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天空の村・アタシはミーナ  作者: シード
37/42

第三十六話『銀霊』

「美味かったにゃあ」

「本当本当。でも、アタシまで追加のお茶づけが出るとは思わなかったわん」

「まぁいいじゃにゃいか。ウチらはいくら食べても太らないのにゃし。とことん、美味を追求しようにゃん」

「その代わり、熱いものはだめだけどね」

「それは……いわない約束にゃよ。ぐすん」

「そんなことぐらいで涙ぐまないでよ……。

 ねぇ、ミアン。一つ確かめておきたいことがあるんだけど」

「なんにゃ? あらたまって」

「この本のこと。ここに書かれてある内容って」

「今までの話から察するに、ウチと初めて出会ったミーにゃんの世代じゃにゃいか」

「うん。アタシもそう思うわん。ええと……前にイオラから聴いた話によれば、確か、三世代前だったとか」

「ウチもそう聴いたにゃ。文字喰いがいっていた『過去のミーにゃん』ではないのにゃん。にゃから、お話のミーにゃんがどうにゃろうとも今のミーにゃんが消えることはにゃい」

「そうよねぇ。あっ、そうだ」

「どうしたのにゃん?」

「ミアン。このことを文字喰いに話してみたら? そしたらあきらめて文字を元に戻してくれるかもよ」

「ウチらは既に文字喰いが仕かけた前回の話を読んでしまっているのにゃよ。これを元に戻すには本だけじゃにゃくて、ウチらの記憶もにゃんとかしなければならにゃい。いくらにゃんでもそれは無理というものにゃん」

「それはそうだけど」

「むしろ逆に腹を立てて、それにゃらせめてお話のミーにゃんだけでも、って、やけっぱちになる可能性の方が強いと思うのにゃけれども」

「そっちのほうがありそう。でも、お話のミーナが文字喰いの計略で滅びるなんて悔しいわん。ねぇ、ミアン。なんとかならないの」

「にゃんとかっていわれてもにゃあ。……ふあああんにゃ。ふあああんにゃ」

「どうしたのよ、ミアン。急に大きな口を開けてあくびなんかしちゃって」

「おなかがいっぱいににゃた上に、まじめな話をしたにゃろ。にゃあんかねむたく」

「そういえばアタシもぉ。ふわぁぁ……。

(おおっと。それどころじゃないわん!)

 こらぁっ! ねむくなっている場合かぁ!」

「ミーにゃん? ミーにゃんはにゃにをそんなにあせっているのにゃん?」

「だって、これから見るお話でミーナの運命が決まっちゃうかもしれないのよ。いてもたってもいられないわん」

 いらいら。いらいら。

「そんにゃにいらいらしたって、お話のミーにゃんが助かるわけでもにゃし。もっと、どっしりとかまえたらいいじゃにゃいか」

「どっしりとかまえたって、解決できなきゃ同じだわん」

「同じじゃないのにゃん。ウチとしてはにゃ。いらいらして無意味に歩きまわられるよりも落ちついてもらった方が」

「もらった方が?」

「ねむりやすいのにゃん」

「だから、『こらぁっ!』っていっているんじゃない。ねむる前になんとかしてよ」

「そうせっつかれてもにゃあ……。

 あっ、そうにゃ。ミーにゃん、助けを求めるっていうのは?」

「助けを求めるって……一体誰に?」

「よぉく考えてみるのにゃ。あそこは霊山『亜矢華』。銀光虫のたまり場にゃん」

「うん。それはアタシも知っているわん」

「銀光虫といえば、あのお方が眠っておられるじゃにゃいか。だったら起きてもらって、助けをこうのが一番にゃと思うのにゃけれども」

「あのお方? ……あっ、そうか。でもミアン。どうやって起きてもらうの? もうかなり長い間、今の状態なんでしょ? とてもじゃないけど」

「ミーにゃん。この本の上にウチの前足とミーにゃんの手をのせるのにゃ。ウチらの中にはイオラにゃんの命の欠片がある。霊波を同調させて、イオラにゃんに呼びかけてもらうのにゃ。『ミーにゃんを助けてぇ』って」

「アタシたちの中にいるイオラに……。判ったわん。やってみよう!」

「それならいくにゃよ」

 ぶわああぁぁ!

「どんとこい、だわん」

 どゅわあぁぁ!

「ミーにゃん、せぇのぉっ!」

「イオラああ!」「イオラにゃああん!」


 ぴかああああん!


「あれっ。今、一瞬だけど、アタシたちの手が光ったわん」

「ミ、ミーにゃん、本が!」

「なにもしていないのに、めくりだしたわん!」

 ぺらぺらぺら。ぺらぺらぺら。ぺらぺらぺら。……。

「あっ、次に読むお話だわん」

「ミ、ミーにゃん。本の文字が!」

「光りだしたわん!」


 きらきらきら。きらきらきら。…………。

 ぺらっ。


「うわっ。ぺーじがめくられたのにゃん」


 きらきらきら。きらきらきら。…………。

 ぺらっ。

 きらきらきら。きらきらきら。…………。

 ぺらっ。

 …………。

 …………。

 ぺらっ。


「……白紙のぺーじになったわん。……ってことは」

「ミーにゃん。次のお話が全部書きかえられたのにゃん」

「ど、どうなったのかなぁ?」

「結果は見てのお楽しみにゃよ」

「じゃあ、読んでみる? なんかどきどきするわん」

「ウチもにゃ。さぁ、ミーにゃん」

「ええい、ままよぉ!」

 ぺらぺらぺら。ぺらぺらぺら。……ぴたっ。

「こ、ここだわん。第三十六話の最初。間違いないわん」

「ミーにゃん。いい結果を祈っているのにゃよ」

「アタシも。

(どうか、お話のミーナが助かっていますように)

 じゃあ、読み始めるわん!」

「にゃんか今回が一番、どきどきわくわくにゃん」

 第三十六話『銀霊』


 がくっ。

 アタシは目を開けた。信じられないけど、落下がとまっている。

(なに? 一体なにが……。こ、ここは!)


 アタシは自分の目をうたがった。緑がかった白く閉ざされた空間。陽の光はささないけど、やわらかな明るさに満ちた心落ちつく世界。目の前に拡がっているのはまぎれもない『精霊の間』だ。

 アタシは誰かに抱かれていることに気がついた。

「イオラ?」

「その名を口にする……。やはり、そなたはイオラの娘か」

「えっ」

 アタシは声の主が誰なのか知りたくて、抱いている腕から飛びたつ。

「あっ。……もしかして、あなたは」

 目の前にいたのは、イオラと顔も姿もそっくりな精霊。身にまとっている霊布も白色。だけど、身体が銀色に輝いている。

「あなたは……、ひょっとして銀霊お母さま?」

「ほぉ。わらわの名を知っておるとは。

 ……そうか。イオラが教えたのじゃな。そなた、名はなんという?」

「アタシはミーナ。ミーナよ、銀霊お母さま」

(この精霊がイオラのお母さま。本当によく似ているなぁ)

「ミーナ……。そういえば自分の娘には、いつもその名をつけておったのう。あの子は」

 昔の記憶をたどっているのか、遠くを見つめるような瞳がそこにはある。

「うん。アタシもそう聞いているわん」

 不意に銀霊お母さまのやさしげなまなざしがアタシに投げかけられた。

「ふふっ。可愛い子じゃ。……ミーナよ。かつて、この村にある主な五つの森には、『森の精霊』が一体ひとりずつ棲んでおった。今そなたが見ている我が身は、長であった銀霊の意志と、森の精霊たちが持っていたそれぞれの霊力とが一つになった姿じゃ」

「でも確か、その意志と力は銀光虫に分け与えたって、イオラから聴いたんだけど」

「そのとおり。わらわは銀光虫たちの中で深い眠りについておった。それを呼び覚ましたのはそなたじゃ。イオラの娘であるそなたの、人を助けたい、と願う強い意志がこの奇跡を生んだ」

「アタシが……」「そうじゃ」

 銀霊お母さまがうなずいている。

「ミーナ。そなたが人を思う心のやさしさは、やがては森やそこに棲むものたちにも向けられるであろう。わらわは安堵いたした。どうやら、わらわたち森の精霊が亡きあとも、銀光虫やイオラは森を立派に守り、そこで生まれたものたちを正しく導いてくれていたようじゃのう」

「銀霊お母さま」

 アタシは自分の胸のうちにある不安を伝えた。

「アタシはこれからどうなるの? もう、イオラやミアンのところへは戻れないの?」

「心配には及ばぬ。わらわが今、こうしてここに現われたのは、そなたを守らんがため。そなたの心に敬意を表し、更なる力を与えんがためじゃ」

「えっ。それって一体どんな?」

「霊力の増強。これはそなたの、闇に抵抗する力を今少し強くするであろう。加えて実体波を扱える能力。これは他の生きものと触れあう機会を増やし、そのきずなを造る手助けとなろう。どちらもわらわの霊力となった、『釈奈』の力をもって既に付与しておる」

「ア、アタシも実体波が使えるの?」

 それはアタシにとって思いがけない言葉。

「そうじゃ。実体波を使いたくば、イオラから教えを乞うがよかろう」

「あ、ありがとう。銀霊お母さま」

(ミアン。イオラ。アタシの願いがかなっちゃった)

「礼には及ばず。わらわとて孫ともいうべきそなたが、強き力を得るのは嬉しいかぎりじゃからのう。さてと。それではミーナ。これからそなたを地上へと戻そうと思う。実は先ほどまで、わらわ自身が送りとどけるつもりであった。されど、既にそなたの身を案じて、ここへ駆けつけようとしているものがおる」

「えっ!」

(ひょっとして……)

「そなたはイオラ以外にも、愛してくれるものたちがおるようじゃ。

 さぁ。目をつむり、眠りに入るがよい。次に目覚めた時、そなたは自分を愛するもの、自分が愛するもののそばに、その身が置かれていることを知るであろう」

「うん。ありがとう、銀霊お母さま」「では、さらばじゃ。ミーナ」

 やさしく微笑む銀霊お母さまに見つめられながら、アタシは目をつむった。


「ミーにゃんミーにゃん」

 アタシは聞き覚えのある声に起こされ、目が覚めた。

「やっと起きたのにゃん。ミーにゃん、よくやったにゃあ」「ミ、ミアン!」

 アタシはミアンに抱きかかえられていた。霊体の身体ではあるけど、アタシにはとても温かなものに感じられる。

「でも、どうやってここまで」「ミーにゃん。上を見てごらん」

「うん? ……ああっ! そうか、そういうことなのね」

 むにょぉん、と伸びたミアンの霊体。上の方には、ラミアさんが巻きついている。彼女の身体をまとっていた蒼い霊波が紅い色へと変化していた。

「ウチの身体をとおしてラミアにゃんとミレイにゃんがつながったのにゃよ。そしたらにゃ。二つの霊波が同調して、今まで以上に強力な霊力を使うことができるようになったのにゃん」

「それじゃあ、ミアンがアタシを助けてくれたんだ」

「ううん。違うのにゃよ。ウチがここに来た時、もうミーにゃんは助けられていたのにゃ」

「えっ。誰に?」「あそこにいるのにゃん」

 ミアンの視線の先には、銀光虫の群れが飛びかっている。

「あの子たちが身体いっぱいに引っついて、ミーにゃんを浮かせていたのにゃ。それは銀色のまぁるい光みたいにゃった。でも、ウチがミーにゃんのそばへ近づくとにゃ。あの子たちは、ぱぁぁっ、と分かれて飛んでいってしまったのにゃよ」

「そうだったんだ。……じゃあ、あれは夢じゃなかったのかも。……ねぇ、ミアン」

「うん? なんにゃ?」

「アタシはまだ生きているんだよね。ミアンやイオラと、……また楽しい日々を……すごせるんだよね。……ぐすんぐすん」

「ミーにゃん。泣いているのにゃん?」

「ぐすん。……うん。だけど、悲しいから……じゃない。嬉しいから泣いているの。ぐすん。

 …………ミアァン! うぇぇん! うぇぇん!」

 アタシはミアンのおなかに顔をうずめて泣いた。嬉しくって嬉しくって涙がとまらなかった。

「ミーにゃん……」

 ミアンはそんなアタシをやさしく抱きしめてくれた。


 アタシの気分が落ちついたのを確認すると、ミアンは身体を縮めてラミアさんのところまで戻った。

「どうしたんだ? ミアン。なにかよくないことでも」

「大丈夫にゃ。それじゃあ、ラミアにゃん。これからあがるにゃよ」

「判った。じゃあ、頼む」

 ミアンはどんどん縮んでいく。頂上の穴を抜けて空まであがった、と思ったら、後ろから声が聞こえてきた。

「ラミアさぁん!」「ぐぉーっ!(姉御ぉ!)」

 ネイルさんが、親友であるソラさんのもう一つの姿、ガン・ドラスに乗ってやってきた。あっという間にラミアさんの目の前にたどりつく。

 ソラさん。……アーガの使い手となったラミアさんの筆頭補佐。ラミアさんと同様、アーガの前身であるドラスの細胞と血を受け継いでいる。とはいっても、彼の特筆すべき能力は復元力じゃない。大翼竜ドラスに変化へんげできることにある。

「おっ。ネイルとソラじゃないか。わざわざこんなところまで来やがって。二人ともご苦労なこった」

 荒っぽい口調の割には、ラミアさんの顔はとても嬉しそう。

「ぐぉーっ(早く行こうっていったんだが、ネイルのやつが忙しくてな)」

「すみません、遅れて。やっと外来の診察が終わったんですよ。大急ぎで駆けつけたんですけど……、その様子ではどうやら全部終わったみたいですね」

 頭をさげるネイルさんに、ラミアさんは、『いいよ、いいよ』と手をふっている。

「気にすんな、ネイル。ここに来てくれただけで満足さ。ソラもありがとうな」

「ラミアさん、お疲れでしょう。さぁ、ここへ」

「いいのか。じゃあ、遠慮なく」

 ラミアさんはやつれた姿ながらも、にっこりと微笑んでいる。ミアンは彼女をネイルさんの後ろへ座らせると、巻きつけていた身体をほどいた。

「ミアン、ありがとう」「にゃあに。困った時はお互いさまにゃよ」

(ふふっ。やっぱりね。いうと思ったわん)

 ミアンは自分のお尻、いや、ミレイの方へと引きあげていく。

「ありがとう」

 ラミアさんはもう一度、お礼の言葉を口にした。

(あれっ。今のはアタシに向かって喋ったような……。でも、そんなはずは……)

 首をかしげているアタシの耳に、ネイルさんの声が聞こえてきた。

「ラミアさん。一旦おりるよりも、このまま病院へ戻りましょう」

「そうだな」

 ラミアさんは両腕をネイルさんの腰に回し、自分の身体を預けた。

「お疲れでしたらそのまま寝てもかまいませんよ。着いたら起こしますから」

「ああ。頼むよ」と彼女は目をつむった。

「じゃあ、始めるぜ、ネイル」「いつでもどうぞ」

 びしゅぅ! びしゅぅ!

 ソラさんにつづいてネイルさんからも霊波が放たれた。本来、人が放つ霊波は蒼色で、それはネイルさんも変わらない。にもかかわらず、今はどちらの霊波も白銀しろがね色。ネイルさんがソラさんの霊波に同調した証拠だ。

(いくら親友同士でも最初から同調できるなんて……。さすがは呪術師だわん)

 ネイルさんたち全員が白銀の霊波に包まれている。これならラミアさんがどんな状態であろうと、ソラさんがどんな飛び方をしようと大丈夫。そのままの姿勢をラミアさんは保ちつづけることができる。

(ふふっ。ラミアさんったら、幸せそうな寝顔をしているわん。

 さてと。それじゃあ、アタシは……ミアンのいるミレイのところに行こうっと)


 ミアンはミレイの背中にうずくまっていた。今は実体波を放って普段の猫姿に戻っている。アタシはミアンの横に身体をぴったりとくっつけて座った。

 ミアンはミレイに声をかける。

「ミレイにゃんもお疲れさまだったにゃ。全部終わったことにゃし、早く病院へ行こうにゃん」

「くぉーっ(任せてくださいませ)」

 アタシとミアンはミレイに。ネイルさんとラミアさんはソラさんのガン・ドラスに。二体の翼竜はともに翼をはためかせ、仲良く並んで飛んでいる。

「やったね、ミアン!」「ウチがついているもん。当然にゃよ」

(ミアンはいつになく威張いばっているな。まっ。今日はアタシもミアンのおかげで助かったわけだし、感謝しないと……)

 ぱちぱちぱち。

 アタシは親友の活躍に惜しみない拍手を送る。それを横目で見たミアンは心なしか、顔がほんのりと赤くなっている。

 ミアンが突然、すくっ、と後ろ足だけで立ち、アタシと向きあった。

「ミーにゃん。ミーにゃんの方こそ、おてがらだったにゃよ」「えっ。あっ、うん」

(珍しいな。ミアンがアタシをほめてくれるなんて)

 ぱちぱちぱち。

 今度はミアンが前足で拍手を始めた。めったにないことのため、嬉しくもあり、またはずかしくもある。アタシは、自分の顔がほてってくるのをおさえることができずに困っていた。


「やったぁ! ミアン、お話のミーナが」

「どうやら助かったみたいにゃ。やれやれ。ふぅ」

「アタシたちの応援が効いたのかな?」

「そう思ってもいいんじゃにゃいか。銀霊にゃんの言葉の中にある、『イオラ以外にも愛してくれるものたち』の中に、ウチらがいるのかもしれないにゃよ」

「そうよね。うん。そうだわん」

「お花も見つかったし、ラミアにゃんもミーナにゃんも無事。めでたしめでたしの結末だったにゃん」


 ざざざざざぁぁん!

「おのれぇもじ。よくもよくもぉ、なのもじ」

 ごっごっごっごっ! ごっごっごっごっ!

「またまた文字喰いが登場したわん」

「そういやあ、めでたしめでたし、じゃにゃかった者もいたのにゃん」

「見てよ、ミアン。怒りで身体をふるわせちゃっているわん」

「無理もないにゃよ。前回、あれだけの口をたたいておいて、いざ、ふたを開けたらこれだものにゃあ。ウチだったら恥ずかしくて二度と顔が出せないにゃよ」

「アタシもアタシも。いいつらの皮だわん」

「やかましいもじ。一体どんな小細工を弄して、あんな逆転劇に書き換えたのもじ」

「へへん。すごいでしょ」「そんにゃこと、おいそれとはいえないのにゃん」

「おかげでお前たちを消滅させ、手つかずの本を食べつくすという、わじの計画がおじゃんになってしまったのもじ。どうしてくれるのもじ」

「なにもしないで、すごすごと引きあげるっていうのは?」

「わじはまだ敗者じゃないもじ」

「にゃあ、文字喰いにゃん。あきらめも大切にゃよ。いつまでもつっ張っていにゃいで、ウチらと仲良くすればいいじゃにゃいか」

「ええい! 黙るのもじ。こうなれば実力あるのみのもじ」

 ぐぃぃん! ががん!

「また砲筒がつきだしてきたわん」

「文字喰いにゃん。同じ方法ではウチらには勝てないのにゃよ」

「ふふふもじ。わじがそれほどおろかと思っているのもじ。ぐだぐだいう前に、これを食らうがいいもじ」

 ががん! ががん! ががん! …………。

「み、見てよ、ミアン」

「砲筒の中から更に小さい砲筒がいくつも現われたのにゃん」

「ふっふっふっもじ。驚いたのもじ。これぞ『あ型連射式多重砲』、改造『あ砲』なのもじ。

 それじゃあいくもじぃ! 『あ砲』、発射あ!」

 だだんだだんだだんだだんだだん! だだんだだんだだんだだんだだん! …………。

「ミアン! 小型の『あ』がいくつも発射されたわん!」

「こちらも反撃にゃあ。それっ。『ねこねこ反射』あ!」

 ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる!

 だだんだだんだだんだだんだだん! だだんだだんだだんだだんだだん! …………。

「にゃ、にゃんと! つづけざまに発射されているのにゃん!」

「ミアン。こちらがはね返した文字と向こうから飛んできた文字がぶつかりあって消滅したわん!」

「自分の出した文字どうしをつぶしあってもまだやめないにゃんて。妖魔力をまだかなり温存しているとみえるにゃ。これじゃあ、ねこねこ反射がいつまで持つか」

「ミアン、しっかりぃ!」

 だだんだだんだだんだだんだだん! だだんだだんだだんだだんだだん! …………。

 ばぱぁん! ばぱぁん! ばぱぁん! ばぱぁん! …………。

「うっ! うっ! うっ! うっ! ……だ、だめにゃああん!」

 ぷるん。すってんころりん。

「あっ。『ねこねこ反射』が消えちゃったわん! ミアンもころがっちゃった」

「ふふふもじ。やっと、にっくき『ねこねこ反射』を粉砕してやったのもじ。これからが本当の攻撃もじ」

 だだんだだんだだんだだんだだん! だだんだだんだだんだだんだだん! …………。

「ふにゃにゃにゃにゃ。ミーにゃん、逃げまわるのにゃ。それしか手がにゃい」

「うん。……ミアン、おかしいわん! 部屋をとおり抜けることができないわん!」

「にゃんと! ……ほ、本当にゃあ!」

「はははもじ。もうお前たちに逃げ場はないもじ。おとなしく『あ砲』のえじきになるがいいもじ」

「ミアン、どうしよう?」

「仕方がにゃい。こうにゃれば、捨て身の技を使うまでにゃん」

「ミアン! まさかあれを!」

「一か八かにゃん。ミーにゃんはウチのそばにいにゃさい」

「う、うん」

「それじゃあ、始めるにゃよぉ。『ねこねこぢから充填』!」

 ばぁぁぁっ!

「なにを始めるつもりか知らないけどもじ。待っているつもりはないもじ」

 だだんだだんだだんだだんだだん! だだんだだんだだんだだんだだん! …………。

  すぱん! すぱん! すぱん! すぱん! すぱん! …………。

「こ、これは……もじ。わじの『あ砲』が全て弾かれてしまったのもじ。さては完全結界もじ。この状態では打つ手なし、なのもじ」


「ミアン。そろそろじゃない?」

「よぉし、充填完了にゃあ!」

「一体なにをする気なのもじ」

「文字喰いにゃん、いくにゃよぉ! 『ねこねこ砕撃波・放射』あ!」

 ぴゅん! ぴゅん! ぴゅん! ぴゅん! ぴゅん! ぴゅん! …………。

「な、なにぃ! もじ。やつの身体が水滴状になったのもじ。わじの身体にどんどんもぐりこんでいくもじ!」

 …………、ぴゅん! ぴゅん! ぴゅん!

「……どうやらもじ。全部、わじの身体に入ってしまったみたいもじ」

「これで準備は完了だわん。よぉし、霊覚交信でミアンに話しかけてみようっと。

 ミアン、大丈夫?」

「…………」

「どうしたの? ミアン、返事してよ」

「…………」

「ミアァァン! お願いだから。ミアァァン!」

「ふふふもじ。なにかたくらんでいたみたいだったけどもじ。どうやら不発に終わったみたいなのもじ」

「文字喰い……」

「やつはわじの妖魔力の中で滅びをむかえるのに違いないもじ。となれば、わじの邪魔者はお前だけもじ。わじの『あ砲』であっという間に滅びてしまえ、もじ」

 ぐぃぃん! ががん! ががん! ががん! …………。

「どうなのもじ? ないかいい残すことがあれば最後に聞いてあげるのもじ」

「ミアン……。ミアン、どうしたのよぉ。返事をしなさぁい! アタシの声が聞こえないのぉ。答えなさぁい!

 ……ううっ。答えて……答えてよぉぉ! ミアァァン!」

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