであんな風になったのにゃん? ってつねづね疑問に思っていたのにゃけれども。今やっと、その疑問が解消されたのにゃん」

「なみこ、を使って、金づちでぶんなぐっていたのね」

「ふぅ。これでやっと安らかに眠れるのにゃん」

「そんなに……悩んでいたの?」

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